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【1】前回の復習:需要曲線・供給曲線と余剰のイメージ

まずは前回の復習をおこないます。「需要曲線には買手の購入希望価格」「供給曲線には売手の販売希望価格」が順番に並んでいます。図をご覧ください。買手は価格Aよりもわずかに値下がりすると購入を始めます。売手は価格0(ゼロ円)を超えると生産を始めます。赤色の棒線が「買手のお買い得感青色の棒線が「売手のお得感」を示しています。棒線には幅がありますが実際は計測できない状況(3.3円とか0.8円とか)で価格が変化する状況を想定すると棒線の幅は縮まり隙間なく並んでいきます。「棒線の合計が余剰」なので、「棒線が隙間なく並ぶ」ということは「面積を求める」ことになります。
このように考えると

「消費者余剰」「赤色の棒線が隙間なく並んだ面積=三角形AEPとなります。
「生産者余剰」「青色の棒線が隙間なく並んだ面積=三角形EOPとなります。


【2】市場均衡点Eと「支払額=収入額」

より詳しく説明しましょう。「四角形PEEXEO=買手の支払額=売手の収入額」になっています。市場均衡点Eで取引が成立していますので「四角形PEEXEO」の金額を買手が支払い、売手は受け取っています。


【3】買手の状況:総便益・純便益(消費者余剰)

この商品を購入する買手の状況を考えてみましょう。「買手全体に生じる満足度の合計=台形AEXEO=総便益」です。「満足度を得るための費用=マイナスの満足度」ですので「純便益=総便益-費用」となります。「純便益」のことを「消費者余剰」といいます。「総便益=メリットの合計=商品購入の満足度合計」「純便益=純メリット=お買い得感」です。


【4】売手の状況:限界費用と可変費用(VC)

次に、この商品を販売する売手の状況を考えましょう。供給曲線が売手の限界費用(MC)に対応していることを思い出してください。むずかしいと感じた人は、本ブログ「ミクロ経済学~生産者理論④」をご覧ください。

過去記事はこちら! → ミクロ経済学~生産者理論④―価格変化と利潤最大化―


売手は価格と限界費用が等しくなるように生産量を決定します
。「売手の利潤最大化条件」は「価格(P)=限界費用(MC)」です。限界費用(MC)は生産量を増加させたときの「追加費用」のことです。「追加費用」は生産量に応じて増加するので「黒色点線の棒線=各売手の追加費用」を「隙間なく並べた面積」が「可変費用(VC)」になります。

つまり、生産量がXEまでの供給曲線より下の面積が「可変費用(VC)」となります。

「売手の収入額(総収入TR)-可変費用(VC)=生産者余剰」と計算できます。


【5】式の整理と生産者余剰の正体

まとめると次のようになります。
総収入(TR)-可変費用(VC)=生産者余剰…①
総費用(TC)=可変費用(VC)+固定費用(FC)…②
総収入(TR)-総費用(TC)=利潤…③

②を③に代入すると
総収入(TR)-[可変費用(VC)+固定費用(FC)]=利潤
総収入(TR)-可変費用(VC)=固定費用(FC)+利潤…④

①=④より
生産者余剰=固定費用(FC)+利潤…⑤

⑤式より「生産者余剰=利潤」ではないのです。これまで「生産者余剰=売手のお得感」として説明してきました。回りくどい表現でしたが「生産者余剰」に「固定費用(FC)」が含まれているために「生産者余剰=利潤」とはいえず「売手のお得感」としていました。なぜ「生産者余剰」に「固定費用(FC)」が含まれるのでしょうか?その理由については次回のブログをお楽しみにしてください。


執筆者プロフィール


S(イニシャル)
1964年生まれ。
公務員試験対策予備校や大学・専門学校など、様々な現場で学生を指導してきました。
得意なのは大学レベルの経済学、経営学、会計学で、究進塾では主に大学授業補習コース(オンライン)を担当。

長年の豊富な指導経験から、「学生のつまづくポイント」を的確に把握しています。
堅苦しい「経済学」という学問を丁寧に解きほぐし、わかりやすく説明します。
とても親しみやすい性格で、質問もしやすいです。
生徒様お一人お一人に合わせた、また基礎を大切にした丁寧な指導がモットーです。


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