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行政書士に語学力は必要?〜外国人業務のリアル〜

「行政書士って、語学ができないとダメですか?」

行政書士を目指す方から、よくこんな質問をいただきます。
英語や外国語が苦手だと、不利になるのでは…と不安に感じる方も少なくありません。

結論から言えば、語学ができると大きな武器になりますが、必須ではありません。特にどんな業務を中心に行うかで、必要とされるスキルは変わってきます。

■語学力が活かせる「入管業務」
行政書士の仕事の中で、語学力が求められる代表的な分野が「入管業務」です。
外国人のビザ申請などを扱うため、依頼者と外国語でコミュニケーションを取る機会があります。

実際、入管業務に特化した行政書士事務所のホームページを見ると、中国語対応・韓国語対応といった表記が目立ちます。なかには外国語で作られたサイトすらあります。

ポイントは、「役立つのは英語よりも中国語や韓国語」ということ。
ビザ申請の相談者は、アジア出身の方が多いためです。

■英語は“最後の共通語”
とはいえ、英語が無駄になるわけではありません。
私自身、韓国語が話せず、韓国人の方と英語でやり取りしたことがあります。

「中国語も韓国語もできない」という場合でも、英語が話せれば、外国人との橋渡しが可能になります。英語は“最後の共通語”として非常に役立つ存在なのです。

■日常会話と法律文書はまったく別物
ここで大事な点が一つあります。
語学ができる=そのまま仕事になる、とは限りません。

行政書士の本業は書類作成です。
たとえ中国語が話せても、契約書や申請書を正確に作成するには、専門的な法的知識や翻訳スキルが必要です。特に渉外業務では、日本語にはない概念や表現も出てくるため、一筋縄ではいきません。

私も外国語の契約書を作成する際、かなりの時間と労力をかけました。
IT翻訳ツールが進化しているとはいえ、「正確な法的文書の作成」となると、プロの技術が求められる世界です。

■渉外業務には“国際私法”の知識も必要
さらに渉外業務になると、「どちらの国の法律を適用するか?」という、国際私法の問題も出てきます。
単なる語学力だけでは対応しきれず、法制度・契約実務・文化的背景など幅広い知識と経験が必要です。

■外国人関連業務にはチャンスもある
外国人関係の仕事は、今後も需要が伸びる分野です。
入管業務や渉外業務に関心がある方、たとえば企業で国際契約や渉外法務を経験した方は、行政書士資格を活かして新たなキャリアを築ける可能性があります。

自分の語学力や経験を、社会に役立てたいと考えている方にとって、行政書士という選択肢は大きなビジネスチャンスになるかもしれません。

【執筆者】

Y(イニシャル表記)
究進塾の行政書士コースの担当講師。
国立大学大学院修士課程修了。
行政書士事務所を運営しながら、大手予備校で法律系国家試験の講師を20年間
担当してきました。法律について大学院で研究もしてきました。
「暗記より理解」が講師としての信条で、条文の理解のためならば、千年以上前
のローマの話もします。「法律の理解に資する方法を探す」ことを趣味としていて、
さまざまな文献に目を通します。蔵書は数百冊におよびます。


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