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行政書士試験においても、過去問は非常に大切な教材です。しかし、過去問と言っても、予備校はいろいろなコンセプトの過去問を出版しています。どうして様々な過去問の教材があるのでしょうか?そして、どのような過去問教材を選択すればよいのでしょうか?

そもそも、過去問集によって掲載年数が異なります。法律系国家試験の過去問題集の掲載年数の相場は、5年分か10年分と言えるでしょう。公表されていませんが、法律系国家試験委員が本試験問題を作成する際に、これまでの試験レベルとの整合性をはかるために、数年間分の過去問が渡されると言われています。確かに、行政書士試験も科目によっては過去問を参照して作成したと思われる問題があります。特に「直近5年分の過去問を参照しているのではないか」と受験業界では囁かれています。つまり、過去問は本試験のレベルを知ると言うだけでなく、今年の問題を予測する最も大切なツールの側面があるとも言えるのです。以上からすると、最低5年分の過去問は解かなければなりませんし、余力があれば保険として10年分の過去問を解くことは必要かもしれません。

では、5年ないし10年分の過去問だけを解けば、行政書士試験のアウトプット教材として十分なのでしょうか?

結論から言えば十分ではありません。これらの過去問題集は「論点の網羅性がない」という弱点があります。たとえ10年分の過去問でも、科目によっては重要な論点が掲載されていないことがあります(民法など)。ですから、アウトプット教材として、論点の網羅性を求めるのであれば、年度で区切られた問題集は不十分です。

ならば、すべての過去問(新試験制度の始まった平成18年以降が現実的)を掲載された問題集を利用するのはどうでしょうか?確かに、論点の網羅性というのであれば、行政法などの科目に限れば十分と言えるかもしれません。ただ、分量が多く、問題集の回転数が減少するため、知識習得について効率や正確性が低下するでしょう。さらに、過去問は難易度にばらつきがあります。行政書士試験は6割とれば合格できる試験であり、毎年、科目間調整のために難問が出題されます。この難問も過去問として問題集に掲載されます。つまり、解けなくても合格できる問題も掲載されるのです。これは5年、10年の年度区切の問題集も同様ですが、分量が何倍にもなり深刻です。このようにすべての過去問掲載の問題集は「効率性に問題がある」という弱点を有します。もちろん、予備校もその点は考えていて、難問を排除するために、過去問のランク付けや正答率を掲載しているのです。

このように網羅性と効率性のバランスという問題が過去問集にはつきまといます。そこで、両者のバランスをとって作成されるのが、重要過去問集、厳選過去問集、基本過去問集です。これは重要な論点を過去問の年度数を限定せずにピックアップして構成される問題集です。一番バランスの良い問題集と言えます。分量も適量に設定されています。

以上のことを踏まえると、初学者は重要過去問集を基本として、余力があれば、5年ないし10年分の過去問集にあたるべきでしょう。受験経験者は重要過去問集を基本として、すべての過去問の掲載された過去問集に挑戦して幅広い知識を習得してもよいかもしれません。ただ、それでも直近の5年分の過去問を解くべきでしょう。

ちなみに、個別指導では個別対応ができるので、勉強状況に応じて科目ごとに上記過去問集の取捨選択を予備校の縛りを受けずに推薦できます。過去問集をどう活かすかは試験合格に直結することであり、過去問集も解説などは玉石混交なので、しっかりと過去問集を選ばなければなりません。

【執筆者】Y
究進塾の行政書士コースの担当講師。
国立大学大学院修士課程修了。
私立大学非常勤講師の経験を持ち、大手資格予備校で行政書士をはじめとする法律系国家資格の指導歴は約20年。
行政書士実務についての著書・論文もあります。

<塾よりひとこと>
誠実で実直な性格が特長の講師です。


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