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【1】GDPとGNIの基本的な違い
前回はGDPとGNP(現在はGNIと呼ばれる)の定義と違いを整理しました。
| 前回記事:マクロ経済学~GDPとGNP(GNI)について①~景気を測る指標 |
・GDP … 1年間に国内で生産された付加価値の合計
・GNI … 1年間に国民(居住者)が得た所得の合計
という関係でした。
ここで重要なのは、GDPとGNIは必ずしも同じにならないという点です。そのズレを生み出しているのが、海外との所得のやり取りです。まず、「日本の居住者が外国で所得を得るケース」を考えてみましょう。
【2】日本の居住者が海外から得る所得
日本は島国であり、日常的に国境を越えて働きに行くことは簡単ではありません。そのため現実には、
・日本企業が海外支店や現地法人から受け取る利益
・外国政府が発行する国債から受け取る利子
・外国企業の株式から受け取る配当
という形で海外から所得を受け取るケースの方が一般的です。
これらは「日本の国民が得た所得」なのでGNIには含まれますが
「日本国内での生産」ではないためGDPには含まれません。
【3】外国の居住者が日本から得る所得
逆に「外国の居住者が日本から所得を得るケース」もあります。
・外国企業が日本の子会社や支店から受け取る利益
・外国の居住者が日本の国債や企業から受け取る利子・配当
という形で日本の財産や企業に投資し、その運用の結果として受け取る所得が代表例です。
これらは「日本国内での生産の結果」なのでGDPには含まれますが、「日本の居住者の所得」ではないためGNIには含まれません。
【4】海外からの純要素所得とGDP・GNIの関係
このように、
・日本の居住者が外国で得た所得
・外国の居住者が日本で得た所得
の差をまとめたものを「海外からの純要素所得」といいます。

GDPとGNIの関係は、この海外からの純要素所得を使って次のように表されます。
GNI = GDP + 海外からの純要素所得
GDP = GNI - 海外からの純要素所得
・国内の景気を測りたいとき→GDP
・国民の所得水準を見たいとき→GNI
というふうに使い分けます。
【5】GDPに含まれないものの基本ルール
最後にGDPに関する基本ルールを確認します。
①【GDPに含まれないもの】
GDPは「1年間に国内で新しく生産された付加価値」を集計する指標です。
したがって、お金が動いたからといって、すべてがGDPに含まれるわけではありません。
代表的な「GDPに含まれないもの」は次のようなものです。
〔資産取引〕
・中古住宅や中古車の売買
・土地の売買
・株式や債券(国債等)の売買
これらは、すでに存在している資産(財産)の持ち主が変わっただけで、新しい生産が行われていません。このように資産取引はGDPに含まれません。
「新しく生み出されたかどうか」が判断基準になります。
ただし、資産取引を仲介する不動産会社や証券会社の売買手数料は取引された年のGDPになります。

【6】測定不能活動とGDPの限界
〔測定不能活動〕
・家事労働
・ボランティア活動
これらは価値ある活動ですが測定が難しいため、GDPには含まれていません。
【7】帰属計算とは何か
②【帰属計算】
GDPは原則として「市場で売買されたもの」を集計します。しかし、それだけでは実態を正しく表せない場合があります。そこで用いられるのが「帰属計算」という考え方です。「帰属計算」とは「実際にお金のやり取りはないが、取引があったとみなしてGDPに含める計算」です。
代表例が「持ち家サービス」です。
【8】持ち家サービスと農家の自家消費
持ち家に住んでいる人は家賃を払っていませんが、もし他人に貸せば家賃収入が発生します。国民経済計算では、「自分で自分に家賃を払っているとみなす」
ことで、その分をGDPに含めます。GDPは国際比較に使われる統計であるため、国ごとに条件が変わらないよう、家賃の取り扱いを統一する必要があります。
もう一つの例として「農家の自家消費」があります。農家は産業として販売目的で農作物を生産しています。自家消費は農家が販売前に自宅で消費したものですが、農作物が生産されたという事実を重視してGDPに含めます。
〔帰属計算の代表例〕
・持ち家の帰属家賃
・農家の自家消費
【9】確認問題に挑戦
それでは、次の問題に挑戦してみてください。
| 国民経済計算に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。
1.GDPとは,一定期間に市場で取引された財・サービスの付加価値の合計であり,新築住宅だけでなく中古住宅の販売もGDPを増加させる。 |
解答・解説は、次回のお楽しみに!
執筆者プロフィール

S(イニシャル)
1964年生まれ。
公務員試験対策予備校や大学・専門学校など、様々な現場で学生を指導してきました。
得意なのは大学レベルの経済学、経営学、会計学で、究進塾では主に大学授業補習コース(オンライン)を担当。
長年の豊富な指導経験から、「学生のつまづくポイント」を的確に把握しています。
堅苦しい「経済学」という学問を丁寧に解きほぐし、わかりやすく説明します。
とても親しみやすい性格で、質問もしやすいです。
生徒様お一人お一人に合わせた、また基礎を大切にした丁寧な指導がモットーです。



