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こんにちは。究進塾 編集部です。
今回は、線形代数学の解説、第5回目です。テーマは「抽象ベクトル空間と線形写像」で、表現行列についての解説となります。
抽象ベクトル空間と線形写像
まず、定義を一覧にしておきます。
| 定義 1(抽象ベクトル空間)
\(K\)を体、\(V\)を集合とする。\(V\)上に加法と呼ばれる算法\(+:V×V\)→\(V\)およびスカラー倍と呼ばれる算法\(:*:K×V\)→\(V\)が定義され、以下の条件を満たすならば\((V,+,*)\)を\(K\)上のベクトル空間と呼ぶ。 ⅰ)ある元\(e \ ∈ \ V\)が存在して、任意の\(v \ ∈ \ V\)に対し、\(e \ + \ v \ = \ v \ + \ e \ = \ v\)が成り立つ。この\(e\)を零元と呼び、通常\(0\)で表す。 ⅱ)任意の\(v \ ∈ \ V\)に対し、ある元\(v’\)が存在して、\(v \ + \ v’ \ = \ v’ \ + \ v \ = \ 0\)が成り立つ。この\(v’\)を\(v\)の逆元と呼び、通常\(-v\)で表す。 ⅲ)任意の\(v_1, \ v_2, \ v_3 \ ∈ \ V\)に対し、\((v_1 \ + \ v_2) \ + \ v_3 \ = \ v_1 \ + \ (v_2 \ + \ v_3)\)が成り立つ。 ⅳ)任意の\(v_1, \ v_2 \ ∈ \ V\)に対し、\(v_1 \ + \ v_2 \ = \ v_2 \ + \ v_1\)が成り立つ。 ⅴ)任意の\(k_1, \ k_2 \ ∈ \ K\)および任意の\(v\)に対し、\((k_1k_2)v \ = \ k_1(k_2v)\)が成り立つ。 ⅵ)任意の\(k_1, \ k_2 \ ∈ \ K\)および任意の\(v\)に対し、\((k_1 \ + \ k_2)v \ = \ k_1v \ + \ k _2v\)が成り立つ。 ⅶ)任意の\(k \ ∈ \ K\)および任意の\(v_1, \ v_2\)に対し、\(k(v_1 \ + \ v_2) \ = \ kv_1 \ + \ kv_2\)が成り立つ。 ⅷ)\(1 \ ∈ \ K \)に対し、\(1v \ = \ v\)が成り立つ。 |
いきなり定義を並べて書きましたが、ほとんどの大学の線形代数の講義で、後期の授業では、普通の数ベクトル空間ではなく、抽象ベクトル空間、一般のベクトル空間を扱うところもあるのではないかと思います。(事と次第によっては触れずに終わる場合もあるかもしれません。)
ベクトルといえば、高校生の時から「力を表すための、矢印で書かれたもの」と認識されていると思いますが、数学というのは、何でもかんでも「可能な限り一般化しよう」という性質があります。
ベクトルについても同様で、「何がベクトルをベクトルたらしめているのか」をひたすら突き詰めた結果、残ったのが「こうだ」となったものです。
そんなふうにして、抽象ベクトル空間において、今まで扱った「数ベクトル空間」「矢印」などを超えて定義を広げると、「高校生までのベクトルの理論を適用できる対象が広がるかもしれない」というふうになります。
「ベクトルとみなす対象が広がって何が嬉しいのか」というと、ベクトルと見なせる対象が広がると、高校生の定義ではベクトルと思っていなかったものも、抽象ベクトル空間とみなすことが出来ます。つまり、今まではベクトルとしていなかった世界に対して、ベクトルについて成り立つ性質を、そのまま当てはめることが出来るようになります。
このように、調べる手法が増えるため、今まで思いもしなかった見方から、新しい定義づけなどが可能になります。そういう意味で、世界が広がる・視野が広がるという利点があるわけです。ただ、抽象化・一般化したことにより、なんだか取っつきづらいような定義になってしまうわけでもあります。
では、定義がどういうものであるかを1つずつ紹介していきます。
| 定義 1(抽象ベクトル空間)
\(K\)を体、\(V\)を集合とする。\(V\)上に加法と呼ばれる算法\(+:V×V\)→\(V\)およびスカラー倍と呼ばれる算法\(:*:K×V\)→\(V\)が定義され、以下の条件を満たすならば\((V,+,*)\)を\(K\)上のベクトル空間と呼ぶ。 |
まず「定義1」の「抽象ベクトル空間」については、
・抽象ベクトル空間
・一般ベクトル空間
・(単に)ベクトル空間
と言われています。
\(K\)という集合を「体」と呼ばれるものとします。
いきなり数学用語を出してしまいましたが、この「体」というものは、ご存じない方がほとんどだと思います。「\(K\)」について、ほとんどの場合は「実数」もしくは「複素数」と考えておいてください。
そしてこの「体」という用語ですが、「四則演算(\(+-×÷\))が自由にできるもの」です。
体の例としては、
・実数全体の集合
・複素数全体の集合
・有理数全体の集合(上記2つよりやや限定したもの)
などが知られています。
体は、割り算(0で割る)だけは例外として、その他の演算は全て自由にできることになっています。
では、体でないものには何があるか、というと、例えば「整数全体の集合」があります。これは、足し算・引き算・掛け算までは自由にできます。しかし割り算をやろうとすると、計算結果が整数の中に収まらない可能性があります。
例えば「\(2÷3\)」の場合、解は「\(\frac{2}{3}\)」となります。\(\frac{2}{3}\)は整数ではありません。「2」と「3」は整数世界に区分されている数字同士ですが、これらで割り算をすると、計算結果が整数の世界から逸脱してしまいます。(このようになることを、整数の世界では「割り算に関して閉じていない」というふうに言います。)
まとめると、「体」というのは「0と1の除算以外は、どの四則演算をしても、元の集合の中に計算結果が収まる性質のことを表す」というものです。とにかく「実数、もしくは複素数」だと思っておくと良いです。
そして「\(K\)を体、\(V\)を集合とする。」とありますが、これは現段階では「集合」と言っているだけで、実態が何なのかはわかりません。
そして「\(V\)上に加法と呼ばれる計算」\(+\)「\(:V×V\)」を足し算すると、計算結果を\(V\)の中に定義できます。
もう1つは、スカラー倍と呼ばれる算法(=実数倍)です。実数/複素数である\(K\)と、集合\(V\)の中の元に対して、この中にある実数倍の計算結果は、やはりこの\(V\)の中に定義できる、というふうになっています。
この2つの算法が、その下にある(ⅰ)~(ⅷ)の状況を満たすならば、この集合と、その上に定義された加法、およびその上にスカラーと、\(V\)の上に定義された情報というのをまとめて、「\(K\)上のベクトル空間と呼ぶ」となってます。
定義1の8個の条件を見ていくと、何となく当たり前に見える内容ではあるのですが、注意が必要なのが、\(V\)を「集合」としか言っておらず、実体が何なのかが全くわからないことです。
そして、その上に「“算法+”を定義した」と書いてありますが、これもどのように定義するかによって、全く話が変わってきます。
例えば、最初の定義を見てみると、
| ⅰ)ある元\(e \ ∈ \ V\)が存在して、任意の\(v \ ∈ \ V\)に対し、\(e \ + \ v \ = \ v \ + \ e \ = \ v\)が成り立つ。この\(e\)を零元と呼び、通常\(0\)で表す。 |
任意の\(v\)に対して、「\(e\)と\(v\)の加法の結果」と「\(v\)と\(e\)の加法の結果」が、両方とも計算結果\(v\)になるというのが成立している場合、この\(e\)を「零元」と呼び、通常\(0\)で表します。
ご存知の通りかもしれませんが、この\(e\)というのは、要するにベクトル空間における\(0\)ベクトルを表すものです。なので、条件(ⅰ)は「このベクトル空間には特別な\(0\)というベクトルが入っていて、このような計算結果を満たす」というのを意味します。
このような感じで、「これを満たさなければならない」などの制約が、だんだんついてくわけです。
「\(0\)ベクトルがあるとか、当たり前なんじゃないの?」と思うのではないかと思います。しかし、\(V\)は単なる集合としか言っていないわけです。
そこに定義された算法というのも、例えば「\(V\)の中に入ってるもの」というのは「ベクトル」と言ってはいるけれど、犬や猫、そんなものなのかもしれません。「犬\(+\)猫ってなんだよ」と思われるかもしれませんが、うまいこと算法を定義してあげればベクトル空間になるかもしれない、ということです。そうすると「零元が存在する」というのも決して自明な話ではありません。
ついでに言うと、この足した「\(e+v \ = \ v \ + \ e\)」を逆の順にした時に同じ結果になる、というのも、全く自明な結果ではありません。
ということになりますが、とにかくこのような調子で、以下8個ある条件を全部満たした状態である必要があります。
では、8個あるうち、他の条件を順番に見ていきましょう。
| ⅱ)任意の\(v \ ∈ \ V\)に対し、ある元\(v’\)が存在して、\(v \ + \ v’ \ = \ v’ \ + \ v \ = \ 0\)が成り立つ。この\(v’\)を\(v\)の逆元と呼び、通常\(-v\)で表す。 |
\(v\)と\(v’\)の加法の結果と、\(v’\)と\(v\)の加法の結果が、先ほど「これが必ず存在する」と述べた零元に等しくなる、と言っています。
この\(v’\)というのを、\(v\)の「逆元」と呼びます。そして通常「\(-v\)」と表します。つまり「逆ベクトル」と呼ばれるものです。
| ⅲ)任意の\(v_1, \ v_2, \ v_3 \ ∈ \ V\)に対し、\((v_1 \ + \ v_2) \ + \ v_3 \ = \ v_1 \ + \ (v_2 \ + \ v_3)\)が成り立つ。 |
任意の集合の中の3つの元に対し、「\(v_1\)と\(v_2\)の足し算した結果に後から\(v_3\)を足したもの」と「\(v_2\)と\(v_3\)を先に足し、後から\(v_1\)を足したもの」というのが、「計算結果が等しい」ということを要請しています。「結合法則」と呼ばれるものです。
| ⅳ)任意の\(v_1, \ v_2 \ ∈ \ V\)に対し、\(v_1 \ + \ v_2 \ = \ v_2 \ + \ v_1\)が成り立つ。 |
ⅰ)~ⅲ)までの定義については、計算順序(書く順)も結構気にしていますが、ⅳ)の「任意の\(v<1\)、\(v2\)に対しての足し算」というのは、順序を逆にしても計算結果が一緒であるという「交換法則の成立」というのを要請しています。
ここまでが、加法に対する条件式として、4条件挙げられています。
もし「群論」をご存知の方がいたら、このベクトル空間というのは「プラスという加法に関して、アーベル群をなす」などと表現してⅰ)~ⅳ)をひとまとまりにすることもできます。
しかし順番としては、群論をやる前に線形代数だと思いますので、そちらは今は置いておきましょう。後から得る知識で、この辺りの書き方はもう少しシンプルにすることができたりもする、ということをご紹介だけしておきます。
では、引き続き、ⅴ)~ⅷ)の条件についても見ていきましょう。
| ⅴ)任意の\(k_1, \ k_2 \ ∈ \ K\)および任意の\(v\)に対し、\((k_1k_2)v \ = \ k_1(k_2v)\)が成り立つ。 |
ⅴ)とⅵ)については、掛け算=スカラー倍に関する条件です。
実数もしくは複素数に入っている任意の数と、任意のベクトル=集合に入っている\(v\)の元に対して、\(k>1 × k2\)、\(k\)を対としているので、これは計算結果がちゃんと\(k\)の中の元として確定する、ということになります。そして、
・\(k1 × k2\)というのを\(v\)にスカラー倍したもの
・\(v\)を\(k2\)倍=スカラー倍したものの計算結果に\(k1\)をスカラー倍したもの
これらが、ちゃんと一緒になるということです。つまるところ、「スカラー倍に関する結合法則」のようなイメージです。どちらを先にやっても計算結果が一緒であるということを要請しています。
| ⅵ)任意の\(k_1, \ k_2 \ ∈ \ K\)および任意の\(v\)に対し、\((k_1 \ + \ k_2)v \ = \ k_1v \ + \ k _2v\)が成り立つ。 |
次に6番目の条件ですが、任意の\(k_1、k_2\)及び任意の\(v\)に対して\(k_1 + k_2\)、これも\(K\)というのが対である、つまり四則演算が自由にできる、となっています。
\(k_1 + k_2\)というのは、やはり\(K\)の元なわけですが、\(k_1 + k_2\)という値を倍したもの、\(V\)のそれ倍したものというのが、\(v\)の\(k_1\)倍したものプラス\(v\)の\(k2\)倍したものを足したもの、\(v\)の加法で足し算したものと計算結果が一緒になる、というのを要請しています。
これはスカラーの方に関する分配法則というものです。
| ⅶ)任意の\(k \ ∈ \ K\)および任意の\(v_1, \ v_2\)に対し、\(k(v_1 \ + \ v_2) \ = \ kv_1 \ + \ kv_2\)が成り立つ。 |
そして7つ目は、ベクトル空間\(v\)の中の加法とスカラー倍に関する分配法則が成立する、というのを要請しています。
| ⅷ)\(1 \ ∈ \ K \)に対し、\(1v \ = \ v\)が成り立つ。 |
そして最後の1個は、単位元1というのが存在します。普通の数字の1だと思って大丈夫です。掛け算に関する単位元、みたいなものです。この単位元に対して、任意の\(v\)に対して、\(1×v\)というのが変わらない、つまり\(v\)となるというのを要請しておく、ということを言っているわけです。
このⅰ)~ⅷ)を満たすような場合に、この2つの算法(加法およびスカラー倍)と、この集合(\(V, + , *\)、\(K\)もセットで含めることもありますが)を、「\(K\)上のベクトル空間と呼ぶ」ということになっています。
このⅰ)~ⅷ)のところだけを見ていると「一体何を言ってるんだ」という感じがするかもしれませんが、数学の抽象的な定義というのは、どうしてもそういうところがあります。
そういうものにうまく付き合うための方法としては、具体的な例をたくさん考えてみましょう。「今までこうだったんだけど」というものに、実際、今のこの条件というのが本当に成り立ってるのかを確かめてみたり、とにかく例を考えてみるというのが、1つの方法です。
もう1つは、うまく付き合うには「とにかくこれを満たしてさえいればベクトル空間だな」と、もう完全に割り切ってしまうことです。逆に言うと、「ここの定義に書かれてないことについては、もう一切忘れてしおう」というふうにして、割り切るというのが、結構重要だったりします。
というわけで、この8条件を満たしさえすればベクトル空間と呼べます。
今までは、空間に書かれた矢印のようなものをベクトルと呼んでいましたが、実はこの8条件を満たすような算法を備えた集合\(V\)はたくさんあります。そうすると今までベクトルだと思っていなかったものを、ベクトルと見なすことができます。
例を見てみましょう。
| 例
・これまで考えていた\(R^n\)や\(C^n\)はもちろんベクトル空間である。 |
当たり前ですが、これまで考えていた普通の\(n\)次元実数ベクトル空間や、2次元複素数ベクトル空間というのは、\(R\)乗や\(C\)乗のベクトル空間、ということになります。
定義を拡張した時に、今までのものがこの定義に当てはまらない場合は、それは拡張ではない、となります。そういうわけで、今までベクトルだと見なしていたものは、もちろんベクトルのままです。
2つ目の例は、結構特徴的です。2次以下と言っているので、\(a\)や\(b\)は\(0\)になったり、定数、関数になったりすることもOKです。この多項式全体が\(R\)となっているもの、これが「3次元の実ベクトル空間と見なすことができる」となります。
今までは、「多項式がベクトルだ」と思ったことがある人はあまりいないと思いますが、多項式の集合に(算法をきちんと定めなければいけませんが)、多項式の足し算を、ベクトルとしての加法として定義します。実数倍、というのは多項式を3倍するとか5倍するなどと同じようなイメージです。このようにスカラー倍を定義します。
このようにすると、この\(P_2\)の集合は、上記の8個の条件を全て満たす、ということが分かります。実際に確かめてみてください。
ちなみに、この零元というのは、係数が全部\(0\)になるものです。関数として、多項式としての\(0\)を零元と見なすといいです。逆元については\(-v\)という記号で書いていますが、そのままです。例えば「\(x^2+2x+3\)」に対して、「\(-x^2-2x-3\)」というのが、その逆元に当たります。
線形写像
さて次に、線形写像というものについて、抽象ベクトル空間を考えて抽象度の高い形で定義します。
数ベクトル空間の時は、教科書の書き方にもよりますが、「行列で表された写像のことを“線形写像”という」と説明されていたと思いますが、いったんその考えから離れて、「抽象ベクトル空間でもって、線形写像ってどういうふうに考えたらいいの?」ということを見ていきます。
| 定義 2(線形写像)
\(K\)を体、\(V, \ W\)を\(K\)上のベクトル空間とする。写像\(f:V \ W\)が以下の条件: ⅰ)任意の\(v_1, \ v_2 \ ∈ \ V\)に対し、\(f(v_1 \ + \ v_2) \ = \ f(v_1)+(v_2)\)が成り立つ。 ⅱ)任意の\(k \ ∈ \ K\)、および任意の\(v \ ∈ \ V\)に対し、\(f(kv) \ =kf(v)\)が成り立つ。 を満たすとき、\(f\)は線形写像である、という。 |
定義2より、線形写像\(K\)を体とします。これは、スカラーです。実数、もしくは複素数と考えて良いです。そして\(V\)と\(W\)を、\(K\)上のベクトル空間とします。先ほどの定義では、\(V\)上の加法とスカラー倍というのをセットで書いていましたが、そのように書くのは面倒なので、定義2のやり方で使う場合は省略しています。
その時、\(V\)から\(W\)への写像\(F\)というのが、下記のⅰ)とⅱ)の2条件を満たす時、「\(F\)は線形写像である」というふうに言います。
| ⅰ)\(V\)に入っている任意の\(V_1、V_2\)に対して、\(V_1 \ + \ V_2\)を\(F\)で送ったものの結果、\(V_1\)を\(F\)で送った結果、\(V_2\)を\(F\)で送った結果を(明示的には書いていないのですが)、\(W\)の中の加法でもって足した計算結果\(f(v_1)+(v_2)\)と\(f(v_1 \ + \ v_2) \)、これが一致している。
ⅱ)任意のスカラー\(K\)、および、任意のベクトル\(V\)に対して、\(K\)倍の\(V\)というのを\(F\)で送った結果と、\(V\)を\(F\)で送った結果に\(W\)上でのスカラー倍で\(K\)倍したものというのが一緒になっている。 |
この性質のことを「線形性」と言ったりしますが、これまでもこのような条件を満たすような算法は見てきているかと思います。有名なものといえば微分・積分する操作、数列のシグマなども、この性質持っています。
他にもたくさんありますが、なぜわざわざこれを抜粋したかというと、数ある写像の中で、この2条件を満たすものが、一応「一番簡単なクラス」だと言われているためです。
ちなみに、このi)と ii)の性質は、普通の関数(1次元の、1変数の実数から実数への関数)として見た時に、「連続関数であると」という制限は必要ですが、この2条件を満たす関数は、「比例の関数\(y \ = \ ax\)に限る」ということが証明できます。
「\(y \ = \ ax\)」は、色々ある関数の中で、一番簡単なものです。この2条件を満たしていると、一般化されたこのベクトル空間からベクトル空間への写像として、「おそらく、一番簡単なクラスをなしているだろう」という期待が持てます。そして実際、そうなっています。
この2条件を満たすとすると「線形写像である」というふうに言います。
これが定義になったので、「ある写像が線形写像であるかどうか調べなさい」と言われた場合、この2条件が本当に成り立っているかをチェックすることになります。
さて、これも線形写像の例を少し見てみましょう。
| 例 2次元以下の実係数多項式全体の集合を\(P\)とする。\(ax^2 \ bx \ + \ c \ ∈ \ P_2\)に対し、その微分を対応させる写像\(D:ax^2 \ bx \ + \ c \ ↦ \ 2ax \ + \ b\)を考えると、\(D:P_2 \ → \ P_2\)は線形写像である。 |
2次以下の実係数多項式全体の集合\(P_2\)を考えます。
先ほどの話で、これをベクトル空間と見なすことができます。\(P_2\)から\(P_2\)への写像を、\(P_2\)に入っている\(ax^2 \ + \ bx \ + \ c\)に対して、その微分を対応させる写像(differentialなので大文字のDで書くこととします)
\(D\)は、\(ax^2 \ + \ bx \ + \ c\)を微分したものだから、\(2ax \ + \ b\)に送る写像とします。これを考えると、この\(D、P_2\)から\(P_2\)への写像は、2条件を満たすということが簡単にチェックできます。
そのため、この写像は\(P_2\)から\(P_2\)への線形写像であるということが分かります。
一応「\(P_2\)から\(P_2\)への写像」と書いてありますが、実際には、この\(ax^2 \ + \ bx \ + \ c\)を送った時に2乗になるものに落ちることはないため、これは全射ではありません。ついでにいうと、単射でもありません。同じものに落ちるものはいっぱいあります。
とにかく、この2条件は満たしているため、線形写像と言うことができます。
線形写像の行列表現
次に、線形写像の行列表現という話題に移っていきます。
ここまでは、抽象ベクトル空間や、一般の抽象ベクトル空間の間の線形写像など、抽象化した一般的な話をしていました。
ここからは、「その抽象化されたベクトル空間は、ほぼ、今までやっていた数ベクトル空間と同じに扱うことができる」という話です。
習い方によっては、「線形写像」「数ベクトル空間から数ベクトル空間への行列の積として書かれるような写像を、線形写像という」と習った人もいるかもしれません。
実際、線形写像はほとんど行列の積として表せると言えます。
| \({1, \ x, \ x^2}\)は\(P_2\)の基底である。 |
さていきなりですが、\(P_2\)、2次以下の多項式全体の集合において、比較的簡単な基底として、\(1\)という多項式、\(x\)という多項式、\(x^2\)という多項式、これらは\(P_2\)の基底になっています。
なぜかというと、先ほどの式は全て\(A\)倍の\(x^2 \ + \ B\)倍の\(x \ + \ C\)で、この3つの\(A\)倍と\(B\)倍と\(C\)倍を足したものとして表せます。そのため、\(P_2\)の基底になります。
ちなみに、このどれか1個が欠けたとしても書けなくなってしまうものがあるため、これは1次独立で、しかもこれらでもって、全て\(P_2\)を生成することができるため、とりあえずこれらが1つの基底を成す、ということになっています。
さてその時、微分する写像\(D\)でこの基底である\(1\)と\(x\)と\(x^2\)をそれぞれ送ってみます。そうすると、次の様になります。
| \(D(1) \ = \ 0, \ D(x) \ = \ 1, \ D(x^2) \ = \ 2x\) |
左から順にみていきましょう。
\(1\)を\(D\)で送ります。\(1\)を微分すると\(0\)になるので、行き先が\(0\)になります。
次に\(x\)を\(D\)で送ると、\(x\)は微分すると\(1\)となるので、行き先が\(1\)になります。
そして\(x^2\)というのを\(D\)で送る、つまり微分するとどうなるかというと、\(2x\)という関数になります。
というわけで、\(D\)でこの基底の行き先は、それぞれこのようになる、ということが分かります。
| このことを行列を用いて表すと、
\([D(1), \ D(x), \ D(x^2)] \ = \ [0, \ 1, \ 2x]\) \(= \ [1, \ x, \ x^2] \left( \begin{array}{crl}0 & 1 & 0 \\ |
基底\({1, \ x, \ x^2}\)の\(D\)による移り先というのを横並びで書くと、\([D(1), \ D(x), \ D(x^2)]\)(\(D\)で\(1\)を送った結果、\(D\)で\(x\)を送った結果、\(D\)で\(x^2\)を送った結果)というのは、先程の\(D(1) \ = \ 0, \ D(x) \ = \ 1, \ D(x^2) \ = \ 2x\)より\([0, \ 1, \ 2x]\)のようになるはずです。
この\([0, \ 1, \ 2x]\)ですが、「元の基底とする」と言っていた\([1, \ x, \ x^2]\)を使用して表すことが出来ます。
↓\([0, \ 1, \ 2x]\)をそれぞれ表すと・・・
\(0\):\(0\)倍の\(1 \ + \ 0\)倍の\(x \ + \ 0\)倍の\(x^2\)と表すことができる
\(1\):\(1\)倍の\(1 \ + \ 0\)倍の\(x \ + \ 0\)倍の\(x^2\)と表すことができる
\(2x\):\(0\)倍の\(1 \ + \ 2\)倍の\(x \ + \ 0\)倍の\(x^2\)と表すことができる
この\([0, \ 1, \ 2x]\)と並んでいる計算結果は、\([1, \ x, \ x^2]\)も1行3列の行列とみなし、3行3列の行列と掛け算した計算結果と同じ値になっています。
1列目の成分:\(0 \ ・ \ 1 \ + \ 0 \ ・ \ x \ + \ 0 \ ・ \ x^2\)
2列目の成分:\(1 \ ・ \ 1 \ + \ 0 \ ・ \ x \ + \ 0 \ ・ \ x^2\)
3列目の成分:\(0 \ ・ \ 1 \ + \ 2 \ ・ \ x \ + \ 0 \ ・ \ x^2\)
を横に並べて書きます。これを不要な箇所を整理すると、ちょうど\([0, \ 1, \ 2x]\)となります。
というわけで、こんなふうに書いてあげると、元の基底を移した時に、\([0, \ 1, \ 2x]\)の基底でその計算結果を表現するとどうなるか、というのを表してあげることが出来るわけです。
| つまり、\(D\)は
\(D:[1, \ x, \ x^2] ↦ \ [1, \ x, \ x^2] \ \left( のように写すことがわかる。 |
つまり\(D\)というのは、この基底\([1, \ x, \ x^2]\)と並べたものを、\([1, \ x, \ x^2]\)と並べたものに、\(\left(
\begin{array}{crl}
0 & 1 & 0 \\
0 & 0 & 2 \\
0 & 0 & 0
\end{array}
\right)\)という行列を右から掛けたもの、ということが分かります。
ちなみに、一般の\(P_2\)の元、\(ax^2 \ + \ bx \ + \ c\)というのは、無理矢理、基底と成分で書くと、\([1, \ x, \ x^2] \left(
\begin{array}{crl}
c \\
b \\
a
\end{array}
\right)\)のようになります。
| このとき、\(ax^2 \ + \ bx \ + \ c \ = [1, \ x, \ x^2] \left( \begin{array}{crl} c \\ b \\ a \end{array} \right)\)は\(D\)によって\(2ax \ + \ b \ = \ [1, \ x, \ x^2] \left( \begin{array}{crl} b \\ 2a \\ 0 \end{array} \right)\)に写されるが、これは\(D:[1, \ x, \ x^2] \left( \begin{array}{crl} c \\ b \\ a \end{array} \right) → [1, \ x, x^2] \left( \begin{array}{crl} 0 & 1 & 0 \\ 0 & 0 & 2 \\ 0 & 0 & 0 \end{array} \right) \left( \begin{array}{crl} c \\ b \\ a \end{array} \right) \ = \ [1, \ x, \ x^2] \left( \begin{array}{crl} b \\ 2a \\ 0 \end{array} \right)\)が成り立つことを意味している。 |
これを\(D\)で移した結果、要するに微分したものというのは、\(2ax \ + \ b\)になります。
ちなみにこの\(2ax \ + \ b\)というのも、この\([1, \ x, \ x^2]\)の基底を使って表そうとすると、\(\left( \begin{array}{crl}
b \\
2a \\
0
\end{array}
\right)\)
のようになります。
これは結局、成分で表した\(\left(
\begin{array}{crl}
c \\
b \\
a
\end{array}
\right)\)を\(\left(
\begin{array}{crl}
b \\
2a \\
0
\end{array}
\right)\)に写す、となっているのですが、これはちょうど次のようなものと対応します。
| \(D:[1, \ x, \ x^2]\left( \begin{array}{crl} c \\ b \\ a \end{array} \right) \)↦\( [1, \ x, \ x^2] \left( \begin{array}{crl} 0 & 1 & 0 \\ 0 & 0 & 2 \\ 0 & 0 & 0 \end{array} \right)\) \(\left( \begin{array}{crl} c \\ b \\ a \end{array} \right) \ =\)\([1, \ x, \ x^2]\)\(\left( \begin{array}{crl} b \\ 2a \\ 0 \end{array} \right)\)が成り立つことを意味している。 |
この各成分が\(\left(
\begin{array}{crl}
c \\
b \\
a
\end{array}
\right)\)のようになっているものを、\(D\)で写したものの、でき上がりの\(\left(
\begin{array}{crl}
b \\
2a \\
0
\end{array}
\right)\)という成分は、\(\left(
\begin{array}{crl}
0 & 1 & 0 \\
0 & 0 & 2 \\
0 & 0 & 0
\end{array}
\right)\)\(×\) \(\left(
\begin{array}{crl}
c \\
b \\
a
\end{array}
\right)\)、というふうにして計算することができます。
なので、実は基底を何か決めたとすると、抽象的な線形写像もやはり行列の積として表せるということがわかります。
上記のような観察を通して、このような定義に行き着く、というふうになっています。
一応、一般的に\(m\)行\(n\)列のような次元が高い場合のもので書いておきますが、正直、3行3列などのときに理解していれば「一般の場合も同じなのだろう」という理解で大丈夫です。
定義3(線形写像の行列表現)
次に定義3を見ていきます。
| \(K\)を体、\(V, \ W\)を\(K\)上のベクトル空間、\({v_1, \ …, \ v_n}, \ {w_1, \ …, \ w_m}\)をそれぞれ\(V, \ W\)の基底とする。\(V\)から\(W\)への線形写像\(f:V \ → \ W\)に対し、\(v_ⅰ\)の\(f\)による像は\(W\)の元になるので、
\([f(v_1), \ f(v_2), \ …, \ f(v_n)] \ = \ [w_1, \ w_2, \ …, \ w_m] \) と表される。すなわち、 \([f(v_1), \ f(v_2), \ …, \ f(v_n)] \ = \ [w_1, \ w_2, \ …, \ w_m] が成り立つ。ここに現れた行列: \(\begin{pmatrix} を、線形写像\(f\)の基底\({v_1, \ …, \ v_n}\)および\({w_1, \ …, \ w_m}\)に関す表現行列という。 |
「\(K\)を体とする」とありますが、実数か複素数と思って大丈夫です。\(V\)と\(W\)というのを、\(K\)上のベクトル空間としていす。
そして、\(V\)と\(W\)の上に基底を何か固定で取っておきます。\( \{v_1, \ …, \ v_n \}, \ \{ w_1, \ …, \ w_m \}\)をそれぞれ\(V\)と\(W\)の基底とします。
\(V\)の方は、\(v_1\)から\(v_n\)までの\(n\)個のベクトルがあるので、「\(n\)個のベクトルで構成されてる基底である」というふうになっています。これは\(V\)というのが\(n\)次元であることを、想定して書いてあります。
そして\(w_1\)から\(w_m\)は、\(m\)個のベクトルで基底が構成されてる、というふうになるので、\(W\)の方は\(m\)次元である、というふうに想定しています。
このように、線形写像というのは、次元の違うようなベクトル空間の間にも、ちゃんと定義することができます。
\(V\)から\(W\)への線形写像\(F:V \)を\(W\)に写すものに対し、それぞれ基底のもの\(v_ⅰ, v_ⅱ, …, v_n\)というのを、\(F\)で送ったときの像というのは、もちろん\(f\)というのは\(V\)を\(W\)に写すので、\(v_ⅰ\)を送ったものというのは、\(W\)の中の元になるので、ということは\(W\)の基底を使って書けるはずです。
なので、\(w_1\)から\(w_m\)を使って、それぞれ係数がどうなるかは分からないのですが、\(a_{1ⅰ} w_1 \ + \ a_{2ⅰ} w_2 \ + \ … \ + \ a_{mⅰ} w_m\)というふうに書けるようになります。ということで、一旦こういうふうに表しておきます。この\(a \ = \)~というのは、全部\(K\)の元です。
そうなると、先程やったのと同じような感じで、この\(v_1\)から\(v_m\)を横に並べたやつを\(F\)で送った計算結果というのは、\(w_1\)から\(w_m\)までを、この基底を横に並べた1行\(m\)列の行列\(×\)
\(\begin{pmatrix}
a_{11} & a_{12} & \dots & & & a_{1n} \\
a_{21} & a_{22} & & & & a_{n1} \\
\vdots & & \ddots & & &\vdots \\
a_{m1} & a_{m2} & \dots & & a_{mn}
\end{pmatrix}
\)という\(m\)行\(n\)列の行列の積、のように表すことができます。
このような関係式が成り立ちます。
この時、ここに現れた\(m\)行\(n\)列の行列のことを、「線形写像\(f\)の基底\({v_1, \ …, \ v_n}\)および\(w_1, \ …, \ w_m\)に関する表現行列」というふうに言います。
ちょっとなかなか、くどい言い方ですが、つまりどういうことかというと、基底の選び方を変えると、\(m\)行\(n\)列の行列の成分や「この行列がどんなものになるか」というのが結構変わってしまう、ということです。
なので、この線形写像について、この表現行列というのは、元の空間の基底と行き先の空間の基底を選んであげると、それで確定する、という感じになっています。
ここでわざわざ回りくどいような言い方をしておかなければならない理由は、数ベクトル空間だとすると、「いわゆる標準基底を用意して、いつもそれを使っておけばいいじゃないか」というふうになるからです。
実は「数ベクトル空間の時の線形写像を、行列の積として定義する」と言っているものは、そのような理由で、標準基底に対する表現行列のことを言っていたりするわけです。
ところが、\(v\)とか\(w\)というのが、いわゆる一般の抽象ベクトル空間となると、数ベクトル空間の時のように、特殊な基底、「これを使うのが一番ベストでしょう」みたいなものがないかもしれません。もちろん「基底にします」とていうベクトルの組はいくらでも取れます。しかし、その中でどれか1つが特別であるということがなかったりするかもしれないのです。
なので「一応、建前上は…」というか、どんな規定の選び方に対しても「このように定義する」みたいに決めておく必要があります。
あとは、「線形写像\(f\)の基底\({v_1, \ …, \ v_n}\)および\({w_1, \ …, \ w_m}\)」というのは、数ベクトル空間の場合でもこのようにしておく価値はあります。数ベクトル空間の場合は、普通に標準基底を取ってそれで表せば「それが一番簡単じゃないか」というふうに思いますが、実は基底の取り方を、標準規定ではない、もう少し別の規定を選ぶことによって、線形写像の\(\begin{pmatrix}
a_{11} & a_{12} & \dots & & & a_{1n} \\
a_{21} & a_{22} & & & & a_{n1} \\
\vdots & & \ddots & & &\vdots \\
a_{m1} & a_{m2} & \dots & & a_{mn}
\end{pmatrix}
\)の表現行列が簡単になるかもしれない、という可能性を秘めています。
実際、そのことを利用して、次回あたりに解説しようと思いますが、行列の対角化というようなことをしたりするわけです。
ちなみに行列の対角化というのは、きっと線形代数の単位を取ろうと思うと、後期の試験でハイライトになる部分のはずです。そのため、どうしても、しっかり計算できるようにしなければいけない部分ではあります。
というわけで、とにかく、抽象的な線形写像の場合だと、スタートの空間とエンドの空間で基底を1組取って固定してあげると、それに応じて\(\begin{pmatrix}
a_{11} & a_{12} & \dots & & & a_{1n} \\
a_{21} & a_{22} & & & & a_{n1} \\
\vdots & & \ddots & & &\vdots \\
a_{m1} & a_{m2} & \dots & & a_{mn}
\end{pmatrix}\)の行列が定まり、そうすると数ベクトル空間と同じように、ほとんど平行な感じで扱えるようになります
例
ではいくつか例を見てみましょう。
| \(R^3\)の標準基底を\(e_1 \ = \ \left( \begin{array}{crl} 1 \\ 0 \\ 0 \end{array} \right)\), \(e_2 \ = \ \left( \begin{array}{crl} 0 \\ 1 \\ 0 \end{array} \right)\), \(e_3 = \ \left( \begin{array}{crl} 0 \\ 0 \\ 1 \end{array} \right)\)とする。線形写像\(f:R^3 \ → \ R^3\)を\([f(e_1), \ f(e_2), \ f(e_3)] \ = \ [e_1, \ e_2, \ e_3]\left( \begin{array}{crl} 2 & 0 & 1 \\ 3 & -1 & 1 \\ 1 & & -1 \end{array} \right) \)で定義する。すなわち、\([f(e_1), \ f(e_2), \ f(e_3) \ = \ [e_1, \ e_2 , e_3] \left( \begin{array}{crl} 2 & 0 & 1 \\ 3 & -1 & 1 \\ 1 & 2 & -1 \end{array} \right)\)となる。これは\(f\)の\({e_ⅰ}, \ {e_ⅰ}\)に関する表現行列である。 |
\(R^3\)の標準基底を、いわゆる\(\left(
\begin{array}{crl}
1 \\
0 \\
0
\end{array}
\right)\), \(\left(
\begin{array}{crl}
0 \\
1 \\
0
\end{array}
\right)\), \(\left(
\begin{array}{crl}
0 \\
0 \\
1
\end{array}
\right)\)と取っておきます。
さてこの時、線形写像\(f\)、\(R^3\)から\(R^3\)への写像を、\(\left(
\begin{array}{crl}
1 \\
0 \\
0
\end{array}
\right)\)の送り先が\(\left(
\begin{array}{crl}
2 \\
3 \\
1
\end{array}
\right)、\left(
\begin{array}{crl}
0 \\
1 \\
0
\end{array}
\right)\)の送り先が\(\left(
\begin{array}{crl}
0 \\
1 \\
0
\end{array}
\right)\)、\(\left(
\begin{array}{crl}
0 \\
0 \\
1
\end{array}
\right)\)の送り先が\(\left(
\begin{array}{crl}
1 \\
1 \\
-1
\end{array}
\right)\)となるような線形写像としておきます。
ちなみに、線形写像は基底ベクトルの行き先が決まれば、他の一般のベクトルの行き先も自動的に決まるため、このように基底の行き先を指定しておくと良いです。
さて、そうすると\(f(e_1)\)は\(\left(
\begin{array}{crl}
2 \\
3 \\
1
\end{array}
\right)\)というベクトル、\(f(e_2) \)は、\(\left(
\begin{array}{crl}
0 \\
-1 \\
2
\end{array}
\right)\)というベクトル、\(f(e_3)\)は\(\left(
\begin{array}{crl}
1 \\
1 \\
-1
\end{array}
\right)\)というベクトルです。
この\(\left(
\begin{array}{crl}
2 \\
3 \\
1
\end{array}
\right)\)というベクトルは、\(2e_1 \ + \ 3e_2 \ + \ 1e_3\)と表せます。
なので、下記のようにそれぞれ
\(f(e_1) \ = \ \color{red}{2e_1 \ + \ 3e_1 \ + \ e_3}\)
\(f(e_2) \ = \ \color{red}{e_2 \ + \ 2e_3}\)
\(f(e_3) \ = \ \color{red}{e_1 \ + \ e_1 \ – \ e}\)
すなわち\(f(e1)\)の部分は\(2E1 \ + \ 3E2 \ + \ E3\)となります。
\([f(e1),f(e2),f(e3)]\)を書き下すと、このようになっています。
この書き下したものと、1行3列の行列×3行3列の行列と思って、\([e_1, \ e_2, \ e_3]\)と\(\left(
\begin{array}{crl}
2 & 0 & 1 \\
3 & -1 & 1 \\
1 & 2 & -1
\end{array}
\right)\)を掛け算したものと\(\color{red}{ [2e_1 \ + \ 3e_1 \ + \ e_3, \ e_2 \ + \ 2e_3, \ e_1 \ + \ e_1 \ – \ e] }\)がちょうど同じ値になっています。
というわけで、\([e_1, \ e_2, \ e_3]\)に対して\(\left(
\begin{array}{crl}
2 & 0 & 1 \\
3 & -1 & 1 \\
1 & 2 & -1
\end{array}
\right)\)のように書いておくと、これが写像\(f\)の表現行列になります。
ちなみに、いわゆる数ベクトル空間でこれらの写像を線形写像として表現すると、\(\left(
\begin{array}{crl}
2 & 3 & 1 \\
0 & -1 & 2 \\
1 & 1 & -1
\end{array}
\right)\)の行列\(×\)何か、となります。
\(\left(
\begin{array}{crl}
2 & 3 & 1 \\
0 & -1 & 2 \\
1 & 1 & -1
\end{array}
\right)\)の行列が、いわゆる普通の「数ベクトル空間の時の、線形写像を定義する行列」になっています。
ちなみにこれを、先程までやっていたみたいに、抽象ベクトル空間として解釈すると、これはたまたま\(R^3\)から\(R^3\)、つまり同じベクトル空間から同じベクトル空間への写像となっています。そしてこれは、始まりと終わり、両方とも同じ基底(\({e_ⅰ}\))を使って表しています。
ちなみに片方だけ基底の取り方を変えることもできます。始まりの空間だけ基底の取り方を変えることや、あるいは両方とも変えることもできます。
そのことについて、少し触れてみましょう。
| \(R^3\)の別の基底を\(v_1 \ = \ \left( \begin{array}{crl} 1 \\ 0 \\ 0 \end{array} \right), \ v_2 \ = \ \left( \begin{array}{crl} 1 \\ 1 \\ 0 \end{array} \right), v_3 \ = \ \left( \begin{array}{crl} 1 \\ 1 \\ 1 \end{array} \right)\)とする。このとき、\(f(v_1) \ = \ \left( \begin{array}{clr} 2 \\ 3 \\ 1 \end{array} \right), \ f(v_2) \ = \ \left( \begin{array}{crl} 2 \\ 2 \\ 3 \end{array} \right), \ f(v_3) \ = \ \left( \begin{array}{crl} 3 \\ 3 \\ 2 \end{array} \right)\)である。すなわち、\([f(v_1), \ f(c_2), \ f(c_3)] \ = \ [e_1, \ e_2, \ e_3] \left( \begin{array}{crl} 2 & 2 & 3 \\ 3 & 2 & 3 \\ 1 & 3 & 2 \end{array} \right)\)となる。これは\(f\)の\({v_ⅰ}, \ {e_ⅰ}\)に関する表現行列である。さらに、\(R^3\)の別の基底を\(w_1 \ = \ \left( \begin{array}{crl} 1 \\ 1 \\ 0 \end{array} \right), \ w_2 \ = \ \left( \begin{array}{crl} 0 \\ 1 \\ 1 \end{array} \right), \ w_3 \ = \ \left( \begin{array}{crl} 0 \\ 0 \\ 1 \end{array} \right)\)とすると、\([e_1, \ e_2, \ e_3] \left( \begin{array}{crl} 2 & 2 & 3 \\ 3 & 2 & 3 \\ 1 & 3 & 2 \end{array} \right) \ = \ [w_1, \ w_2, \ w_3] \left( \begin{array}{crl} 2 & 2 & 3 \\ 1 & 0 & 0 \\ 0 & 3 & 2 \end{array} \right)\)となる。これは\(f\)の\({v_ⅰ}, \ {w_ⅰ}\)に関する表現行列である。 |
同じ写像で考えます。
\(R^3\)の別の基底を、\([v_1, \ v_2, \ v3] \ = \ \left(
\begin{array}{crl}
1 & 0 & 0 \\
1 & 1 & 0 \\
1 & 1 & 1
\end{array}
\right)\)のように取りました。これで、\(R^3\)のベクトル全てかけます。
さて、この時、\(v_1\)を\(F\)で送るとどうなるかということですが、先程と同様に計算すると、\(\left(
\begin{array}{crl}
2 \\
3 \\
1
\end{array}
\right)\)となります。\(v_2\)というのは、\(\left(
\begin{array}{crl}
1 \\
1 \\
0
\end{array}
\right)\)を送った結果、\(\left(
\begin{array}{crl}
2 \\
2 \\
3
\end{array}
\right)\)になります。\(v_3\)は\(\left(
\begin{array}{crl}
1 \\
1 \\
1
\end{array}
\right)\)を送ると\(\left(
\begin{array}{crl}
3 \\
3 \\
2
\end{array}
\right)\)になります。
というわけなので、\([f(v_1, \ f(v_2), \ f(v_3)]\)を送った結果、\([e_1, \ e_2, \ ,e_3] \ × \ \left(
\begin{array}{crl}
2 & 2 & 3 \\
3 & 2 & 3 \\
1 & 3 & 2
\end{array}
\right)\)になります。
そうすると、ここで出てきた3\(×\)3の行列ですが、これは\(F\)のスタートの空間の基底は\(v\)系に取り、行き先のエンドの空間の基底は普通の標準規定、というのを使って表した場合の表現行列は、この3\(×\)3の行列、という行列になります。
この行列は、先ほどの行列と違う、ということがわかりますでしょうか。先程の行列は\(\left(
\begin{array}{crl}
2 & 0 & 1 \\
3 & -1 & 1 \\
1 & 2 & -1 \\
\end{array}
\right)\)でしたが、スタートの空間の基底を少し変えたので、表現行列は\(\left(
\begin{array}{crl}
2 & 2 & 3 \\
3 & 2 & 3 \\
1 & 3 & 2
\end{array}
\right)\)と、このように変わりました。
「基底をどう取るか」により、「表現行列というのは依存して変わる」という例です。
これは、スタートの空間のみ\(v\)系を使い、エンドの空間を表すのには相変わらず標準基底を使っていましたが、そうではなくて行き先の空間の基底を\(w_1 \ = \ \left(
\begin{array}{crl}
1 \\
1 \\
0
\end{array}
\right), \ \left(
\begin{array}{crl}
0 \\
1 \\
1
\end{array}
\right), \ \left(
\begin{array}{crl}
0 \\
0 \\
1
\end{array}
\right)\)とする、これらも基底になります。これで表すと、とりあえず標準基底で表した場合、\([e_1, \ e_2, \ e_3] \ \left(
\begin{array}{crl}
2 & 2 & 3 \\
3 & 2 & 3 \\
1 & 3 & 2
\end{array}
\right)\)となっていましたが、これを\(w_1, \ w_2, \ w_3\)を使って書こうとすると、\(e_1\)は\(\left(
\begin{array}{crl}
2 \\
3 \\
1
\end{array}
\right)\)というベクトル、これが2倍の\(w_1+\)1倍の\(w_2+\)0倍の\(w_3\)、となります。
実際、2倍の\(w_1\)は\(\left(
\begin{array}{crl}
2 \\
2 \\
0
\end{array}
\right)\)というベクトルです。1倍の\(w_2\)は\(\left(
\begin{array}{cfl}
0 \\
1 \\
1
\end{array}
\right)\)です。
\(\left(
\begin{array}{xcrl}
2 \\
2 \\
0
\end{array}
\right)\)と\(\left(
\begin{array}{crl}
0 \\
1 \\
1
\end{array}
\right)\)を足すと、\(\left(
\begin{array}{crl}
2 \\
3 \\
1
\end{array}
\right)\)になることが分かります。
これは、左辺\(\left(
\begin{array}{crl}
2 & 2 & 3 \\
1 & 0 & 0 \\
0 & 3 & 2
\end{array}
\right)\)というベクトルと等しいです。\([e_1, \ e_2, \ e_3] \ \left(
\begin{array}{crl}
2 & 2 & 3 \\
3 & 2 & 3 \\
1 & 3 & 2
\end{array}
\right)\)と、右辺\([w_1, \ w_2, \ w_3] \ \left(
\begin{array}{crl}
2 & 2 & 3 \\
1 & 0 & 0 \\
0 & 3 & 2
\end{array}
\right)\)が等しいと言えます。
ということは、これは結局\([f(v_1), f(v_2), \ f(v_3)]\)の送り先が、\([w1,w2,w3] \ \left(
\begin{array}{crl}
2 & 1 & 0 \\
2 & 0 & 3 \\
0 & 3 & 2
\end{array}
\right)\)となります。
ここに現れた\( \left(
\begin{array}{crl}
2 & 2 & 3 \\
1 & 0 & 0 \\
0 & 3 & 2
\end{array}
\right)\)は、スタートの空間を\(v_i\)という基底形で表しておいて、エンドの空間を\(w_i\)を使って表した場合の、\(f\)に関する表現行列です。
定理4(表現行列の変換)
これが最後の定理になりますが、そうすると、とにかく「基底を変えると、表現行列も変わる」ということが、先ほどの例で理解できたと思いますが、「では、表現行列はどのように変わるのか」に関して、定理は以下のようになります。
| \(f: \ V \ → \ W\)を線形写像、\({v_ⅰ}{v’ⅰ}\)を\(V\)の2つの基底、\({w_ⅰ}, {w’_ⅰ}\)を\(W\)の2つの基底とする。\(P\)を\({v_ⅰ}\)から\({v’_ⅰ}\)への変換行列、\(Q\)を\({w_ⅰ}\)から\({w’_ⅰ}\)への変換行列とする。すなわち、
\([v’_1, \ …, \ v’_n] \ = \ [v_1, \ …, \ v_n]P\) \(f\)の\({v_ⅰ}\)および\({w_ⅰ}\)に関する表現行列を\(A、{v7_ⅰ}\)および\({w’_ⅰ}\)に関する表現行列を\(A’\)とする。すなわち、 \([f(v_1), \ …, \ f(v_n)] \ \ = [w_1, \ …, \ w_m]A\) このとき、 \(A’ \ = \ Q^{-1}AP\) が成り立つ。 |
\(f:V\)から\(W\)を線形写像としておきます。このスタートの空間\(V\)に対して、\(v_ⅰ、v’_ⅰ\)という2つの基底を取っておきます。\(v’\)のダッシュは、別のものであるということを表すためにつけておき、\(V\)の2つの規定形としておきます。\(W\)の方も同様に、\(w_ⅰ\)と\(w’_ⅰ\)というのを、\(W\)の2つの基底としておきます。
その時、\(vⅰ\)から\(v_I’\)系への変換行列と\(w_ⅰ\)から\(w_ⅰ’\)系への変換行列というのを、\(P\)、\(Q\)というふうに表しておきます。
ちなみに、この基底の変換行列というのは以前解説しましたので、詳しい話はそちらを参照してください。
\(v’_1, \ …, \ v’_ n\)というのを、元の\(v_1, \ …, \ v_n \ × \ P\)、これも「右側から掛ける」という約束になっています。\(w\)の方も同じですので、\([w’_1, \ …, \ w’_m] \ = \ [w_1, \ …, \ w_m]Q\)というように書いておきます。
さて、この時、\(f\)のダッシュがついてない\({v_1}\)と\({v_n}\)に関して表した表現行列を、\(A\)として、ダッシュがついている系の基底に関して表した表現行列を\(A’\)のようにしておきます。
これの定義は、要するに\(f\)で\(v_1, \ …, \ v_n\)を送った計算結果を\(w_1\)から\(w_m\)を使って書こうとすると、\( [f(v_1), \ …, \ f(v_n)] \ = \ [w_1, \ …, \ w_m]A\)、\(f\)で\(v’_1\)から\(v’_n\)を送ったものを、\(w_1\)から\(w’_m\)を使って書こうとすると、v\( [f(v_1), \ …, \ f(v_n)] \ = \ [w_1, \ …, \ w_m]A\)という結果になったとします。
その時、ここに現れるそれぞれの基底に関する表現行列の間には、\(PQ\)というのを使って、\(A’ \ = \ Q^{-1}AP\)というような関係式が成り立つ、ということが知られています。
ちなみに、\(A´ \ = \ Q^{-1}AP\)の証明ですが、今のように\(PQ\)を使って書き下した上で、それぞれ\([w’_1, \ …, \ w’_m]\)というのは、\( [w’_1, \ …, \ w’_m]Q\)と書き換えられる、ということがありますので、\([w’_1, \ …, \ w’_m]\)を\([w_1, \ …, \ w_m]QA’\)に書き換えることができます。
左辺の\([f(v’_1), \ …, \ f’(v’_n)]\)については、3×3行列ぐらいで実際に確かめてみてください。\([FV1・・・FVN]×P\)と書き換えることが出来ます。そして\( [f(v’_1), \ …, \ f(v’_n)]\)も同様に、\([f(v_1), …, \ f(v_n)]P\)というように書き換えることができます。
なので、この式の両辺に、左から\(P-1\)というのを掛けると、\(Q×A´×P-1\)が\(A\)に等しい、ということが得られて、それを整形したものが\(A’ \ = \ Q^{-1}AP\)となっています。
このような手順をもって、この式が証明できます。このようなことをすると基底の変換が可能、ということになっており、この基底を変換することによって「なるべく簡単な表現を探していこう」ということが、ここから先の主な話題になります。
最後に究進塾でも、テキスト、大学の講義の補習授業、定期テスト、期末テスト、中間テストの対策などを行っておりますので、ご興味のある方は、無料体験授業からお申し込みください。
今回の解説は以上になります。ありがとうございました。
*********************
久松先生の動画解説
はじめに:当記事は、動画で解説をしている内容をご紹介していますが、音声を流せる環境にある方はぜひ動画をご覧いただき、久松先生の授業の雰囲気も一緒に掴んでいただければと思います。
動画紹介
【究進塾】大学補習チャンネル
【大学数学】線形代数 第5回 -部分ベクトル空間の基底-(所要時間: 50分49秒)



