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自給自足から物々交換へ

人間は物資の消費なしには生きていくことができません。大昔では可能な限り自給自足で必要な物資を生産し消費していたと想像できます。

しかし、自給自足では限界があるため物々交換がはじまります。物々交換は「欲望の偶然的一致」が絶対条件です。まず、自分が売りたいものを買ってくれる人を探さなければなりません。そのあとに、苦労してやっと出会えた人が持っているものを自分が欲しいと思わなければ交換は成立しません。

歩きながらの交渉は気が遠くなるほど大変です。現代のように交通インフラやインターネットはありません。移動と情報収集には莫大な時間と費用が必要だったのです。

「市」の誕生と貨幣の出現

このような不便さを解消するために「市(いち)」が開催されるようになりました。「市(いち)」では日にちと場所を決めて物々交換が行われていました。全国には二日市、四日市などの地名が残っています。

以前のブログでも触れましたが、物々交換の不便さを解消するために「貨幣」が誕生します。「貨幣は取引の潤滑油」として「物々交換の仲介役」として重要な役割を果たすようになりました。

誰もが「受け取りを拒否せず、かつ耐久性が高いこと」が貨幣の条件です。この条件を満たす金や銀などの金属が貨幣として選ばれました。金や銀もそれ自体価値があり売買の対象になる商品です。このように物々交換の仲介役である金属貨幣も商品です。このように商品による交換体系のことを「商品経済」といいます。

金本位制と貨幣の三つの機能

「金(きん)」を取引の中心に置く貨幣制度を「金本位制」といいます。金は取引の仲介役もしますが、価値ある商品として手元に貯蔵(貯蓄・保蔵)することもできます。

貨幣には次の三つの機能があります。

① 価値尺度(商品の交換比率=価格)
② 支払手段(交換する商品の対価として相手に引き渡すもの)
③ 価値貯蔵手段(商品を購入せずに保有する財産=貯蓄)

 

「価値尺度」と「支払手段」は切り離すことが難しく、一体として商品取引の仲介役として機能します。一方、使わずに手元に置いている場合は「価値貯蔵手段」として機能します。「価値貯蔵手段」により「金の所有者」は金を他人に貸すことができ、資金の融通を可能にします。「資通」のことを「金融といいます。

管理通貨制度と貨幣経済の確立

「金本位制」では貨幣は金の量以上には存在できません経済活動が金の量に制限されるので、金融機能を駆使しても商品取引は制限されてしまいます。

そこで、金の量に縛られずに経済活動を拡大する方法として「管理通貨制度」が導入されるようになりました。「管理通貨制度」では金の量に関係なく紙幣を発行します。紙幣の管理は各国の「中央銀行」が行います。日本では「日本銀行(日銀)」によって管理されます。

このように「管理通貨制度」のもとでは「貨幣」は「紙幣」として発行され、経済取引を拡大するために「金融」という機能が重視されるようになりました。「商品経済の脇役」だった金属貨幣が紙幣として「貨幣経済の主役」に躍り出ることになったのです。

金の縛りがなくなった紙幣は「商品取引」という本来の機能から「独り歩き」して国内金融市場、さらには国境を越えて国際金融市場を駆けめぐるようになったのです。


執筆者プロフィール


S(イニシャル)
1964年生まれ。
公務員試験対策予備校や大学・専門学校など、様々な現場で学生を指導してきました。
得意なのは大学レベルの経済学、経営学、会計学で、究進塾では主に大学授業補習コース(オンライン)を担当。

長年の豊富な指導経験から、「学生のつまづくポイント」を的確に把握しています。
堅苦しい「経済学」という学問を丁寧に解きほぐし、わかりやすく説明します。
とても親しみやすい性格で、質問もしやすいです。
生徒様お一人お一人に合わせた、また基礎を大切にした丁寧な指導がモットーです。


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