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【1】インフレとは「モノの値段上昇」ではなく「お金の価値の低下」
ここまでの記事では、需要が経済循環を動かし、その広がり方は「注入」と「漏れ」の関係で決まることを見てきました。
前回は、その「漏れ」として、貯蓄だけでなく、将来不安による消費抑制、増税、輸入、そしてインフレもまた、経済を広がりにくくする要因になるという話をしました。
今回は、その中でも「インフレ」に絞って考えてみたいと思います。
「インフレ」とは、簡単に言えば、物価が継続的に上がっていくことです。
ただ、ここで大切なのは、「インフレ」を単にモノの値段が上がることと理解しないことです。
もちろんそれ自体は間違いではありません。しかし、それだけだと、生活の中で何が起きているのかが見えにくくなります。
たとえば、少し前まで1000円で買えていたものが、今では1200円出さないと買えなくなったとします。このとき起きていることは何でしょうか。表面的には、商品の値段が上がっただけです。しかし家計の立場から見れば、それは同時に、同じ1000円で買える量が減ったということでもあります。つまり「お金の価値が下がった」ということです。ここがインフレを考えるときの核心です。
インフレについてまとめると、
「インフレ」とは、単にモノの値段が上がるだけではなく、お金の購買力が下がっていくことを意味しています。

【2】給料が上がっても豊かになるとは限らない
たとえば給料が上がったとしても、それで本当に生活が楽になるとは限りません。
給料が5%増えたとしても、物価がそれ以上に上がっていれば、実際には前より苦しくなることもあります。
ここで必要になるのが「名目」と「実質」という区別です。
「名目」とは「見かけの数字」です。給料がいくらになったか、売上がいくらになったか、GDPがいくらになったか、といった「数字そのもの」です。
これに対して「実質」とは、物価の変化を除いたうえで見た「本当の中身」です。たとえば、給料が上がったとしても、物価も同じだけ、あるいはそれ以上に上がっていれば、実質的な豊かさは増えていないことになります。見かけの数字は増えていても、本当に買える量や使える量は増えていないからです。

【3】経済成長を見るときに必要な「実質」の視点
経済全体を見るときも、まったく同じことが起きます。景気が良くなったとか、経済が成長したとか言うとき、私たちはつい数字が増えているかどうかだけを見てしまいがちです。しかし、その増加が単に物価上昇によるものなら、それは「本当の成長」とは言いにくい面があります。
たとえば、生産されるモノやサービスの量がほとんど変わっていないのに、物価だけが上がれば、金額としてのGDPは増えます。けれども、それは社会全体として本当に豊かになったことを意味するわけではありません。
だからこそ、経済を見るときには「名目」だけでなく「実質」で考える必要があるのです。ここで重要なのが「実質経済成長率」という考え方です。
【4】実質経済成長率が示す「本当の成長」
「実質経済成長率」とは物価の変化を除いたうえで、経済が本当にどれだけ成長したのかを見るものです。言い換えれば、見かけの数字の増加ではなく、モノやサービスの生産や所得の実質的な増加を捉えようとする考え方です。
この視点がないと、私たちはインフレによる数字の膨らみを、そのまま成長だと勘違いしてしまいます。
経済は需要によって動きます。しかし、その需要の拡大が、実際の生産や所得の増加につながっているのか、それとも単に物価上昇として現れているのかは、きちんと区別して見なければなりません。
次回は「名目経済成長率」と「実質経済成長率」の違いをもう少し丁寧に整理していきたいと思います。
執筆者プロフィール

S(イニシャル)
1964年生まれ。
公務員試験対策予備校や大学・専門学校など、様々な現場で学生を指導してきました。
得意なのは大学レベルの経済学、経営学、会計学で、究進塾では主に大学単位取得サポートコース(オンライン)を担当。
長年の豊富な指導経験から、「学生のつまづくポイント」を的確に把握しています。
堅苦しい「経済学」という学問を丁寧に解きほぐし、わかりやすく説明します。
とても親しみやすい性格で、質問もしやすいです。
生徒様お一人お一人に合わせた、また基礎を大切にした丁寧な指導がモットーです。



