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「失われた30年」とは何か

日本経済は「失われた30年」といわれています。「失われた10年」が「失われた20年」になり、ついに「失われた30年」になりました。「失われた」というのは「実感できる経済成長がなかった」という意味です。
「GDPが増加する」ことを「経済成長」といいます。分かりやすくいうと「人々の稼ぎが増加する」ということです。
現在の日本は経済成長が30年間止まっており、「人々の稼ぎが増加していない」という非常に深刻な状況に追い込まれているのです。

景気循環と政策の必要性


「失われた30年」は異常な状態です。一般的には景気は好況と不況を繰り返しながら循環します。
「不況 → 回復 → 好況 → 後退 → 不況……」と繰り返します。

不況時に政策が必要なことは理解できると思いますが、実は好況時にも政策が必要になります。
歴史を振り返ると、高度経済成長期(1950年代後半~1970年代初頭)の「いざなぎ景気」が57か月、1980年代後半からの「バブル景気」が51か月と、好景気は5年以内で終わっています。

好況はやがて不況に向かう可能性があるので、できれば不況の程度を大きくしないように、景気の転換点を見極めて適切な政策が必要になります。
「失われた30年」というのは、バブル景気崩壊から30年以上経過しているという意味なのです。

安定した暮らしのために必要な経済政策

好況が続くことは望ましいですが、好況は永久には続きません。不況はできるだけ早く終わらせたいものです。

景気の変動幅を小さくし、安定した暮らしを実現するためには「適切な経済政策」が必要です。これは政治の重要な仕事の一つといえます。

代表的な経済政策には次の二つがあります。

・財政政策 … 政府が実施する経済政策(政府支出の増減、増減税)
・金融政策 … 中央銀行(日銀)が実施する経済政策(貨幣供給量の増減による金利調節)

財政政策の仕組み

財政政策は「政府支出の増減」と「増減税」の二本柱です。
経済の基本式は「GDP=消費+投資+政府支出+輸出-輸入」です。

▲「不況時」は民間の経済活動が低迷(消費と投資が不足)していますので、「公共事業の実施による政府支出の増加」「減税による消費促進」によってGDPを引き上げることが可能です。

◎「好況時」は景気が過熱している状態(需要が旺盛で国全体で見ると品不足の状態)であり、この状態を放置しておけば物価上昇(インフレーション)が発生します。この場合、需要が多すぎるので「政府支出削減」「増税による消費抑制」によって過熱を抑えることができます。

金融政策の仕組み

金融政策は貨幣供給量(マネーサプライ)の増減によって「金利を調節」し、GDPに影響を与えます。
金利は貨幣の需要(資金の借り手)と供給(資金の貸し手)のバランスで決まります。貨幣供給量は中央銀行(日本銀行)が調節します。

▲不況時には投資を増加させるために貨幣供給量を増加させ(資金をダブつかせ)て金利を引き下げます。

◎好況時には投資を抑制するために貨幣供給量を減少(資金を引き締め)させて金利を引き上げます。

ここでいう「投資」は多額の資金を必要とする「家計の住宅購入」と「企業の設備購入」のことです。多額の資金を調達するためには銀行からの借り入れが必要になります。資金の借り入れには金利が発生しますので、金利の調節によって投資に影響を与えることが可能になります。
「GDP=消費+投資+政府支出+輸出-輸入」より、

不況時には「金利引き下げ → 投資増加」
好況時には「金利引き上げ → 投資抑制」

このようにしてGDP(景気)を調節します。以上が金融政策のポイントです。
金融政策については内容が豊富なため、別の機会に詳しく説明します。


執筆者プロフィール


S(イニシャル)
1964年生まれ。
公務員試験対策予備校や大学・専門学校など、様々な現場で学生を指導してきました。
得意なのは大学レベルの経済学、経営学、会計学で、究進塾では主に大学授業補習コース(オンライン)を担当。

長年の豊富な指導経験から、「学生のつまづくポイント」を的確に把握しています。
堅苦しい「経済学」という学問を丁寧に解きほぐし、わかりやすく説明します。
とても親しみやすい性格で、質問もしやすいです。
生徒様お一人お一人に合わせた、また基礎を大切にした丁寧な指導がモットーです。


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