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【1】市場需要曲線・市場供給曲線の基礎

これまでの学習で「縦軸を価格」「横軸を数量」とした場合に「需要曲線は右下がり」「供給曲線は右上がり」であることを学びました。ここでいう「需要曲線は各個人(消費者)」「供給曲線は各企業」の行動に基づいて導出されています。各人(一人ひとり)の行動に着目して「各人の行動を集計する」と「市場全体の動き」をとらえることができるようになります。このように考えると
各個人の需要曲線を集計すると市場全体の需要曲線
各企業の供給曲線を集計すると市場全体の供給曲線」になります。
各個人の需要曲線を「個別需要曲線」各企業の供給曲線を「個別供給曲線」といいます。市場全体の需要曲線を「市場需要曲線」市場全体の供給曲線を「市場供給曲線」といいます。通常、何の断りもなく使用している場合は市場全体について示している場合も単に「需要曲線」「供給曲線」ということが多いです。


【2】総余剰・消費者余剰・生産者余剰の定義

続いて「余剰」について定義します。「余剰」とは「市場取引(交換)によって発生する利得」のことをいいます。「利得=金銭的メリット」であり、市場取引に参加することによって「参加者(買手・売手)に発生する金銭的メリット」だと思ってください。社会全体で発生する余剰を「社会的余剰=総余剰」といいます。「社会的=総」という意味です。以後は「総余剰」で統一します。「総余剰」は市場参加者の余剰の合計です。買手に生じる余剰を「消費者余剰」売手に生じる余剰を「生産者余剰」といいます。
まとめると

総余剰=消費者余剰+生産者余剰

となります。


【3】総余剰が大きい状態=資源配分の効率性

「総余剰」が大きいほど全体としてのメリットが大きいので「資源配分が効率的」といえます。市場参加者が取引に納得しており「買手は望む価格で財を購入」「売手は望む価格で財を販売」している状態が実現しています。お互いが望むとおりに取引が成立している状況を「資源配分が効率的」であるといいます。


【4】グラフを用いた市場分析の導入


【5】完全競争市場を前提とした取引の整理

話を簡単にするために「買手である消費者は自分が希望する価格でこの財を1個だけ買う」「売手である生産者は自分が希望する価格でこの財を1個だけ売る」とします。この仮定の下では財の数だけ買手(消費者)と売手(生産者)が参加していることになります。数多くの買手と売手が財を自由に取引する市場のことを「完全競争市場」といいます。「完全競争市場」の詳しい定義は本ブログ「ミクロ経済学~生産者理論①」を参照してください。

過去記事はこちら! → ミクロ経済学~生産者理論①―利潤と完全競争の基本構造―

 


【6】市場需要・供給曲線と均衡価格の決まり方

それではグラフの解説をはじめます。
グラフを再掲しておきましょう。

まずは「右下がりの市場需要曲線」についてです。

「市場需要曲線上には買手一人ひとりが希望する財の価格」が並んでいます。
「市場供給曲線上には売手一人ひとりが希望する財の価格」が並んでいます。

「市場需要曲線」をみると「価格A」の場合は需要量がゼロ(X=0)となり価格が高すぎて誰もこの財を買わないことを示しています。しかし価格がAよりもわずかに低下すると購入希望者が出てきます。価格の低下とともに購入希望者は徐々に増加します。
「市場供給曲線」をみると価格がゼロのときは販売希望者が誰もいないのでX=0となります。価格がわずかに上昇すると販売希望者が徐々に増えてきます

このような市場参加者の自由な行動の結果、価格がPEに決まります。「価格PE」は「実際の取引価格=均衡価格」であり、「買手が支払う価格=売手が受け取る金額」となっています。買手も売手も「価格PE」に納得して取引をおこなっているのです。このように考えると「価格PE」よりも安く買いたいと思う買手はこの取引に参加しません。「価格PE」よりも高く売りたいと思う売手は値上げしても誰も買ってくれないと思い「価格PE」で取引します。


【7】消費者余剰と生産者余剰の考え方

以上の考察より「買手の購入希望価格≧PE」のときに買手は「思ったよりも安く買えたことでお買い得感」を実感します。

たとえば「PE=100円」のときに「200円でも買うつもりだった人」にとっては「200円-100円=100円」が「お買い得感の金銭的価値」が発生します。この「お買い得感」を市場全体で集計したものを「消費者余剰」といいます

一方「PE≧売手の販売希望価格」のときに売手は「もっと安くてよかったのに高く売れてうれしい」と思います。「PE=100円」のときに「50円でも売るつもりだった人」にとっては「100円-50円=50円」が「売手のお得感を示す金銭的価値」となります。この「売手のお得感」を市場全体で集計したものを「生産者余剰」といいます


【8】余剰をグラフで可視化する意味と次回予告

グラフでは赤色の棒線が「買手一人ひとりのお買い得感」
青色の棒線が「売手一人ひとりのお得感」を示しています。

これらを「集計すると面積」として求めることができます。

「消費者余剰は価格PEより上の赤色の面積」
「生産者余剰は価格PEより上の青色の面積」になります。

詳細な説明は次回のブログをおたのしみに!


執筆者プロフィール


S(イニシャル)
1964年生まれ。
公務員試験対策予備校や大学・専門学校など、様々な現場で学生を指導してきました。
得意なのは大学レベルの経済学、経営学、会計学で、究進塾では主に大学授業補習コース(オンライン)を担当。

長年の豊富な指導経験から、「学生のつまづくポイント」を的確に把握しています。
堅苦しい「経済学」という学問を丁寧に解きほぐし、わかりやすく説明します。
とても親しみやすい性格で、質問もしやすいです。
生徒様お一人お一人に合わせた、また基礎を大切にした丁寧な指導がモットーです。


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