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【はじめに】景気とは何か?

みなさん、「景気」という言葉の意味を考えたことはありますか?
景気が良いことを「好況、好景気」、悪いことを「不況、不景気」といいます。「好況」のときは生産活動が活発になり、「不況」のときは生産活動が停滞しています。生産活動の水準は需要の大きさで決まります。
需要が大きくなると企業は生産を拡大させます。残業代の増加や人手不足の発生による雇用(求人)の増加がおこります。雇用の増加は人々の所得を増加させ、さらなる需要を生み出し「消費と生産の好循環」を作ります。
逆に、需要が減少している状況では企業は生産水準を縮小させ、場合によっては企業倒産の増加となり、失業者が増加します。失業者の増加は人々の所得を減少させ、需要を減少させます。「消費と生産の悪循環」を作ります。

【景気の判断基準】GDPとは?


ところで、生産活動の水準(景気の状態)は、どのようにして判断するのでしょうか?
その答えは「GDP(国内総生産)」という経済指標を見て判断します。「景気判断」は国全体のことがらになりますので「マクロ経済学」の領域になります。
マクロ経済学では需要のことを「総需要」、供給のことを「総供給=総生産」といいます。

GDPは文字どおり国内の生産水準を示す経済指標であり「景気判断」に使われます。GDPが対前年比で増加傾向であれば「好況」、減少傾向であれば「不況」と判断されます。

【景気を決める要因】総需要とは何か?

次に、景気を左右する総需要について考えてみます。
国内総生産に対して総需要のことを「国内総支出(GDE)」といいます。
「国内総支出=消費+投資+政府支出+輸出-輸入」と定義されます。

総供給(GDP)と総需要(国内総支出)が一致する状況では、

「GDP=消費+投資+政府支出+輸出-輸入」…財市場の均衡式

が成立します。この関係を、「財市場の均衡式」といいます。

【総需要の内訳】それぞれの項目の意味

それでは、総需要の各項目について説明しましょう。

◆「消費」…住宅を除く「個人の消費支出」のこと

◆「投資」…住宅投資(個人の住宅購入)と企業の設備投資など

◆「政府支出」…公共事業などの財政支出

◆「輸出」…日本製品の海外販売

◆「輸入」…外国製品の購入

財市場の均衡式より、「消費」「投資」「政府支出」は国内の総需要、つまり「内需」として、「輸出」は外国からの総需要、つまり「外需」として国内の生産活動に貢献し、GDPを増加させます。

一方で「輸入」は外国製品の購入であるため、その増加は国産品の購入を減少させるのでGDPを減少させる要因となります。外国産のテレビを買うと国産のテレビが売れなくなるということです。これは国内産業に大きなダメージを与えます。

【好況と不況の条件】政府の役割とは?

生産設備は一度作られると需要の変動に応じて規模を変えることができないので、生産水準を維持するために安定した需要が必要になります。

財市場の均衡式より「消費」「投資」「輸出」が好調な時はGDPが大きくなります。これが「好況」の到来です。逆にこの3つが不調な時は「不況」となります。不況時には消費も投資も不調です。モノが売れない(消費が低迷している)ときに企業は設備投資を控えるため、不況はさらに深刻になります。

生産水準を維持するためには、政府による「政府支出の増加」が必要になります。この他にも、「減税による消費と投資の刺激」も必要になります。

【景気を動かすのは人々の心】希望と不安の影響


このように、財市場の均衡式から景気について理解できます。
しかし、経済活動は人間が営むことから、数式には表れていない部分も大きく影響します。

それは、経済活動を営む人々(経済主体)が抱く「将来の見通し(期待形成)」です。将来の不安が大きいと、人々は消費を控えるようになります。経済学では「予想=期待」と表現します。

将来の不安や希望を数式化することは非常に困難です。タクシードライバーが街角景気に詳しいといわれているのも、現場の「空気」を敏感に感じ取っているからでしょう。結局、景気は人々の気持ちによって動くといえます。統計数値に加えて、人々の感覚も重要なのです。

【おわりに】「景色」+「気持ち」=「景気」

「景色」+「気持ち」=「景気」

です。「景」は山頂から国全体を見渡す「景色」、「気」は経済活動を動かす国民全員の「気持ち」です。

日本経済について「失われた30年」といわれています。この状況から抜け出すためには目先の政策ではなく、将来の不安を解消して「国民の気持ちを前向きに明るくすること」が、最も重要だと思います。

そのためには国民一人ひとりが、政治経済に関する知識と理解力を持つことが必要です。本ブログがその一助になれば嬉しいです。


執筆者プロフィール


S(イニシャル)
1964年生まれ。
公務員試験対策予備校や大学・専門学校など、様々な現場で学生を指導してきました。
得意なのは大学レベルの経済学、経営学、会計学で、究進塾では主に大学授業補習コース(オンライン)を担当。

長年の豊富な指導経験から、「学生のつまづくポイント」を的確に把握しています。
堅苦しい「経済学」という学問を丁寧に解きほぐし、わかりやすく説明します。
とても親しみやすい性格で、質問もしやすいです。
生徒様お一人お一人に合わせた、また基礎を大切にした丁寧な指導がモットーです。


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