ブログ
BLOG
保佐制度を整理しよう ― 被保佐人と保佐人の役割
成年後見制度のなかでも「保佐」は、後見と補助の中間に位置する制度です。試験でも条文知識がそのまま問われることが多いため、ここでは開始の審判・被保佐人の行為能力・保佐人の権限の3つの視点から整理していきましょう。
1.保佐開始の審判
スタート地点は民法11条。保佐開始の審判は、精神上の障害によって「事理を弁識する能力が著しく不十分な者」に対して家庭裁判所が行います。
「著しく不十分」とは、後見に至るほど重くはないけれど、日常生活で誤った判断をしてしまう可能性が高い状態を指します。例えば簡単な買い物はできても、不動産売買や借金契約のような重大かつ複雑な取引は難しいケースです。
申立権者は、本人・配偶者・四親等内の親族・検察官など。成年後見との比較復習も有効です。
2.被保佐人の行為能力
被保佐人は完全に行為能力を失うわけではありません。契約自体は可能ですが、民法13条1項に列挙された一定の行為には保佐人の同意が必要です。同意がなければ取り消し可能となります。
典型例(民法13条1項)
- 元本を領収・利用する行為
- 借財または保証をする行為
- 不動産その他重要財産の得喪を目的とする行為
- 訴訟行為・和解・仲裁合意
- 相続の承認・放棄・遺産分割
これらの重要かつ影響の大きい行為は保佐人の同意が不可欠。同意がなければ、被保佐人本人または保佐人が取り消すことができます(民法13条4項・120条1項)。
3.保佐人の権限
保佐人の中心的な権限は同意権・取消権。被保佐人が行う重要な法律行為をコントロールし、保護します。
加えて代理権。ただし包括代理ではなく、家庭裁判所の審判によって特定の法律行為に限定的に付与されるものです(民法876条の4)。この「必要部分だけ代理権を与える」設計は、包括代理権を持つ後見制度との大きな違いです。
まとめ
- 保佐開始の審判:事理を弁識する能力が著しく不十分な場合に家庭裁判所が審判(民法11条)
- 被保佐人:原則は行為能力あり。ただし民法13条1項の行為は保佐人の同意が必須で、同意がなければ取消可能
- 保佐人:同意権・取消権を持ち、必要に応じて限定的な代理権を付与される(民法876条の4)
この枠組みを押さえることで、後見・補助との違いも整理しやすくなります。特に「行為能力の制限の程度」と「代理権の範囲」は試験頻出ポイントです。
保佐制度は一見複雑ですが、「後見より軽いが補助より制限が強い」とイメージすると理解しやすいでしょう。
【執筆者】K(イニシャル表記)
1994年生。現役の司法書士として事務所を経営する一方、究進塾の司法書士コースの講師も務めています。司法書士試験には、働きながらの兼業受験、そして勉強に専念した専業受験の両方を経験。1回目の受験では、わずか3.5点差で涙をのみましたが、その悔しさをバネに再挑戦。勉強期間1年10カ月で、2度目の挑戦で合格を果たしました。学生時代は勉強が苦手で、1日2時間も机に向かえなかったタイプ。それでも、自分に合った学習法に切り替えることで、大きく変わることができました。だからこそ、勉強が続かない、やる気が出ない…そんな悩みを抱える受験生にも、具体的かつ実感のこもったアドバイスができます。
趣味はランニングと筋トレ。皇居や代々木公園を走り、ジムで汗を流すことで、日々のストレスをリセットしています。「健全な精神は健全な肉体に宿る」という信条のもと、体を動かす習慣を大切にしています。
心に刻んでいる言葉は、漫画『ハイキュー!!』の登場人物の一節:
「俺を構築すんのは毎日の行動であって、“結果”は副産物にすぎん」
遠くに感じる合格というゴールも、振り返れば日々の積み重ねがすべてだったと気づきます。今日という一日をどう過ごすか――それが未来を決める。そんな思いで、受験生一人ひとりに寄り添いながら指導しています。