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【1】なぜコメは高くなったのか?― 価格上昇の背景 ―

スーパーでコメの値札を見て、「高いな」と感じる時期が長く続きました。ところがこの秋、売場を見ていると、少し景色が変わってきたように感じます。新米が並び、以前より手に取りやすい価格のコメも見かけるようになりました。なぜ、あれほど高かったコメが、今は少しずつ下がってきているのでしょうか。

ニュースでは、「コメ不足」「備蓄米」「新米」「在庫」といった言葉が別々に登場します。しかし、これらはすべて、「需要と供給」という一つの仕組みでつながっています。

まず、価格が上がった理由から考えてみましょう。コメが高くなったのは、「不作だったから」の一言では説明できません。暑さの影響で、玄米から精米にするときに取れる量が減ったことに加え、外食や訪日客、家庭での需要が重なり、思っていた以上にコメに余裕がない状態になりました。

コメに余裕がないと、「この先、必要な量を確保できるだろうか」という不安が広がります。すると、流通業者は限られたコメを早めに確保しようとします。欲しい人が多いのに、売れる量に余裕がなければ、高い価格でも仕入れようとする動きが強くなります。

価格が上がった本質は、「コメがなくなった」ことより、「需要に対して供給の余裕がなくなった」ことにあります。


【2】なぜコメは下がってきたのか?― 供給の回復と買い手の変化 ―

では、なぜ最近は下がってきたのでしょうか。

売場には新米が並び、前年産のコメもまだ残っています。以前より選べる商品が増え、「足りないかもしれない」という緊張も少しずつ和らいできました。

品薄のときは、買い手の側に「高くても確保したい」という力が働きます。反対に、商品が増えてくると、売る側には「選んでもらいたい」「在庫を動かしたい」という力が働きます。すると、価格を下げる店や商品も出てきます。


ここで大切なのは、「備蓄米が出たから下がった」「新米が出たから下がった」と、一つの出来事だけで説明しないことです。売場に出るコメが増え、在庫にも少し余裕が生まれ、買い手の選択肢が広がる。

いくつもの変化が重なって、需給の緊張がほどけていくのです。


【3】需要と供給で読み解くコメの価格変動

同じ需要と供給の仕組みが、供給に余裕がない局面では値上がりを、供給に余裕が戻る局面では値下がりを生みます。

経済学では、買いたい量を「需要」、売りたい量を「供給」といいます。

需要に対して供給が少なければ価格には上昇圧力がかかり、反対に供給に余裕が出たり需要が弱まったりすれば、価格には下落圧力がかかります。

価格は誰か一人が自由に決めているのではなく、多くの売り手と買い手の行動が重なった結果として動いているのです。

今回のコメ価格の動きを見ると、「高くなった」「安くなった」という結果だけでは十分ではありません。その途中にある在庫、需要、供給、流通まで見ると、上昇と下落を同じ仕組みの中で説明できます。ニュースで別々に出てくる話も、経済学を使えば一本の流れとしてつながってくるのです。


【4】なぜ古いコメの方が高い?― 次回への疑問 ―

ただし、ここで一つ面白いことが起きます。

コメ全体が安くなってきても、店頭の値札がすべて同時に下がるわけではありません。

実際の売場では、前年産のコメより新米の方が安い、という一見すると不思議な価格表示も見られます。

次回は、この「古いコメの方が高い」という逆転現象から、価格が調整される途中を考えてみましょう。


執筆者プロフィール


S(イニシャル)
1964年生まれ。
公務員試験対策予備校や大学・専門学校など、様々な現場で学生を指導してきました。
得意なのは大学レベルの経済学、経営学、会計学で、究進塾では主に大学単位取得サポートコース(オンライン)を担当。

長年の豊富な指導経験から、「学生のつまづくポイント」を的確に把握しています。
堅苦しい「経済学」という学問を丁寧に解きほぐし、わかりやすく説明します。
とても親しみやすい性格で、質問もしやすいです。
生徒様お一人お一人に合わせた、また基礎を大切にした丁寧な指導がモットーです。


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