今回は、日本留学試験(EJU)の対策についての解説です。EJU対策にあたって、まずはどういう試験なのか、概要をご紹介します。
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今回は、日本留学試験(EJU)の対策についての解説です。EJU対策にあたって、まずはどういう試験なのか、概要をご紹介します。
はじめに:当記事は、動画で解説している内容をご紹介しています。音声を流せる環境にある方はぜひ動画もご覧になり、宮本先生の授業の雰囲気も一緒に掴んでいただければと思います。
動画紹介
【究進塾】大学受験対策チャンネル
【留学生向け】日本留学試験(EJU)対策コースのご案内(所要時間: 19分50秒)
講師:宮本匡
法政大学大学院 政策創造研究科 修士課程 修了。2000年から14年間、大手旅行会社で教育旅行営業職を担当し、国内外を添乗員として同行する。その後、2014年に文化庁届出受理の「420時間日本語講師養成講座」を修了。ベトナムでは日本語実習機関、ロシアでは大学など海外での実務経験を積み2019年に帰国。現在は「食文化による多文化共生」研究の傍ら、対面・オンラインを問わず日本語教育の道を歩み続けています。
並木:本日は、EJU対策を担当されている宮本先生にお越しいただきました。よろしくお願いします。
宮本:よろしくお願いします。
並木:宮本先生は、主に日本語を担当されていらっしゃいます。
担当生徒の出身とレベル
並木:まずは、これまで担当した生徒の出身国、最初のスタートレベルなどについて伺えますか?
宮本:究進塾で担当した生徒には、4カ国(中国、インドネシア、タイ、マレーシア)の方がいらっしゃいます。日本語の習得度合いは、JLPT(日本語能力試験)で言うとN3以上です。ただ、多くの方はN2、N1をお持ちです。
授業の進め方
並木:実際に指導されていく中で、授業の進め方としてはどういう感じで行っていますか。
宮本:究進塾で日本語を勉強される方には、「日本語学校で勉強してきた知識を、さらに伸ばしたい」という学生がいらっしゃいます。なので、どのような対策を立てたいかというのは、学生によってバラバラです。まずは並木先生と一緒に、入塾時の面談で、「ここでどのようなことを勉強したいのか」「EJUの試験を受ける上で何が困っているのか」など、そういったことをヒアリングし、プログラム立てをします。
並木:実際の指導ケースや、どういうことを中心にやっているか、といった具体的なことはありますか。
宮本:受け持っている生徒は、全員、日本語学校に通う学生です。
ケース1 そのうちの1人に関しては、特に文法の力が苦手で、ご自身でも「苦手です。一方では会話は上手なんですが、どのように対策を立てたらいいですか?」と自覚がありました。では、EJUの試験でより高いスコアを取るためにはどうしたらいいか、ということになるんですが、本人としては「文法は嫌いだからあんまり勉強したくない、できたらそれを回避して、スコアをより高く取る方法はないか」というお話がありました。ですから、まずは彼に対して、「やっぱり自分自身が、何か不足しているから、それを克服したいから、こちらに来たんだよね」と、僕が勉強の対象として何が必要なのかを伝え、それにコンセンサス(合意)を得ます。苦手とする分野なので勉強するのは非常に大変だと思うんですけれども、そこから少しずつ着実に、彼の場合なら文法を勉強することを、一緒にさせていただいて、こんにちに至るケースもあります。 |
ケース2 別の学生の場合、日本語学校の成績は非常にいいんです。話を聞くところ、聴解、聴読解、文法、さらには普通の語彙、漢字の勉強に至るまで、よくよく聞くと点数は高いんですけれども、その日本語学校の集団の中より、もう一つ上に飛び出したい、という目的意識を強くお持ちでした。それをどのように勉強したらいいか提案してほしい、という理由で通われている方もいます。その方に関しては、実際にこちらで勉強する際にも、ほぼ良い点数を取られてしました。けれど、文法、読解などと万遍なく比較していくと、とある分野だけは、やはり少しスコアが低いところがあるんです。そこを、まず気づきとして「全体的にはいいんだけど、この分野が少し低いから、ここをもう少し伸ばすにはどうしたらいい?」というのを一緒に考えていき、「じゃあ、こういうことをしましょう」というように、やはり2人でプログラムを作って、対処していく方針を取っています。 |
並木:ちなみに、指導する上で、教材はどういうものを使用していますか?
宮本:EJUを勉強する方に関しては、まず必ず買っていただくテキストがあります。EJUの試験で出る重要単語の本です。言葉を勉強することが、やはり一番基本になります。そのため、私が口を酸っぱくして申し上げるのは、それこそ検定試験というのはJLPしかり、いろいろな試験があるんですが、EJUの特性に合ったテキストを選んでいただくことも、一つ大切なことだと思います。その上で、EJUの試験に沿った言葉を勉強することが、私自身は大切だと思ってます。ですから、そのテキストは必ず紹介しています。
並木:それ以外にも、使っている教材はありますか?
宮本:他には、例えば読解に関しては教科書を用いていますが、先ほど言ったことと実は矛盾することがあります。読解に関しては、私はEJU専門の読解のテキストも使ってるんですが、JLPTのN1の読解のテキストも使用しています。これには理由がありまして、EJUの日本語試験のシラバスを見ると、範囲として、説明文、論説文、大学に関わる事務的なレポート、この3つが主な柱として出てるんですけれども、実際の過去問を解くと、随筆、いわゆるエッセイ関係のも出てくるんです。実際に筆者が体験したことをどのように主張に変えていくのか、というクリティカル(批判的)な部分も読解では必要な技術ですので、そういったことを日本語能力試験、N1のテキストを使い、補って、学生さんには勉強していただいてます。
並木:なるほど。ちなみに、過去問を使うこともあるんですか。
宮本:過去問も使わせていただいてます。ただ過去問に関しては、日本語学校さんのプログラムでよく使われていらっしゃるんですね。過去問や、模擬試験を授業で使用されていたりします。で、それを繰り返し繰り返し、日本語学校で多く練習されていらっしゃいます。しかしそれだけだと、私が学生さん方を見て気になるところは、点数だけ見て一喜一憂される方が非常に多いことです。
「過去問だけ」のデメリット
宮本:例えば、過去問で点数が比較的良い点が取れました、と。読解と聴解・聴読解で合計400のところ、例えば仮に350点取れたとします。これは非常に良い成績です。1回この成績を取れたら「ラッキー!」「よかった!」「私は大丈夫だ!」と思ってしまいがちなんですね。やはりスコアというのは、一番励みになるものじゃないですか。
でも、そこが私自身が気になるのは、「じゃあ50点、何が足りなかったんだろう?」っていう、マイナスのところです。その50点分を冷静に分析していくと、過去問だけを解いて解いて解いて…というのでは、解決できないこともあるんです。
それこそ日本語学校の中で好成績を取られてる彼の話になってくるんですが、彼の場合は具体的に読解の中で何が足りないんだろう?っていうのを、実はこれを2ヶ月ぐらいかけて、一緒に探したんです。
それで最初、彼が思っていたのは、テーマに関してです。「僕は文系の人間だから、自然科学の分野のテーマが出たら、読解は苦手。だから点数がその分が低い」と考えてたんです。けれど、実際に過去問をよくよく分析していくと、そうではなかった。
とある問題形式、特に筆者の言い換え、「この部分の表現を他の表現ですると、どうなりますか」っていう選択の問題が極めて苦手だということがわかったんです。ここでも、個別指導の醍醐味にもなるんですが、生徒さんと一緒に、ゆっくり時間をかけて、「何が足りないんだろう」「じゃあその足りないところをどうやって伸ばしたらいいんだろう」というのを、2人で合意を得て、それで先に進める。そうすれば、少なからず、少しでも点数が良くなっていくっていうのが、私の思うところではあります。
日本語学校ではできないサポートとは
並木:究進塾にいらしてる方は、全員、日本語学校に通いながらも、サポートを求めて来塾されていますが、日本語学校でできないサポートというのは、どういうところだと思いますか。
宮本:やはり一対一、フェイストゥフェイスで対策するきめ細やかさ、そこが日本語学校と、個別で行っている究進塾との大きな違いがあると思います。
理由としては、例えば日本語学校の中で、もちろん学校の規模にもよりますが、大学進学コースに在籍します。そこでEJUの試験問題、並びにJLPT、その他文法の授業等で、それぞれの日本語の能力・技能を高めていくことにはなるんですが、どうしても集団である以上、なかなか先生との対応というのが、授業後の質問の時間であったり、それこそ学生が自発的に時間を取らないと、なかなか解決できないのかなとは思うんです。
事実として、究進塾にいらっしゃる留学生の方が、日本語学校の宿題をお持ちになり、それぞれ「先生すいません、ちょっとこの問題に関して解き方、何でこの答えが合ってるのか、日本語学校の先生の説明ではちょっとわかりにくかったので、もう一度説明していただけますか」っていう質問を持ってきます。やっぱりそういう方が多くいらっしゃるんです。
これは別に、とある方に限った話ではなくて、私が担当させていただいている4名の中で、それこそ2名の方は「日本語学校の宿題もちょっと見ていただけますか?」ということもおっしゃるんですね。
この現象というか、「これはどういうことなんだろう」と考えたときに、やはり日本語学校の中での留学生と先生とのコミュニケーションの量の関係で、学生にとって何らかの不足を感じてるのかなと思うんです。
そうすると、やはり近くのここでは、その個別の中では60分、90分、120分、ご契約内容によって先生を独占することができるわけですので、質問しやすい環境にはある。しかも、やっぱり集団の中では、学生はある程度、自分の中で線を引かなければいけないことがありますよね。
それこそ、本当は100%、120%までわかることができていない、理解が70%くらいの状態でも「わかりました」と言わざるを得ないところもあるとは思うんです。でも、個別だとそれでもわからなければどんどん聞いてくる。そういったことができますし、こちらも対応することができるんです。
そうした「補完的役割」というのが、やっぱり非常に日本語教育の中でも大切なことを占めてるのかなと思います。
並木:なるほど、確かに。
得点を上げるために必要なのは
並木:先ほど、「授業の中で過去問を使う」とおっしゃいましたが、多くの受験生はやっぱり「過去問がメインで」という意識がすごく強いと思います。極端な話、過去問だけを繰り返しやっていれば、それで十分なんでしょうか?
宮本:こちらに関しては、過去問は、まずはしなければならない、取り組まなければいけない内容なんですが、それに満足してはいけない、というのが私の回答です。日本語学校でも、過去問ないし模擬試験で、多くEJUの勉強に取り組まれているんですが、その目的が「時間」になっています。時間が足りないことへの対策です。問題自体の難易度に比べて時間は短く設定されているので、いかに効率よく解いていくか。そこがやっぱり日本語学校が取り組まれている、いかにスコアを上げるかという方法です。そのための取り組みとして過去問を多くされていらっしゃいます。
事実として、インターネットで、例えば「日本留学試験 読解」等で検索かけていただくと、「どのように早く読んでいきますか」という日本語の先生のブログ、動画、そういうようなものが多くヒットするのが現状です。
ただ、いつも思うこととしましては、過去問題を多く取り組んでいって、問題を早く解けるようになるというのは、日本語の母語話者だからできることなんです。日本人が日本語のテキストをいかに速く読めるか、それは読み込むことができたら、当然読み飛ばすこともできますし、いわゆる言語学の言葉で言うとスキャニング、スキミング、それができるから早く読める。ただそれを、じゃあ学習者、日本語学習者に、「形式に慣れるために、それを何度も何度も!」と言っても、やはり限界があるとは思うんです。
ここに来塾される留学生の方からも、「多分もうこれ以上速く読めません。どうしたらいいですか。」という質問は多くにいただきます。特に、非漢字圏と言われる中国系以外の方は、漢字の読み、それが音読みなのか訓読みなのか、そこから迷ってしまうということが1つあります。また、表意文字ですので、文字自体に意味があるという漢字の特別な点、そこに慣れるのに苦戦してしまって、なかなか先に進めなくなってしまうんですよね。
一部の先生は「時間が足りない、読解だったら、1問あたり90秒で解かなきゃいけないんだ」と。そういうことになってくると、やっぱり心理的負担、圧迫によって、学生は冷静に読むことができなくなって、投げてしまうことが多いんです。
なので、私がいつも言っていることとして、さっきのお話も絡んでくるところですが、過去問題を使って、どこが得意で、どこが苦手なのか、そういうことを分析することなんです。
過去問をいたずらに何問も何問も解いたところで、点数は下がることはないかもしれませんが、上がることもあまりないと私は思っています。そこを、どのように技術的な支援をするか。それが、先ほどの留学生だったら「話題」が原因と思っていたものが、実はとある問題形式に引っかかっていたと。じゃあその問題形式に引っかかっているのだったら、その類似問題を多く紹介して、解く練習をしていけばスピードが上がっていくわけですので、私自身の意見としては、やっぱり過去問は大切なんですけれども、過去問に甘えることなく、そこを俯瞰的に過去問題を見ていただいて、自分の得意分野、弱点分野を分析することが必要だと思っています。
受講中の生徒の志望先
並木:今、担当している受講生の方が目指している大学っていうのは、どういったところになりますか?
宮本:これは、文系理系問わずですが、東京の大学だとMARCH以上、関西の大学だと関関同立以上の方がほぼです。
並木:皆さん、その辺りはご存知ということですか。
宮本:そうですね。たまに「志望理由書をチェックしてください」と言われることからも伺い知ることができますが、彼らが持ってくる大学、相談してくる大学はMARCH、または関関同立ですね。
並木:やっぱりそこに、ある種のラインというか、“ここ以上”みたいなのは皆さんお持ちなんですね。
宮本:それぞれが通われている日本語学校の環境にもよると思うんですが、日本語学校の中の進路指導で、偏差値ほど細かくはなくても、日本の大学のある程度のカテゴライズは教えられてるようなんです。それに、学生は日本の大学がたくさんあることはもちろんご存知ですが、日本語学校の中の指定校推薦などを通して、ある程度…レベルって言ったら失礼な話ですけれども、グループにわかれるということは十分承知しています。「その1つのグループよりも上」っていう、やっぱりこの気持ちは強い。日本語学校の進路指導の話も影響してると思いますよ。
並木:なるほど。
講師からメッセージ
並木:宮本先生から、これをご覧になっている方にメッセージがあればお願いします。
宮本:日本の大学の留学に向けて、受験勉強をしている方は多くいらっしゃると思います。日本語学校での勉強とともにこちらの究進塾にお越しいただき、良い言い方をすれば先生を独り占めできる、そういった環境でも勉強していただくといいかなと思います。日本語学校で勉強する中で、いろいろな質問、疑問、悩み、不安があるかと思います。そういったことを、優しい先生がたくさんいますので、こちらに来ていただいて、先生と一緒に解決していきましょう。心が安定した状態で受験に臨み、良い結果が出せるよう、一生懸命サポートしていきたいと思います。頑張りましょう。
並木:今日は貴重なお話をいただきまして、ありがとうございました。
宮本:ありがとうございました。
おわりに
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