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【1】政府と中央銀行は景気をどう支えるのか

景気が良くなると、「政府が景気対策をしたからだ」というニュースを耳にすることがあります。
反対に、物価が上がりすぎると、「中央銀行が金利を引き上げるかもしれない」という話題もよく聞きます。
では、政府や中央銀行は、どのように景気に関わっているのでしょうか。
今回は、その基本的な考え方を見ていきましょう。

ここで大切なのは、政府も中央銀行も、「景気そのもの」を直接動かしているわけではないということです。

景気を動かしているのは、私たち一人ひとりの消費や、企業の投資、生産活動です
政府や中央銀行は、その流れを後ろから支えたり、反対に過熱しすぎた景気を少し落ち着かせたりすることで、景気を安定させようとしているのです。


【2】政府が需要を生み出す「財政政策」

まず、「政府の役割」から考えてみましょう。
これまで見てきたように、景気が悪くなると、消費が減り、企業の売上が減ります
すると企業は生産を減らし、雇用も縮小します。働く人の所得も減るため、さらに消費が減ってしまいます

このように、景気が悪い方向へ回り始めると、その流れは自然には止まりにくくなります

そこで政府は、公共事業を行ったり、災害復旧や子育て支援などに予算を使ったりします。
つまり、政府が自らお金を支出し、新しい需要を生み出そうとするのです。
以前学んだ乗数理論でいえば、これは経済循環への「注入」にあたります。
政府が最初に支出したお金は、工事を請け負った企業の売上になります。
その企業は従業員に給料を支払い、その所得は買い物へと使われます。
さらに、その買い物は別の企業の売上となり、新たな所得を生み出します。

このように、一度の支出が何度も経済の中を巡ることで、生産や所得が広がっていくのです。
これが財政政策の基本的な考え方です。


【3】金利を通して景気に働きかける「金融政策」

一方、中央銀行、日本でいえば日本銀行は、少し違う方法で景気に働きかけます。
中央銀行は、道路を造ったり商品を売ったりするわけではありません
その代わり、お金を借りやすくしたり、借りにくくしたりすることで、経済全体の動きを調整します
例えば、金利が低くなると、企業は設備投資のためのお金を借りやすくなります。
家庭でも住宅ローンや自動車ローンを利用しやすくなり、大きな買い物を考えやすくなります。
その結果、需要が増え、生産や雇用の拡大につながることが期待されます。
反対に、景気が良くなりすぎて物価が急激に上昇するときには、中央銀行は金利を引き上げることがあります。
すると、お金は借りにくくなり、消費や投資は少し落ち着きます。
その結果、物価の上がり方も穏やかになることが期待されるのです。
このように、金利などを通して景気や物価を調整する政策を「金融政策」といいます


【4】財政政策と金融政策の違いと限界

ここで整理してみましょう。
「財政政策」は政府がお金を使うことで需要を生み出し、景気を支える政策です。
一方、「金融政策」は中央銀行が金利やお金の流れを調整し、人々や企業の行動に働きかける政策です。

方法は違いますが、どちらも景気を安定させるという共通の目的を持っています。


もちろん、どちらの政策にも限界があります
政府がお金を使い続ければ「財政負担」は大きくなりますし、金利を下げても、「将来への不安」が強ければ企業や家庭は思うようにお金を使わないかもしれません。
景気は、人々の気持ちや世界経済の動きなど、さまざまな要因が重なって動いているからです。
だからこそ、政府と中央銀行は、そのときどきの経済状況を見ながら、それぞれの政策を組み合わせて景気の安定を目指しています。


【5】景気と暮らしをつなぐ「金利」へ

これまでの連載では、景気循環や失業、物価について見てきました。
次回は、今回少し触れた「金利」が、私たちの暮らしや企業の活動にどのような影響を与え、金融政策の中でどのような役割を果たしているのかを、生活に身近な例から考えてみましょう。


執筆者プロフィール


S(イニシャル)
1964年生まれ。
公務員試験対策予備校や大学・専門学校など、様々な現場で学生を指導してきました。
得意なのは大学レベルの経済学、経営学、会計学で、究進塾では主に大学単位取得サポートコース(オンライン)を担当。

長年の豊富な指導経験から、「学生のつまづくポイント」を的確に把握しています。
堅苦しい「経済学」という学問を丁寧に解きほぐし、わかりやすく説明します。
とても親しみやすい性格で、質問もしやすいです。
生徒様お一人お一人に合わせた、また基礎を大切にした丁寧な指導がモットーです。


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