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【1】生産者余剰とは何か
今回は「生産者余剰」の意味について説明します。「生産者余剰」とは「生産者にとってのお得感」というイメージで「利潤」を想像しますが実際は「利潤」だけでなく「固定費用」も含みます。
「生産者余剰=固定費用+利潤」と定義します。
「生産者にとってのお得感」を「生産者が操業を続けるメリット」と言い換えるとより正確な意味に近づきます。「操業を続けること」は「経営活動を継続すること」です。なぜ「固定費用」が「操業を続けることのメリット」なのでしょうか?
【2】固定費用という負担の正体
表現を少し変えましょう。「固定費用」を「固定費用の回収額」とすると意味が分かりやすくなります。
企業経営を行う場合、多くの資源を必要とします。製品を生産するためには工場が必要です。工場は建物ですがそこには機械を設置する必要があり、材料や労働者も必要になります。工場や機械の購入には多額の資金が必要になります。一括現金払いがむずかしい場合は銀行から借金して購入することになります。借金は長期間にわたり支払いが続くので簡単に経営活動をやめることができません。最近ではリース契約も可能ですが契約期間内で解約できないという縛りがあり経費が固定化します。
このように「借金」も「リース」も長期間にわたって一定額の支払いが続きます。つまり、企業は設立当初から「多額の固定費用」を負担します。製品の売り上げが好調なら「固定費用の支払い」も順調に進みます。売り上げが不調なら「固定費の支払い」に苦しみます。このように企業の経営者にとっては製品の総収入(売上代金)で「固定費用を支払えるかどうかが死活問題」なのです。
【3】数式で確認する生産者余剰

定義式で考えましょう。
総収入(TR)-総費用(TC)=利潤…①
総費用(TC)=可変費用(VC)+固定費用(FC)…②
総収入(TR)-[可変費用(VC)+固定費用(FC)]=利潤…③
総収入(TR)-可変費用(VC)=固定費用(FC)+利潤…④
生産者余剰=固定費用(FC)+利潤…⑤
④=⑤より
総収入(TR)-可変費用(VC)=生産者余剰…⑥
【4】操業継続と固定費用回収の関係
「可変費用(VC)」である「材料費や人件費」は生産活動をおこなう限り発生しますが、生産活動をやめれば材料を買わず労働者も雇用しないので発生しません。
しかし「固定費用(FC)」は生産活動を停止しても支払いが続きます。企業は赤字でも「固定費用の回収」が可能な限りは生産活動を継続します。「固定費用の回収」は経営者にとって「大きなメリット」になりますので「生産者余剰」に含めるのです。
このように、企業にとっては「固定費用の回収」が最優先になります。「固定費用回収」後にさらに販売量を伸ばすことに成功すれば「利潤」が発生します。「利潤獲得」までには長い道のりがあるのです。
【5】グラフによる生産者余剰の確認

総収入(TR)-可変費用(VC)=固定費用(FC)+利潤…④
「四角形PEEXEO」-「三角形EOXE」=「三角形EOPE」
定義式④を図で見ると以上のようになります。
「三角形EOPE」=生産者余剰=固定費用(FC)+利潤
となり⑤式に対応していることを確認してください。
執筆者プロフィール

S(イニシャル)
1964年生まれ。
公務員試験対策予備校や大学・専門学校など、様々な現場で学生を指導してきました。
得意なのは大学レベルの経済学、経営学、会計学で、究進塾では主に大学授業補習コース(オンライン)を担当。
長年の豊富な指導経験から、「学生のつまづくポイント」を的確に把握しています。
堅苦しい「経済学」という学問を丁寧に解きほぐし、わかりやすく説明します。
とても親しみやすい性格で、質問もしやすいです。
生徒様お一人お一人に合わせた、また基礎を大切にした丁寧な指導がモットーです。



