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偏差値だけで受験校を決めることの弊害は?

「志望校はどこにしよう?」と考えるときに、つい偏差値だけを基準に決めてしまうご家庭はとても多いです。

確かに偏差値は分かりやすい指標であり、客観的に自分の位置を知る手がかりにもなります。
また、志望校も、偏差値を見れば現実的に自分に手が届く学校なのか、それとも到底無理なのかをある程度事前に知ることができますので、実力とかけ離れた学校に応募して撃沈する、といった事態を未然に防ぐことができるのは良いことです。

しかし、実際には、偏差値だけで志望校を決めることには、いくつか大きな落とし穴があります。
今回は、そうした「偏差値頼みの学校選び」に潜む弊害と、その具体的な対策についてまとめてみました。

もし今、「このまま偏差値順でいいのかな…?」と少しでも疑問に思う部分があれば、ぜひ参考にしてみてください。

① 偏差値はあくまで「相対的な目安」にすぎない
まず、自分の偏差値は「今、その模試を受けた集団の中での自分の位置」を表しているにすぎません。
つまり、同じ受験者でも模試によって偏差値は変動しますし、母集団や問題傾向によっても割と大きく上下します。
実際に指導をしていても、「A模試では60だったのに、B模試では55だった」という話は珍しくありません。
にもかかわらず、その変動に一喜一憂し、「偏差値が低いから志望校を下げよう」「高いから上げよう」と決めてしまうのは、本来の目的から外れてしまう危険があります。

志望校というのは本来、その学校の教育理念や校風をよく知った上で「この学校で大切な中高の6年間をぜひ学びたい」と考えて選ぶものであるべきです。そうして志望校として選んだ学校が例えば偏差値68で、自分の現在の偏差値が50であるのであれば、その差分から推しはかり、また出題傾向も踏まえて、「合格するためには残りの期間で何をやるべきか?」を細かく洗い出し、ひとつひとつ潰していく、というのが正当な「受験勉強」と言えるでしょう。あくまで「自分はここの学校で学びたい」が先に来るべき、ということです。

②「学校そのもの」の魅力を見落としてしまう
前項でも述べましたが、偏差値だけで学校を決めてしまうと、その学校が持つ校風・教育方針・カリキュラム・部活動・雰囲気などを十分に調べる機会を失いがちです。特に滑り止め校に多く該当します。偏差値がちょうどいいからと、学校見学もせずに受験を決めるご家庭も多々見て来ました。進学したあとで「合わないな」「こんなはずじゃなかったのに」「モチベーションがあがらないな」などと感じてしまうのは、実は成績面よりも学校生活そのものへの不満や違和感が理由になることが多いです。

特に、中学受験の場合は、思春期の大切な6年間を過ごす場所を選ぶわけですから、数字だけで決めるのは非常にもったいないですし、大きなリスクを伴う選び方と言えるでしょう。

したがって、偏差値よりもまず「ここの学校で6年間過ごした自分はその後どういう人生を送るのだろう?」と、ちょっと大袈裟かもしれませんが、こういった視点で選んでいただくと、偏差値がどうであれ、入ってから後悔することはまずなくなると思います。

③「自分に合うかどうか」という視点が欠けてしまう
学校にはそれぞれ、授業スピード・課題量・指導スタイル・クラス運営などに特徴があります。
例えば、超進学校で毎週大量の課題が出るスタイルが向いている子もいれば、中規模校で面倒見のよい先生のもとで丁寧にフォローしてもらい、コツコツ学習して伸びる子もいます。

偏差値だけで決めてしまうと、こうした「合う・合わない」という大切な視点が抜け落ちてしまい、入学後に「頑張っても結果が出ない」「毎日がしんどい」となってしまうケースも少なくありません。

とにかく学校の方針や校風が自分に合っている学校であれば、どんなつまづきがあったとしてもモチベーションを失わず、すぐに解決の糸口を見つけて前向きに過ごしていくことが出来るでしょう。

自分にとって精神的に楽な環境で学べば、タフで競争率も激しい大学受験でも自分が納得のいく成果を出すことが出来ます。
「入る地点」のことだけを考えるのではなく、「入った後」のことをメインに考えていくことが総合的にみて中学受験の勝者になりやすい、と言えるでしょう。

④「偏差値が上の学校がいい学校」という思い込み
長く指導をしていると、「偏差値が高い学校の方が良い学校に決まっている」と考えるご家庭にとても多く出会います。
しかし実際は、その子のタイプや目標によって「どこが良い学校なのか」は全く変わってくるものです。
学力だけでなく、人間関係・生活指導・進路指導など、学校選びで大切にすべきポイントはたくさんあります。

「うちの子にとっての“良い学校”とは何か?」を家族で話し合うことが、何よりも大切です。
例えば、のんびりタイプで沢山の量の課題がさばけないお子さんがいらしたとして、無理をして頑張って、なんとか偏差値70の学校に入れたとします。それ自体はもちろん評価に値することかもしれませんが、果たしてそのお子さんは6年間ハッピーでしょうか?

私の指導経験上では、「それは違う」と断言したいと思います。

無理をして入った学校で、要領がよくテキパキしたタイプのお子さんがたくさんいたら、間違いなく上位には上がれませんし、下手をしたら高校で落第するとか、ついていけなくなって転校する、学校をやめてしまう、つらくて不登校になってしまう、といったことも起こりうると思います(実際にそういったお子様を沢山目にして来ました)。

そして何より、そうなってしまったら折角の青春時代をつまらない思いをして過ごすことになり、とても勿体ないです。

それより、自分に合った学校(偏差値、ということよりも、雰囲気や校風など総合的にみて)に入って似たような特長を持つ友人と楽しく切磋琢磨しながら6年間を過ごすことで、一生の思い出になると同時に大学受験で頑張れるマインドやモチベーションも自然と身に付くものです。

世の中に「良い学校」「素敵な学校」は沢山ありますので、どうか偏差値や進学実績だけでなく、大切なお子様の性格や雰囲気に合った「世界一ピッタリな学校」を見つけて、目指して欲しいと思います。

これが中学受験を30年以上にわたって指導してきた私の結論です。

■対策アドバイス
偏差値はもちろん大事な参考資料ですが、「唯一の判断基準」にしないことが大切です。
・気になる学校があれば厭わず説明会や文化祭に足を運ぶ
・在校生や卒業生の話を聞いてみる
・通学時間や部活、学校の指導方針などを具体的に調べる

子ども自身に「どんな学校生活を送りたい?」と聞いてみる
これらを合わせて、「偏差値以外の部分」もぜひ判断材料にしましょう。

■最後に
偏差値は客観的で分かりやすいからこそ、気持ちが引っ張られてしまいがちです。
でも、何度も申しますが本当に大事なのは、「うちの子がどこで一番楽しく、充実した学校生活を送れるか」という視点です。
中学受験も高校受験も大学受験も、目指すのは偏差値の高い学校そのものではなく、その先にある未来のはず。

だからこそ、偏差値だけに縛られず、広い視点で学校選びをしていけるといいですね。
家族全員でお子様にピッタリの学校選びをすることを、大変な受験期の楽しみにしていただきたい、とすら思っています。

究進塾では、お子さま一人ひとりの希望や特性を大切にします。「とにかく高い偏差値の学校に合格させる」という方針とは無縁です。もちろん、無理なく・納得できる受験校選びを一緒に考えるカウンセリングも行っています。
「偏差値だけで決めていいのかな?」と少しでも感じたら、ぜひ一度ご相談ください!


平山美帆
究進塾「中学受験コース」の主任講師。
受験指導歴は30年以上。これまでに中学・高校・大学受験合わせて1700名以上の合格をサポートしてきました。
「成せば成る」を信条に、「そうしたい」と強く願い信じて取り組むことこそが夢を実現する絶対条件だと考えています。
趣味はテニスとモータースポーツ、そしてアクションゲーム。どれも「テンポよく前に進む」「戦略が勝敗を左右する」という共通点があり、日々の指導にも活かしています。


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