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1. ミクロ経済学とマクロ経済学の位置づけ
本ブログにおいて「経済のしくみ」について説明を繰り返してきました。今回はこれまでの復習と「ミクロ経済学」と「マクロ経済学」についての学び方について説明します。「ミクロ経済学」「マクロ経済学」といっても「経済学」であることに違いはなく、根っこでつながっているはずです。「経済活動」とは「消費活動」と「生産活動」を「絶えず繰り返す」ことです。「点として存在する」各個人・各企業の活動は「価格理論」として「ミクロ経済学」の領域になります。一方、「絶えず循環する」という視点から経済活動全体をとらえると「所得理論」として「マクロ経済学」の領域になります。
2. ミクロ経済学の特徴
「ミクロ経済学」では経済主体(個人・企業)の合理的行動を理論化します。「合理的」とは「無駄なく効率的に行動すること」です。商品の内容が質・量が同じであれば、あえて値段が高いものを買わずに「安い方を買う」ということです。このように人々が行動すれば、市場で取引される商品は「安くて良いもの」だけが生き残ることになります。これを生産する企業側から見ると「原価を抑えながら良いものを作る」という行動を強制されます。生産活動には様々な資源が投入されます。資源には「ヒト、モノ、カネ、情報」があります。「資源は有限」です。人々が合理的に行動することにより資源を効率的に使用することを可能にします。「ミクロ経済学」は「資源の効率的な配分を重視する学問」といえます。「資源の効率的配分」とは社会が必要としている商品を効率的に生産するために地球上に存在している資源をどのように組み合わせて使用するかということです。
3. 合成の誤謬とマクロ経済学の必要性
ところが、経済主体の合理的行動だけでは経済活動全体をうまく説明できません。その例として「貯蓄のパラドックス」という事例があります。「貯蓄」は「所得のうち消費されなかったもの」という定義です。「貯蓄=節約」「パラドックス=逆説」と考えてください。「貯蓄(節約)する」という行動は一個人の行動(ミクロ的)としては合理的です。自分だけが節約に励めば貯蓄額の目標に到達できます。しかし、多くの個人が節約に励むと、経済全体の取引が縮小して「景気後退」につながります。「景気後退」は人々の所得を減少させます。貯蓄は所得を源泉としますので、所得の減少は貯蓄を減少させてしまいます。
貯蓄意欲 ↑ ⇒消費 ↓ ⇒GDP ↓ ⇒所得 ↓ ⇒貯蓄 ↓
となり、「貯蓄意欲の上昇が貯蓄を減らす」という「逆の結果(パラドックス)」になっています。
このように部分的(ミクロ的)に正しいことが全体的(マクロ的)にみると正しくないという結果を生みます。このような状況を「合成の誤謬(ごびゅう)」といいます。「ミクロ経済学」だけでは「合成の誤謬」が生じるため、別の理論構造を持つ「マクロ経済学」が必要になるのです。「ミクロ経済学」が取引を「点」としてとらえるのに対して「マクロ経済学」では「点」として発生した取引の「波及効果」をとらえていきます。
4. 学び方のポイント
最後に、二つの経済学を学ぶにあたってのポイントを押さえておきましょう。どちらの経済学も分析道具として数式とグラフを使います。「ミクロ経済学」では、「資源の有限性」を前提として各経済主体(個人・企業)の「最適化行動(効率的な行動)」について説明します。「制約条件付き最適化問題を解決する」ことが「ミクロ経済学の学問としての目的」です。やさしく表現すると「限られた資源を効率的に使って最適な効果を出す」ということです。
「マクロ経済学」では「波及効果」による「つながり」を理解することが重要です。「つながり」は「相関関係」として表現されて「数式化」されます。「消費は所得によって決まる」「投資は利子率(金利)によって決まる」という関係を数式化していきます。数式の個数が増えるほどマクロ経済モデルの規模が大きくなります。「複数の連立方程式の均衡解を求めること」が「マクロ経済学の学問としての目的」となります。方程式の各変数を変化させることによって「経済政策の効果」を分析できます。学習の初期段階では数式の個数を最小限にして理論の本質を理解することに全力を尽くしてください。
方法論は異なりますが、どちらの経済学も「私たちの生活を理論的に解明するためのもの」であることをお忘れなく!
執筆者プロフィール
S(イニシャル)
1964年生まれ。
公務員試験対策予備校や大学・専門学校など、様々な現場で学生を指導してきました。
得意なのは大学レベルの経済学、経営学、会計学で、究進塾では主に大学授業補習コース(オンライン)を担当。
長年の豊富な指導経験から、「学生のつまづくポイント」を的確に把握しています。
堅苦しい「経済学」という学問を丁寧に解きほぐし、わかりやすく説明します。
とても親しみやすい性格で、質問もしやすいです。
生徒様お一人お一人に合わせた、また基礎を大切にした丁寧な指導がモットーです。