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【1】確認問題の提示

― 確認問題から学ぶこと―

国民経済計算に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。

1.GDPとは,一定期間に市場で取引された財・サービスの付加価値の合計であり,新築住宅だけでなく中古住宅の販売もGDPを増加させる。
2.GDPとは,国内居住者の投資活動によって新たに生み出された付加価値の合計であり,株式の購入も投資であるからGDPを増加させる。
3.GDPとは,GNIから海外からの純要素所得を差し引いたものである。
4.GDPは生産面から測った国内総生産であり,GDIは分配面から測った国内総所得である。実際には,統計誤差があるため,GDPとGDIは一致しない。
5.GDPは原則として市場取引を対象とするが,例外として持ち家サービス,家事労働,遺産も帰属計算に含まれる。


【2】正答の提示と本記事の目的

前回は、GDPとGNIの違い、そして「海外からの純要素所得」という考え方を確認しました。今回は、その確認問題の解答と解説です。
まず結論からいきます。

【正答】 3.GDPとは,GNIから海外からの純要素所得を差し引いたものである。

では、なぜ選択肢3が正しく、他は誤りなのか。
順に確認していきます。


【3】選択肢3が正しい理由(GDPとGNIの関係)

【選択肢3が正しい理由】
GDPとGNIの関係は次の式で表されます。
「GNI = GDP + 海外からの純要素所得」
「GDP = GNI - 海外からの純要素所得 」
選択肢3は

「GDPとは、GNIから海外からの純要素所得を差し引いたものである」

と述べています。
これはそのまま
「GDP = GNI - 海外からの純要素所得」
を文章にしたものです。
したがって選択肢3が正しいといえます。


【4】誤りの選択肢を検討する意義

他の選択肢はどこが違うのか
正しく理解するためには「正しいものを選ぶ」だけでなく「なぜ他が違うのか」を整理することが大切です。


【5】選択肢1:GDPに含まれないものの基本ルール

【選択肢1/中古住宅の販売】
中古住宅や中古車の売買は、新しい生産ではありません。
すでに存在している財産の持ち主が変わっただけです。

GDPは「新しく生み出された付加価値」だけを集計します。

したがって1は誤りです。
ここは「お金が動いたか」ではなく「新しい生産=今年の生産」で判断します。


【6】選択肢2の誤り(株式の購入)

【選択肢2/株式の購入】
株式の売買も同じです。
株を買っても、モノやサービスが新しく生まれたわけではありません。したがって、株式の売買そのものはGDPには含まれません(ただし証券会社の手数料などはGDPになります)。
「投資」という言葉に注意が必要です。経済学では日常用語と違う使い方をします。日常用語では株式を購入することを「株式投資」と言います。

しかし、経済学でいう「投資」とは機械・工場・設備などの「実物資産の購入」を意味します。

株式は実物資産ではないので投資に含めません


【7】選択肢4の検討(GDPとGDI)

【選択肢4/GDPとGDI】
GDP(生産面)とGDI(分配面)は、理論上は一致します(三面等価原則)。
三面等価原則については、次回のブログで説明します。


【8】選択肢5の誤り(帰属計算)

【選択肢5/帰属計算】
「持ち家サービスがGDPに含まれる」という点は正しいです。しかし、家事労働は測定不能遺産(相続)は生産活動ではないため、GDPには含まれません。「すべて含まれる」としている時点で誤りです。


【9】この問題のまとめ(総括)

【この問題のまとめ(総括)】
この問題で確認しておきたいポイントは2つです。

① GDPとGNIの関係式が理解できているか
② GDPは「新しく生産された付加価値」だけを集計する指標だと分かっているか

この2点が整理できていれば、選択肢は自然に絞れていきます。
次回はこの流れを受けて
・GDP=GDI=GDE
・三面等価原則
・「なぜ必ず一致するのか」を扱います。
ここが見えてくると、国民経済計算はぐっと理解しやすくなりますよ。


執筆者プロフィール


S(イニシャル)
1964年生まれ。
公務員試験対策予備校や大学・専門学校など、様々な現場で学生を指導してきました。
得意なのは大学レベルの経済学、経営学、会計学で、究進塾では主に大学授業補習コース(オンライン)を担当。

長年の豊富な指導経験から、「学生のつまづくポイント」を的確に把握しています。
堅苦しい「経済学」という学問を丁寧に解きほぐし、わかりやすく説明します。
とても親しみやすい性格で、質問もしやすいです。
生徒様お一人お一人に合わせた、また基礎を大切にした丁寧な指導がモットーです。


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