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教育者としてはもちろん、子育てする親としても大変勉強になる本を読みましたのでご紹介させていただきます。
「自律する子の育て方」という新書で、千代田区立麹町中学校を校長先生として大きく改革した工藤勇一先生と、脳神経発明家の青砥瑞人さんの共著です。
教育者として様々な生徒に向き合ってきた工藤先生と、脳神経科学の専門家の青砥さんが「メタ認知」というキーワードを軸に添えながら、子育てと教育のあるべき姿について交互に書いて行く、バランスが素晴らしい本でした。未就学児から高校生ぐらいまで、かなり幅広い年代の子育てに通じる内容で、ポイントを絞るのが難しいほど内容の濃い本でしたが、ここでは、特に高校生以上のお子様を持つ保護者に向けてお伝えしたいポイントを8つ、ご紹介したいと思います。
①叱っている大人が心理的危険状態にあることを認識する
この本では「子どもの心理的安全性を確保することが最重要」という前提の元で、親が叱ってしまう場合に、大人自身が心理的危険状態にあることが意外と多い、という点を指摘しています。そして、次の方法を対策として提案しています。
・(大人が)ストレスをストレスとして感じにくくなるように考えを改める
・子どもと向き合うとき以外のストレスを減らす
・キレやすいパターンを自覚し、先手を打つ
私も生徒から様々な相談を受けると、保護者様が感情に流されて発言したり、怒りをぶつけたり、という局面が意外なほど多いと実感します。これにはデメリットしかありません。まずは大人が冷静さを保った状態で接する、このために上記の3つの方法をツールとして持っておくことをおすすめします。
②自己肯定感がストレス耐性を上げる
「自己肯定感が高い状態にあるほど、ストレスホルモンの分泌量が減る」という研究結果を紹介しています。結局のところ、自己肯定感をどう上げるか?という点がカギになりそうですね。
③否定されない環境をいかにつくるか?
周囲からダメ出しをされたり、問題児のレッテルを貼られている子は自己否定に陥っているという点を指摘し、自己肯定感が高められる環境に身を置き続ける経験の重要性に言及しています。
④人と比較しない
これは特に耳が痛いですね。多くの保護者様がやってしまいがちなのではないでしょうか?
多く学校では順位や成績表がありますし、なによりも大人自身も毎日他人と比較しながら生きてしまっている方が大半だと思います。
ですが、工藤先生は、子どもに身に着けさせるべき能力は「自分を成長させて行く力」だと言います。そのために必要な視点は、自分の変化を時系列で追って行く視点です。
ついつい人と比較してしまいがちですが、できるかぎり避けましょう。
比較するのであれば、「子どもの過去」(からの成長)に留めましょう。
⑤自己否定のきっかけとなる刷り込みをやめる
子どもに自信を持ってもらうのも、深く傷つけるのも、周囲の大人が使う「言葉」しだいです。
⑥心理的安全につながる正しいほめ方
・結果をほめずにプロセスをほめること
・第三者を介してほめること
これは子育ての本などでよく目にする機会がありますね。
⑦徹底的にプロセスを意識させる
プロセスをほめるようにすると、子どもは「プロセスの質」を求めるように意識が変わる
⑧子どもが気づいていないことを言語化する
本人が気づいていないところをほめてあげること→嬉しいだけでなく、そのことに意識が向く→本人が持っている自己イメージに対して、新しい自己イメージをインストールして同時発火させるようなもの
以上です。
面談などで保護者の方とお会いすると「もう少し子どもへの接し方、考え方を変えれば、もっとよい方向に行くのに・・・・」「今は子育てについて、本やテレビやyoutubeで多くの有益な情報に触れる機会があるはずなのに、いまだに古い価値観を信じて疑いも持っていないのはなぜなんだろう?」「勉強不足が過ぎる・・・」と思うことが少なくありません。
一方で、受験情報や大学受験の合格実績がよい学校、塾などの情報はプロ顔負けなほど豊富に持っていたりして、アクセスしている情報のアンバランスさを感じることがあります。
極端なことを言えば、保護者が(受験にではなく!)子育てについて情報を収集し、ちゃんとした知識を得れば、子どもたちの人生は明るくなって行く、そしてよい社会につながって行く、と私は信じています。
大げさに言えば「保護者の度量が問われている」と言っても過言ではありません。
この記事を読んだ方が一人でも多く、この本に触れることで、子どもへの接し方に変化が生じることを願ってやみません。
<この記事に登場する書籍>
工藤勇一、青砥瑞人『自立する子の育て方』
並木陽児 究進塾代表。最近ハマっていることは、川遊び(ガサガサ)と魚の飼育です。 |