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【1】企業と利潤の意義
今回から生産者理論に入ります。生産者のことを「企業」ともいいます。「企業」は人々が生活するうえで必要とする様々な財・サービスを生産して社会に貢献しています。「企業」が存在しなければ私たちの生活は成り立ちません。「企業」が生産活動を継続していくためには「利潤」が必要です。「利潤」には「もうけ」という意味があります。「もうけ」というと経営者が独り占めしているイメージがありますが、この「もうけ」は新事業への設備投資資金や出資者(株主)への配当金の原資になります。「もうけ」を経営者が独り占めしていては企業経営が成り立たなくなってしまいます。

「企業」は私たちの生活を支えるためになくてはならないものであり存在し続けることに意義があります。そのためには「利潤」が必要です。「継続企業(going concern)」という言葉があります。個別にみれば企業は新規設立と倒産を繰り返しながら企業活動自体は永遠に続くという意味です。
【2】利潤の定義と表記
ミクロ経済学では企業の行動原理を「利潤最大化」としています。次に「利潤」について定義してみましょう。
利潤(π)=総収入(TR)-総費用(TC)
利潤はProfitですが価格のPriceと頭文字が同じなのでπにしています。標準的なテキストでは利潤をπとしていることが多いです。総収入はTotal Revenue、総費用はTotal Costです。総収入、総費用を単純に収入、費用で表してもいいと思いますが、経済学が外国で生まれた学問であることから外国文献の表現に合わせて「総(Total)」をつけています。
【3】総収入(TR)の定義と完全競争市場
続いて「総収入(TR:Total Revenue)」について定義します。
総収入(TR)=販売価格(P)×生産量(Ⅹ)
数量の表記については、本来なら販売量を使いますが、総費用(TC)を定義するときの数量が生産量になりますので数量をそろえて「販売量=生産量」とします。もうひとつ「販売価格=価格」を一定とします。この仮定は「完全競争市場」を前提にしていることを意味しています。「完全競争市場」条件は次のようになります。
| [完全競争市場の条件] ① 売手・買手とも無数に存在する ② 製品差別化がない(無数に存在する売手の生産物に差がない=どれも同じ) ③ 情報の完全性(市場参加者に情報が完全共有されている) ④ 市場への参入・退出が自由 |
以上の4つの条件をすべて満たす場合、激しい競争状態になると想像できます。品質等が同じ商品を無数の売手が販売している状況では、値上げをしたら買手が全くつかず、逆に値下げをしたら自分の店にお客が殺到することになります。それを見た別の店も値下げして顧客を取り戻そうとします。
つまり、売手は自分が希望する価格をつけることができなくなります。このような状態を「プライステイカー(price taker:価格受容者)」といいます。売手はみんな同じ価格のもとで競争することになります。このように「一つの物には一つの価格」がつけられることを「一物一価の法則」といいます。現実には「完全競争市場」は存在しないといわれていますが、競争状態を考えるときに理論上の想定として使います。また、このような状況が成立するためには「価格」「品質」に関する「情報」が市場参加者(売手・買手)全員に共有されている必要があります。
【4】総費用(TC)の定義と利潤式のまとめ
最後に「総費用(TC:Total Cost)」について定義します。
総費用(TC)=可変費用(VC)+固定費用(FC)
「可変費用(Variable Cost)」とは生産量の変化によって変化する費用のことです。たとえば「材料費」「燃料費」「時給払いの賃金」などです。「固定費用(Fixed Cost)」とは生産量の変化に関係なく一定額発生する費用です。たとえば「家賃」「固定資産税」「自動車税」などがあります。これらの費用は生産量がゼロでも発生しますし、生産量が増加しても変化しません。発生額が一定(固定)されているので「固定費用」といいます。
以上より
利潤(π)=総収入(TR)-総費用(TC)
利潤(π)=PX-(VC+FC)
となります。次回は利潤最大化行動について説明します。
執筆者プロフィール

S(イニシャル)
1964年生まれ。
公務員試験対策予備校や大学・専門学校など、様々な現場で学生を指導してきました。
得意なのは大学レベルの経済学、経営学、会計学で、究進塾では主に大学授業補習コース(オンライン)を担当。
長年の豊富な指導経験から、「学生のつまづくポイント」を的確に把握しています。
堅苦しい「経済学」という学問を丁寧に解きほぐし、わかりやすく説明します。
とても親しみやすい性格で、質問もしやすいです。
生徒様お一人お一人に合わせた、また基礎を大切にした丁寧な指導がモットーです。



