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なぜ私たちはM-1に胸を打たれるのか -大学受験にも通じる普遍性
もうすぐ2025年も終わりですね。
年の瀬に、久しぶりに「M-1グランプリ」を見たのですが、これが予想を上回る盛り上がりでした。その後のネットの声を見る限り、「近年まれに見るレベルの高さ」という声が多く聞かれます。
Xでは、私がフォローしている学者の方や演出家の方などもM-1に言及していて、盛り上がりを実感しました。
私も「一観客」ながら、見ていて胸が熱くなるものがありましたので、何がこれだけの熱狂を作るのか、まとめてみたいと思います。
お笑い芸人へのリスペクト
日本人はお笑い芸人へのリスペクト、人気がとても高いです。
そして、その活躍の場は以前にも増して広がっています。
今や、朝、昼、夜のワイドショー番組の司会をお笑い芸人が務めています。
これは僕なりの解釈ですが、日本人は人見知りで生真面目な人が多く、ジョークまでのハードルが高いと言われています。家族や仲間内では冗談を言い合っていても、初対面の人にいきなりジョークを言える人は稀でしょう。
だからこそ、「初めまして」の観客を笑わせるということへのリスペクトがあるのだと思います。
「笑い」へのリスペクトが日本人の共通認識として強いという点は、M-1がここまで盛り上がる、大切な要素と言えるでしょう。
今や、コンテンツが多岐に渡っていて、それぞれ自分の好みのコンテンツを見る時代です。価値観もバラバラで、共通の話題すら見つけるのが難しい時代と言われています。
そんな中、「笑い」というのは数少ない公約数と言えるでしょう。また、中でも最大の注目度を誇る「M-1」は、最大公約数になり得るコンテンツと言えるでしょう。
今どき、スターが一夜にして誕生する
それまでは「知る人ぞ知る」存在だった芸人が、優勝すると一躍スターになります。
また、視聴者はそのプロセスの目撃者となることで、心を掴まれ、ファンになり得ます。
今どき、そのようなタイプの番組は、希少と言えます。強いて言えばオーディション番組(「虹プロ」のような)がそれに近いでしょうか。
ただ、M-1ほど、一晩で一躍人気者になる番組は、他にないのではないでしょうか?
「今どき夢がある」という言い方ができるでしょう。
賞金1,000万円もさることながら、実際に世の中に認知されることで得られるものはそれ以上のものと言えるでしょう。
実際に、現在第一線で活躍している(少なくとも40代以下に関しては)ほとんどの芸人が、M-1を通じて世の中に知られたことがきっかけとなっています。
そして、順番など、運の要素もあるとは言え、ほぼ完全実力主義と言えるでしょう。
いまどき、完全実力の勝負を見れる、そしてそれによって誰かの命運が決まる瞬間を見れるという場面は希少です。
たった4分間でしゃべりのみ
4分間の時間制限の中で、しゃべりのみというシンプルさもよいですね。
名目上は、「誰でも出場できる」わけです。一見すると、歌やダンス、プロスポーツに比べると、スキルが見えにくいため、「自分ももしかしたら・・・」という夢を抱きやすいというところに引きがあります。
もちろん、実際に決勝、否、準決勝まで勝ち上がってくるのは、芸歴もあり、知名度もある「猛者たち」なわけで、しゃべりのテクニックはもちろんのこと、何年も積み重ねてきた努力だったり、生き様、才能の結晶が見られるわけですが・・・
正解がない
M-1の場合は、クイズと違って正解がありません。強いて言えば「高得点を獲得することが正解」です。どんなネタが飛び出すか、ふたを開けるまで分からない。もちろん、中川家のような正統派のしゃべくり漫才や、笑い飯のようなボケと突っ込みが入れ替わるパターンなど、型は色々あるのだと思いますが、そこから大きく逸脱しても、結果として爆笑を取ればそれが正解となり得ます。観客はここに創造性を感じ、心動かされるのでしょう。
順番によって得点が大きく変わる
くじによってネタを披露する順番が決まります。これはかなり大きな影響を及ぼします。
前半は審査員も様子を見るので、そこまで高得点は出しにくいと言われています。
今年は明らかに、後半の組ほど得点が高く出ました。また、高得点の後の組は不利と言われています。個人的には、トップバッターで出場したヤーレンズが前評判通りのクオリティの漫才を披露して、爆笑をさらい、高得点を取った、まではよかったのですが、後半の組に次々と抜かれていく、というドラマがありました。
審査員の得点とコメント
審査員は歴代のM-1の優勝者、もしくは決勝進出者が中心で、短い持ち時間の中で、各審査員が絶妙なコメントを残します。さらに、選ばれし芸人だけあって、緊張感あふれる中で笑いを持ってくるわけです。「一見、アホっぽい漫才の背景に、これだけ理知的な計算をしているんだな」「言語化する力が素晴らしい」と感服してしまうほどです。
それは、ビジネスの世界にも通じる普遍性があります。プレゼンをする側とそれを審査する審査員という構図。以前のM-1であればダメ出しをする審査員も多かったのですが、最近は時代背景の反映か、応援するコメントが増えてきました。そんな中で、今年は初めて審査員になったミルクボーイの駒場氏のコメントが特に話題に上がりました。
彼は確か審査員の中で最年少ということもあり、より出場者に近い立場で、寄り添い、応援するスタンスでコメントをしていたことが大勢の共感を呼んだのでしょう。
出場者の背景
実際に決勝に進出するコンビは、やはり「笑わせる」スキルが傑出しているわけですが、様々なバックボーンを持っています。例えば、昨年まで2年連続優勝の令和ロマンや、今年まで5年連続決勝進出した真空ジェシカは慶應大学卒業という高学歴組です。ですが、当然のことながら「笑わせる」という目的のための完全実力主義の場でもあるので、苦労しながら芸人を続けてきた、という方がむしろ多いです。それが「アナザーストーリー」として放送され、さらなる共感を得て、ファン獲得につながっています。
以上、M-1が人気を呼ぶメカニズムをまとめてみました。
実はこれ、多くは大学受験にも通じる話なんですね。
M-1は「一夜でスターが生まれる」ように見えますが、実際には、
その4分間の裏側に、何年にもわたる試行錯誤や失敗、積み重ねがあります。
それは、大学受験も同じです。
本番はたった1日、否、数時間。
しかし、結果を分けるのは、その日までにどれだけ考え、準備し、修正してきたかです。
努力がすぐに結果に見えない時期もあります。それでも、正しく積み上げていけば、
ある瞬間に一気に結果が出ることがある。
M-1を見て胸が熱くなった理由は、「努力が報われる瞬間」を、私たちが普遍的なものとして実感しているからかもしれません。
受験も同じです。
派手さはなくても、積み重ねた力は、必ず本番で表に出ます。
もちろん、違いもあります。まず、受験には「正解がある」という点、そして「順番がない」点。受験は「不確定要素」が少ないので、準備が結果に直結しやすいと言えるでしょう。
ラストスパートを迎える受験生の皆さんに送る言葉は、
できることは入念な準備をすること、そして後悔のないよう最善を尽くすこと。
結果は神のみぞ知る。
けれど、準備した分だけ、本番で発揮できる力は確実に増えます。
今年もお世話になりました。良いお年をお迎えください。
並木陽児![]() 究進塾代表。最近は老化による免疫力の低下を痛感し、これから健康に時間と労力をかけないと・・・と思う今日この頃です。 |




