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【1】見かけの成長と本当の成長の違い
前回の記事では、インフレとは単にモノの値段が上がることではなく「私たちが持っているお金の価値、つまり購買力が下がっていくことでもある」という話をしました。また、その結果として「見かけの数字が増えていても本当に豊かになったとは限らない」という点も確認しました。
今回は、その続きとして、「実質経済成長率」という考え方について整理してみたいと思います。
ここでまず確認したいのは、私たちがニュースなどでよく目にする「経済成長」という言葉です。たとえば、「今年の経済成長率は〇%だった」といった表現です。
このとき、多くの場合はまず、GDPの増加率が見られています。GDPは経済の大きさを示す代表的な指標ですから、これが増えていれば「経済が成長した」と言いたくなるのは自然です。
しかしGDPは金額で測られています。つまり、モノやサービスの「量」だけでなく、「価格」も含まれています。したがって、もし物価が上がれば、たとえ生産量がほとんど変わっていなくても、GDPの金額は増えてしまいます。
ここに、見かけの成長と本当の成長のズレが生まれます。
たとえば、ある年に生産されるモノやサービスの量がほとんど変わっていないのに、物価だけが上がったとします。このとき、GDPは金額としては増えます。しかし、それは単に値段が上がっただけであって、社会全体として本当に豊かになったとは言いにくいはずです。

【2】実質経済成長率とは何か
だからこそ必要になるのが「実質」で見るという考え方です。
「実質経済成長率」とは、物価の変化を取り除いたうえで、経済がどれだけ成長したのかを見るものです。
言い換えれば、見かけの金額の増加ではなく、モノやサービスの量がどれだけ増えたのかを捉えようとする指標です。
ここで感覚的に理解しておきたいのは、次のような考え方です。
「もしGDPが5%増えたとしても、そのうち3%が物価上昇によるものだとすれば、本当に増えた部分は残りの2%です。」これが「実質的な成長」です。
つまり、
名目成長率 = 実質成長率 + 物価上昇率
という関係で考えることができます。
このように分けて考えることで、私たちは「数字が増えた理由」を見分けることができるようになります。
・本当に生産が増えたのか
・それとも単に物価が上がっただけなのか
この違いは、景気を判断するうえで非常に重要です。

【3】需要・物価・実質成長の関係
ここまで見てきたように、経済は需要によって動きます。そして、その需要の拡大が生産や所得の増加につながるとき、初めて「実質的な成長」と言える状態になります。
一方で、需要が強くなりすぎたり、供給が追いつかなかったりすると、その結果は物価上昇として現れることもあります。この場合、数字は増えていても、それは実質的な豊かさの増加とは限りません。
だからこそ、
経済を見るときには、「名目」と「実質」を区別する必要があるのです。
一言で言えば、
見かけの数字ではなく、その中身を見る
ということです。
【4】ニュースを読み解くための視点
ここまで理解できると、ニュースで「経済が成長している」と言われたときにも、その中身を冷静に考えることができるようになります。
・それは本当に生産が増えているのか
・それとも物価が上がっているだけなのか
この視点を持つことが、経済を理解するうえで大きな一歩になります。
次回は、この実質経済成長率の考え方を土台にして、「景気循環とは何か」というテーマに進みます。好景気と不景気はなぜ繰り返されるのか、これまで見てきた需要やインフレの話と結びつけながら整理していきたいと思います。
執筆者プロフィール

S(イニシャル)
1964年生まれ。
公務員試験対策予備校や大学・専門学校など、様々な現場で学生を指導してきました。
得意なのは大学レベルの経済学、経営学、会計学で、究進塾では主に大学単位取得サポートコース(オンライン)を担当。
長年の豊富な指導経験から、「学生のつまづくポイント」を的確に把握しています。
堅苦しい「経済学」という学問を丁寧に解きほぐし、わかりやすく説明します。
とても親しみやすい性格で、質問もしやすいです。
生徒様お一人お一人に合わせた、また基礎を大切にした丁寧な指導がモットーです。



