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【1】総余剰と完全競争市場の前提

これまで「消費者余剰」「生産者余剰」それらの合計である「総余剰」について学んできました。さらに「総余剰が最大化」されるときは「資源配分が効率的」であるということも学びました。現在の想定では買手(消費者)と売手(生産者)が自由に取引を行うことを前提にしています。このような自由な取引を可能にする市場を「完全競争市場」といいます。


【2】完全競争市場の4条件と市場の失敗

「完全競争市場」とは次の4つの条件を満たす場合に成立します。

①売手・買手とも無数に存在する
②製品差別化がない(売手の生産物に差がない=どれも同じ)
③情報の完全性(市場参加者に情報が完全共有されている)
④市場への参入・退出が自由

この4つの条件を1つでも欠くと「完全競争市場」ではなくなり「総余剰」が最大化されません。つまり、その結果「資源配分も非効率」になります。

たとえば、①の条件で売手が1人(1社)の場合は「独占市場」となり、売手が数社の場合は「寡占市場」になります。このように売手が極端に少ない場合は売手に有利な価格が付けられることになり買手である消費者にとってのメリットが小さくなります。つまり「消費者余剰」が小さくなるのです。その他の条件を欠く場合も「資源配分が非効率」となり「総余剰が最大化されない」状況になります。このような状況を「市場の失敗」といいます。詳細な説明は内容が膨大になるので別の機会に少しずつ説明する予定です。


【3】課税の効果と税の分類

次に「課税の効果」について考えてみましょう。課税は政府が市場に介入して税を課す行為ですので売手と買手の自由な取引を妨害することになります。「課税の効果」についてもこれまで学習した「余剰分析」を使って説明ができます。その前に「税の種類」について確認しておきましょう。税については様々な分類方法がありますが「直接税と間接税」「従量税と従価税」について理解しましょう。


【4】直接税と間接税の違い

直接税間接税」の違いについて説明します。この分類は「担税者(租税負担者)」と「納税義務者」の視点からの分類です。両者が同じであれば「直接税」、両者が異なる場合は「間接税」となります。


【5】直接税の具体例(所得税・法人税)


「直接税」の代表例として「所得税」「法人税」があります。「所得税」は個人所得に課税される税です。

個人所得には「労働所得(賃金)」「財産所得(地代・家賃・利子・配当など)」があります。これらは「担税者=所得を稼いだ人」「納税義務者=所得を稼いだ人」という関係になっています。

法人税は法人所得(概ね企業利潤)に課税される税です。法人税も所得税と同様に「担税者=所得を稼いだ法人(企業)」「納税義務者=所得を稼いだ法人(企業)」という関係になっています。

このように「直接税」では「担税者=納税義務者」が成立しています。


【6】間接税の具体例(消費税)


「間接税」の代表例は何といっても「消費税」です。「消費税」は毎日の買物で避けて通れない最も身近な税です。「消費税」の場合は「担税者=買物をした人」「納税義務者=商品を売った企業」というように

「間接税」では「担税者」と「納税義務者」が別人

になっています。

確かに買物をした私たちは税金を払っているけれども納税していないのです。誰が納税しているかというと商品を販売した企業なのです。


【7】従価税従量税の仕組み

「従価税と従量税」について説明しましょう。

先に「従価税」についてみていきます。先ほど説明した「消費税」は価格の何%という形で課税しますので「従価税」に分類されます。

「従価税」は正に「価格に従う税」なのです。

ご存じのように、日本では消費税率10%(食品等は軽減税率8%)です。

続いて「従量税」についてみていきます。

「従量税」は「量に従う税」です。

具体的には数量1単位あたり何円という課税方法をとります。

代表例は「ガソリン税」です。現在の「ガソリン税」は1リットル当たり53.8円です。ガソリン価格に占める割合がかなり大きいです。ガソリンスタンドはガソリン価格に関係なく1リットル当たり53.8円を納税しなければならないのです。昨今の物価高対策としてガソリンの「暫定税額」を廃止することが決まりました。「ガソリン税」53.8円のうち25.1円が「暫定税額」です。「暫定税額」は第一次オイルショック後の税収不足を補うために1974年に設定されました。当初は2年間という暫定的なものとしてスタートしたものが廃止されずになんと50年間も継続していたのです。


【8】まとめと次回予告

以上、税の基本的なことを学びました。次回は従量税を課税した場合の余剰分析をおこないます。従量税間接税であることを忘れないようにしておいてくださいね。

本年も当ブログをご覧いただき、誠にありがとうございました。
どうぞ良いお年をお迎えください。


執筆者プロフィール


S(イニシャル)
1964年生まれ。
公務員試験対策予備校や大学・専門学校など、様々な現場で学生を指導してきました。
得意なのは大学レベルの経済学、経営学、会計学で、究進塾では主に大学授業補習コース(オンライン)を担当。

長年の豊富な指導経験から、「学生のつまづくポイント」を的確に把握しています。
堅苦しい「経済学」という学問を丁寧に解きほぐし、わかりやすく説明します。
とても親しみやすい性格で、質問もしやすいです。
生徒様お一人お一人に合わせた、また基礎を大切にした丁寧な指導がモットーです。


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