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2024年も年の瀬を迎えています。
今年も様々な本を読みました。直近で読んだ「自分って、ないから」と言った軽いものから、「センスの哲学」という、やや重め(と言っても読みやすいですね)のものまで。
そんな中で、「子どもを野に放て」という本について書き留めておきたいことがあります。著者は、YAMAPという登山アプリを開発する会社を創業した春山慶彦さんという方です。元々「写真家の星野道夫氏にあこがれて、自分も写真家になりたかった」という方で、アラスカ大学に留学してイヌイットと一緒にアザラシ猟をする生活をしたり、スペインでの巡礼で1200km以上歩いたり、という経歴だけでもすでに圧倒されてしまうのですが、その根っこには地球、自然の中の人間という視点があり、この点で重なる視座を持つ養老孟司さん、中村桂子さん、 池澤夏樹さんとの対談によってこの本は構成されています。
対談の魅力はこの短いブログで伝えきれるものではないので、ぜひ本で読んでいただきたいのですが、対談の間にちょこっと載っている春山さんのコラムが刺さったので、このブログでご紹介したいと思います。
まず、仕事について。
「①自分が心からその仕事をしたいか
②他の人にとって役に立つのか
③社会を含めた環境全体がよりよくなるのか
この三点の重なりを意識して仕事をすることが重要。それができれば私達は今以上に生きやすくなるはず。」
個別指導講師の仕事は、勉強に困っている方をサポートしていくというのが根幹なので、②助けることで役に立つ という点は担ってきたという自負はあります。
一方で、①についてですが、私達の仕事は、必ずしもこの問と相性が合うとは言えません。
と言うのは、困った方が頼りにしてくれたことを意気に感じて、可能な限り、サポートするというのが基本姿勢だからです。できる限り「①自分がそのミッションをしたい」と言い聞かせるのがあるべき姿勢だとは思いますが、様々な方から依頼が来る中で、100%そうとは言い切れないミッションも引き受けるというのが正直なところです。
そして、③については、「サポートした方の受験の成就、単位取得がひいては社会をよくする」と無邪気に信じてきた部分はあります。ですが、本当にそうなのか、個人の利益を後押ししているだけではないのか、という疑問が湧いてくることもあります。
ここに関しては、新規サービスを検討したり、既存のサービスの見直しをするに当たって、改めて重要な問いとして位置付けるべき部分だと思います。
もう一つ、春山さんが書いていた中で刺さったのが「いのちのときめきに素直にいきる」という言葉です。
かつて、スティーブ・ジョブスがスタンフォード大学卒業式でのスピーチで話した「何より大事なのは、自分の心と直感に従う勇気を持つことです」という一節があります。
この言葉を聞いたときに、「なんてかっこいい言葉なんだ」と感動し、その言葉を心に留めて、一つの「指針」として参りました。余談ですが、この言葉については内田樹さんが「勇気論」という本の中で「自分の心と直感に従う」のではなく、「その勇気を持つこと」というのが特に大事なんだと指摘していました。
確かに、「自分の心と直感はこう言ってるけど、それに従う勇気がない・・・」という状況はあり得ます。だからこそ、勇気こそが大事という点には深く納得しました。
さて、話を戻して、春山さんの言葉について改めて見て行きましょう。
ここ数年で「幸せの基準は、人と比べないこと」という言説をよく目にするようになりました。
この言説にも私は深く共感しておりまして、こういう価値観が世の中に広まって行くことを願っているのですが、春山さんの「いのちのときめきに素直にいきる」という言葉は、この価値観をも包含しています。その上で、「いのちのときめき」というところが、「対人」ではなく「対地球」、「対自然」のことばであるというところがよりアップデートされていて現代的だと言えるでしょう。
そこには他者との比較はありません。
来年は、この言葉を軸に生きてみようと思います。
今年もお世話になりました。また来年もよろしくお願い致します。