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物価とは「商品の平均的な価格」のこと?

みなさんも毎日の生活において物価の上昇スピードが速くなっていることを実感されていることと思います。

物価といえば商品の価格を想像しますが、個々の商品ではなく、「様々な商品価格の平均値のようなもの」とイメージしてください。「平均値のようなもの」というあいまいな言い方をしましたが、平均というと誤りになりますので、あえてこのような言い方をしています。

例えば、コメの価格と自動車の価格の平均(2種類の財の平均という意味で2で割る)をとっても意味がないからです。実際には統計的な加工をおこなって物価指数として公表されています。

なぜ物価は変動するのか?

物価は個々の商品の価格変動を平均的(全体的)にとらえたものです。現実の社会では「価格が上昇する商品」と「価格が低下する商品」が混在しており物価は変動します。

現在の日本のように、価格が上昇する商品の割合が全体に占める割合が大きいと物価が上昇し、逆に価格が低下する商品の割合が大きくなると物価が低下します。日本では数年前までは物価が低下する現象が続いていました。

「持続的に」物価が上昇する現象を「インフレーション」、物価が低下する現象を「デフレーション」といいます。「持続的に」とは「一時的な現象ではなく」上昇傾向や低下傾向が一定期間続くことを意味します。

貨幣の本当の役割とは?

次に、貨幣の実質価値について考えてみましょう。

貨幣はもともと物々交換の不便さを解消するために発明されたものです。貝殻から金属(金、銀、銅)に発展して、現在は紙幣が使われるようになっています。「見た目には経済の主役」に見える貨幣も「物々交換の仲介役としての脇役」だったのです。

しかし、脇役である貨幣は「何とでも交換できるパワー」を持っているのでみんなが競って求める対象になったのです。ところが、貨幣は物と交換してはじめて意味を持ちます。貨幣は自分自身で自分の価値 を表現できず、物の価値を表現する手段でしかないのです。

希少性と価値の関係

ここで「交換の基本ルール」を確認しておきましょう。

①量が少ないものは価値が高い(希少性が高いものは値段が高い)
②量が多いものは価値が低い(希少性が低いものは値段が安い)

たとえば、品不足が起きている状態では商品が少ないために物の価値が高くなります。高くなった商品を購入するためにはより多くの貨幣を支払う必要があります。
つまり、「多くの貨幣=少ない商品」という関係が成立します。希少な商品を購入したい人達が、その商品を手に入れるために「値上げ競争」を起こすからです。希少な商品を購入するためには多くの貨幣を準備しなければ商品の購入ができません。このことは、「貨幣の価値が低下」したことを意味します。「貨幣価値の低下」のことを専門用語では「貨幣の実質価値が低下」したといいます。

物価の上昇は、持っている貨幣で「購入できる数量」が減少させます。去年は5キロ2000円で購入できたコメが今年は価格が2倍以上になっています。単純に計算すると2000円では約半分のコメしか買えないのです。

物価上昇が生活に与える影響

このように物価高は「貨幣の実質価値(貨幣の購買力)」を低下させ、人々の生活に悪影響を与えます。

最近のニュースでは頻繁に「物価上昇に賃金上昇が追い付かずに実質賃金が低下している」と言っています。「賃金は働いて稼いだ貨幣」です。物価高によって以前と同じ数量を購入しようとすれば、より多くの貨幣を支払わなければなりません。手持ちの貨幣が増えないのに物価が上昇すれば生活が苦しくなるのは当然のことなのです。国民の生活を安定させるためには「政府」や「日本銀行」による経済政策が必要になる理由がわかると思います。


執筆者プロフィール


S(イニシャル)
1964年生まれ。
公務員試験対策予備校や大学・専門学校など、様々な現場で学生を指導してきました。
得意なのは大学レベルの経済学、経営学、会計学で、究進塾では主に大学授業補習コース(オンライン)を担当。

長年の豊富な指導経験から、「学生のつまづくポイント」を的確に把握しています。
堅苦しい「経済学」という学問を丁寧に解きほぐし、わかりやすく説明します。
とても親しみやすい性格で、質問もしやすいです。
生徒様お一人お一人に合わせた、また基礎を大切にした丁寧な指導がモットーです。


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