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行政書士と外国人関係の業務

「行政書士業務に語学は必要か?」

という質問を受けることがあります。
語学に苦手意識がある方にとっては、それが不利益にならないか、心配なのでしょう。

行政書士業務で語学が必要とされる可能性が高いのは入管業務です。実際、入管業務専門の行政書士のホームページをみると、中国語対応、韓国語対応などの表記や、そもそも外国語で記されたホームページすらあります。ここでのポイントは英語ではないということです。行政書士業界で言われることでありますが、「英語より中国語や朝鮮語の方が役立つ」と言われます。確かに、入管のお問い合わせをいただくのは、中国人や朝鮮人の方が多かったように思います。また、入管の資料をみても申請者の多くはアジア系です。ですから、中国語や朝鮮語が堪能であれば、それだけで入管業務にとってはプラスだと言えます。ですが英語が全く役に立たないわけではありません。行政書士が中国語や朝鮮語を使えない場合、外国人とのやりとりは、英語を使用することになります。実際、私も、朝鮮語を話せないために、朝鮮人の方と英語でのやりとりをしたことがあります。このように外国人との最終手段の意思疎通は英語になると思います。ですから、英語を話せた方がいいのは間違いありません。

ただ、注意を要するのは、日常会話の外国語を話せることと、書類作成はまた異なる能力や知識が必要ということです。行政書士である以上、書類作成をして報酬を得ます。入管業務から少し離れることになりますが渉外業務では、日常会話とは異なる法律単語が必要となります。日本人には馴染のある漢字が使われる中国語ですら契約書を作成するのは容易ではありません。現在のITの翻訳機能は大変優れているので、外国語を話せなくとも、アプリなどを駆使すれば、意思疎通をはかることは可能かもしれません。しかし、外国人の意思を確認してそれを法律文書として作成するとなるととても大変です。ある外国語の契約書を作成するにあたり大変苦労したことがありました。

そもそも法律の適用の問題があります。外国と日本で法律が異なる場合、どちらの法律が適用されるかという問題が生じます。国際私法という一つの学問分野であり、ただ相手の主張を文書化すればよいというわけではなく、渉外業務は幅広い知識と経験が必要とされます。

近年、外国人関係の仕事は増えており、多くの行政書士事務所がシフトをそちらに移しています。入管業務、渉外業務にどこまで深く関わるかによって、必要とされる知識も変わってきます。この分野に関心のある方や強みのある方、たとえば企業で渉外契約法務などの経験のある方は、行政書士資格を目指すのもいいかもしれません。さまざまなビジネスチャンスがあるように思います。

【執筆者】

Y(イニシャル表記)
究進塾の行政書士コースの担当講師。
国立大学大学院修士課程修了。
私立大学非常勤講師の経験を持ち、大手資格予備校で行政書士をはじめとする法律系国家資格の指導歴は約20年。
行政書士実務についての著書・論文もあります。

<塾よりひとこと>
誠実で実直な性格が特長の講師です。


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