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【1】景気循環とは何か

ここまでの記事では、需要が経済を動かすこと、そしてその広がり方が「注入」と「漏れ」によって決まることを見てきました。また、インフレや実質経済成長率の話を通して、「見かけの数字」と「本当の中身」は区別して考える必要があることも確認しました。

今回は、その理解を踏まえて「景気循環」というテーマに進みます。まず、私たちが日常的に耳にする「景気が良い」「景気が悪い」という言葉について考えてみましょう。

景気が良いとは
• モノやサービスがよく売れる
• 企業の生産が増える
• 雇用が増え、所得が増える
という状態です。

一方で景気が悪いとは
• モノが売れない
• 生産が減る
• 雇用が減り、所得が減る
という状態です。

ここまでは直感的に理解しやすいと思います。

では、次の疑問が出てきます。

「なぜ景気は良い状態のまま続かないのでしょうか」

そして逆に「なぜ不景気も永遠には続かないのでしょうか」

これが「景気循環」の問題です。
景気循環とは、経済が

好景気(拡張)→後退(減速)→不景気(底)→回復(上昇)

という流れを繰り返す現象のことをいいます。

ここで重要なのは、景気は単純に「上がるか下がるか」ではなく「波のように動く」という点です。

では、この波はなぜ生まれるのでしょうか


【2】景気はなぜ波のように動くのか


ここで、これまで学んできた内容がつながります。

景気の動きを決めているのは、基本的には「需要の強さ」です。

需要が強くなると

企業は生産を増やす→雇用が増える→所得が増える→消費が増える

という流れが生まれます。

これはまさに、これまで見てきた「乗数効果の拡大」です。

つまり、好景気のときには「需要が需要を呼ぶ状態」になっています。

しかし、この状態は永遠には続きません

なぜなら、ここに「漏れ」や「制約」が働き始めるからです。

たとえば

• 所得が増えると貯蓄も増える(漏れ)
• 需要が強すぎると物価が上がる(インフレ)
• 人手や設備が足りなくなる(供給制約)

といったことが起こります。すると、需要の伸びは徐々に鈍くなります。これが「景気の減速」です。

さらに進むと

• 消費が伸びなくなる
• 投資が減る
• 生産が縮小する

という流れに入り「景気は後退」していきます。

ここでは逆に「需要が縮小を呼ぶ状態」になります。

これが「不景気」です。

しかし、不景気もまた永遠には続きません

なぜなら、景気が悪くなると、

• 物価上昇が落ち着く
• 金利が下がる
• 政府や中央銀行が景気対策を行う

といった変化が起こるからです。

また、企業にとってもコストが下がり、新たな投資の機会が生まれます

こうして再び需要が回復し、景気は上向いていきます

このように、

需要の拡大→漏れ・制約→需要の減速→縮小→回復

という流れが繰り返されることで、景気は循環します。


【3】景気循環を見るための視点

ここまでの話を一言でまとめると、

「景気循環」とは「需要の拡大と縮小が繰り返されることで生まれる波」である

ということです。

ここで重要なのは「景気循環」は偶然に起きているのではなく経済の仕組みそのものから生まれているという点です。

これまで見てきた

• 乗数効果
• 漏れ
• インフレ
• 実質と名目の違い

といった要素が組み合わさることで、自然に波が生まれているのです。

このように考えると、ニュースで「景気が良い」「景気が悪い」と言われたときにも、その背景をより深く理解できるようになります。

単に結果を見るのではなく、

• 需要はどうなっているのか
• 漏れはどの程度あるのか
• 物価はどう動いているのか

といった視点で考えることができるようになるからです。

次回は、この景気循環の理解をさらに深めるために、「失業と物価はどのように関係しているのか」というテーマに進みます。景気を見るうえで、もう一つ重要な視点を整理していきたいと思います。


執筆者プロフィール


S(イニシャル)
1964年生まれ。
公務員試験対策予備校や大学・専門学校など、様々な現場で学生を指導してきました。
得意なのは大学レベルの経済学、経営学、会計学で、究進塾では主に大学単位取得サポートコース(オンライン)を担当。

長年の豊富な指導経験から、「学生のつまづくポイント」を的確に把握しています。
堅苦しい「経済学」という学問を丁寧に解きほぐし、わかりやすく説明します。
とても親しみやすい性格で、質問もしやすいです。
生徒様お一人お一人に合わせた、また基礎を大切にした丁寧な指導がモットーです。


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