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行政書士って何をする人?――他士業との違いと“業際問題”のリアル

「行政書士って何をする人なんですか?」
「弁護士や司法書士と、どう違うんですか?」
これは、行政書士を目指す方や、開業後の相談の中でも、非常によく聞かれる質問です。

実際、行政書士の業務は非常に幅広く、しかも他の士業との連携が前提となる場面が多いため、外から見ると実態がつかみにくいのは事実です。
今回は、「行政書士の仕事の中身」と「他士業との違い」、そして注意すべき「業際問題」について解説します。


1.行政書士の業務とは?

行政書士は、「書士」=書類作成の専門家です。中でも、行政機関に提出する書類の作成や手続きの代行が主な業務となります。

たとえば、以下のような仕事があります:

  • 建設業・風営法・飲食店営業などの許認可申請(役所へ)
  • 公正証書遺言作成の支援(公証役場へ)
  • 契約書の作成・内容チェック
  • 外国人の在留資格・ビザ・帰化申請(入管業務)

近年では、外国人関連業務(入管手続)が主要業務となりつつあり、企業や外国人本人とのやり取りを通して国際的な案件も増加しています。


2.行政書士と他士業の違い

行政書士は、単独で完結する業務もあれば、他士業との連携が必要な業務もあります。
たとえば相続業務を例に取ると、その流れは以下のようになります:

  • 行政書士:戸籍収集、遺産分割協議書作成
  • 司法書士:不動産の名義変更(相続登記)
  • 税理士:相続税の申告・納付
  • 弁護士:紛争・訴訟の恐れがある案件への対応

このように、案件の内容に応じて最適な士業に“つなぐ”役割も、行政書士の重要な機能のひとつです。
ただし、業務が重なり合う部分もあるため、しばしば「行政書士の仕事が見えにくい」とも言われます。


3.業際問題とは?――法律違反と信頼喪失のリスク

行政書士が他の士業の業務を行うことは、法律で明確に禁じられています。
それでも現実には、次のようなトラブルが起きています:

  • 依頼者に頼まれて弁護士業務(訴訟代理)に手を出してしまう
  • 登記の手続を“親切心”で代行し、司法書士法に違反
  • 税務書類の作成・税額計算を行ってしまい、税理士法違反に

一部には、金銭的な動機や無知から違法行為に手を出してしまうケースも見受けられます。
私はこれまで20年以上実務を行ってきましたが、業際問題でトラブルになったことは一度もありません。


4.業際問題を避けるために大切なこと
  1. 行政書士法・他士業の業法を学ぶこと
    業務範囲の知識をしっかり持つことが第一歩です。
  2. 他士業との信頼関係を築くこと
    信頼できる弁護士・司法書士・税理士とつながることで、連携がスムーズになります。
  3. 「公益性を重んじる」姿勢を忘れないこと
    行政書士は公的書類を扱う立場にあります。
    目先の利益ではなく、職業倫理を大切にしましょう。

まとめ|行政書士の“真の役割”とは

行政書士は「書類の専門家」であると同時に、依頼者と行政、あるいは他の専門家をつなぐハブ的存在です。
多様なニーズに対応するためには、専門性・倫理観・そして周囲との連携が不可欠です。

「何をする人かわからない」と言われることもありますが、正しく理解すれば、行政書士は“信頼の起点”となる重要な職業です。
合格を目指す皆さん、そして開業を検討中の方には、ぜひこの誇りある職業の真価を知っていただけたらと思います。

【執筆者】

Y(イニシャル表記)
究進塾の行政書士コースの担当講師。
国立大学大学院修士課程修了。
行政書士事務所を運営しながら、大手予備校で法律系国家試験の講師を20年間
担当してきました。法律について大学院で研究もしてきました。
「暗記より理解」が講師としての信条で、条文の理解のためならば、千年以上前
のローマの話もします。「法律の理解に資する方法を探す」ことを趣味としていて、
さまざまな文献に目を通します。蔵書は数百冊におよびます。


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