インタビュー
INTERVIEW
N様合格インタビュー②
集中力はピアノで培ってきた
N:元々私は音楽をやっていて、専門楽器はピアノなんですけど。ピアノのレッスンは週に1回あって、そのレッスンのために課題曲を練習してレッスンで見てもらって、レッスンが終わったらまた残りの1週間自主練習をしてできるようにします。それをまた次のレッスンで見てもらうっていう習慣が元々あったので、その点が日野先生との授業は馴染みのある感じでした。その習慣が英語にそのまま変換された感じがします。
日野:ピアノを習っていることは知ってましたけれども、練習のサイクルについて聞いたことはなかったです。だから宿題とかもきちんとこなしていく習慣と耐性があったんですね。
並木:大学の受験生でも、何人かピアノやっている方はいました。医学部に現役合格するような方も。そういう練習する習慣だったり、耐性が受験勉強にも活きたっていう話をされていました。
N:英語の授業を受講し始めてから、ピアノで培ってきた習慣みたいなものがリンクできるなと思いました。例えば、この単語帳やイディオムで覚えるものは、ピアノの基礎練習と似ているんだろうなと思って、そういう感覚で取り組んでいました。
授業の時間は殴り書きで、家に帰ってから次の授業までに、全部清書してノートに書き写しました。単語とイディオムは通勤中の電車の中などで確認し、塾に辿り着くまでの電車の中では前回分の授業ノートを見直したり…最後の試験前は、英語を見る回数を増やすようにと言われていたので。月曜日~土曜日までで、1週間に授業ノート3冊をを全部を読み終われるようなサイクルで回していました。試験までに出来たのは約3周ですね。
―「何周か見たか忘れちゃうのでここにチェックを入れてました。背表紙に」繰り返しした勉強の跡が残っています。
N:過去問題や宿題に関しては、曲の練習と同じような感じだろうなと思っていて。ピアノも必ず基礎練習は最初に何十分とか、1時間とか2時間ぐらいあって、その後に曲の練習をまた何時間っていう感じで取り組むんですけど、ペース配分みたいなのもそうやって分けて毎日やってました。
日野:学生さんでも、部活動をしている子もいるので、同じようなことをサイクルでやっているはずなんですけども…何て言うんですかね。体の染み込み方というか、定着度が違いますね。
N:
そうなんですか?(笑)私の場合、月曜から金曜まで日中は仕事をしていたので、その隙間でしか勉強時間がないっていう制約がありました。その制約のおかげで、ぐっと集中して取り組めたのかもしれません。
日野:私も最後の方は、負荷を意図的にかけようと思って、論文の中でもこれはさすがに難しいだろうなっていうものを渡していました。その過程で、きちんと理解が定着できるような形でまとめていらっしゃって、最後に読み直していたっていうのは、驚きましたし、勉強になりましたよ。これから私もこうしようと。
N:せっかくの授業で習ったこと、新しく覚えたことだけは絶対に忘れないようにしようと思ったので、そのためのノートでした。
試験中、日野先生の言葉と浮かんできた情景
N:私は熱中してしまう方なので、こういう単語などを最初に「100%は目指さなくていい」って言ってくれたのはすごく良かったです、私にとっては。
日野:特に社会人の方で多いのは、単語集などを100%をやろうとすることです。人間の頭って100%入れたとしても、ずっと覚えてられるわけないので、どこかで挫折して、モチベーションがガクッと下がって、そっからどうしようかなという状態に陥ることがあるので、言ってよかったなと思います。
N:音楽は100%が普通という基準なので。
日野:それこそ、150%とか200%くらいいかないと、人様からお金をいただいて演奏するわけにいかないということですね。これは私にも言えるんですけども、誰しも100%はやってくれるだろうという期待を持っていらっしゃるので、それを超えないとお金をいただいて教えてられないなと感じます。
日野:一つだけ繰り返しになりますけど、やっぱり楽しんで受けていただけるようになったのは大きかったと思います。N様は初めから楽しかったと仰っていましたが、初めはやっぱり苦しかったと思うんです。それでも授業を受けていて楽しいという感じが伝わってきました。
並木:ピアノの練習で培った可能性もやっぱり大きいと思いますね。
N:でも授業の中で先生がときどきなさる小話なども、私にとっては良い影響がありました。英語の捉え方といいますか。
日野:音楽の話もちょっとしましたね。
N:たまたまジャズの音階の話、オルタードスケールの話が話題に上がったのですが、それが試験に出たんですよ!
日野:いや、実は狙っていました。(笑)
N:さすが日野先生です。(笑)試験でその単語を目にした時に、「オルタードはチェンジと一緒なんだよ」っていうその言葉と情景が浮かんできて。
日野:主にジャズで使う音階なんです、オルタードスケールっていうのは。ドレミファソラシドの全部の音階をずらす音階なんですね。だからオルター。”alter”っていうのは「変える」っていうことなんですね。これは試験に出るなと思っていました。
N:なので”alter”の言い換えは”change”というのが、すぐにパッと書けました。言い換えのパラフレーズの問題に関しては、ほとんど全部先生が言ってた通りのものが出ました。先生の声がそのまま試験で聞こえてくるかのようでした。
並木:それはすごいですね!
日野:ちなみに本番で辞書って使いました?
N:使いませんでした!
日野:使いませんよね。使ってたら逆に時間が取られてしまいますもんね。
N:問題文の文字数は例年の半分ぐらいだったんじゃないかなと思いました。昨年度までは問題文が見開きいっぱいありましたが、今年の問題は片面だけで終わっている感じだったので、文字数自体も少なかったんだと思います。
並木:そんなにわからない単語は無かった?
N:そうですね。わからない単語は無かったです。
日野:それはだって、これだけやれば!
N:いやいやいや。今年の設問は選択問題が多く、半分以上は選択するだけの問題でしたのでそういう意味ではラッキーでした。
日野:確か音楽療法部門で国立音大のドクターコースに合格するってのも、前例があまりないことと仰っていましたよね?
N:音楽大学の大学院は音楽技術が秀でていることはもちろんのこと、論文構成力などの研究能力も求められますので、狭き門と聞いていました。ですので、私のピアノの先生は私の合格にとても喜んでいました。そのくらいすごいことらしいです。
並木:すみません。根本的なところですけれども、音楽療法の専攻でクラシックの方が合格するのが珍しいということでしょうか。
N:いえ。どの専攻でもクラシックはほとんどの人が基礎的に学んでいるのでそれ自体は珍しくはないのですが、音楽大学の博士課程に音楽療法で合格することが前例の少ないことでした。音楽療法を学ぶ先で博士号取得を考える際には、音楽大学以外の一般大学の人間科学、人文科学および美学などの博士課程に進む傾向にあります。もしくは海外の大学を視野に入れると思います。これまでこの大学院は、博士後期課程が設立されてから約20年くらい経っている中で、音楽学、演奏、作曲専攻は博士号をいままで輩出してきてるんですけど、音楽療法専攻の入学者は私が今回第1号です。
並木:それはすごいですね。今年合格されたのは、N様1人だけってことですか。
N:その専攻は1人だけですが、音楽学や演奏や作曲を含めた音楽研究科全体で定員5名が出ている中で、今年は13人受験生がいて、上限の5人だけ取ったそうです。例年だと7名8名ぐらいしか受験されないそうなんですけど。
日野:音楽療法の領域では、今まで該当者なしだったわけですよね。
N:はい、受験者自体もそもそも少なくて…。
並木:なるほど。本当に確かにパイオニアというか、まだあまり日本でそれほど広がってない領域なんですね。
N:学ぶところ自体が少ないのもあると思います。
日野:1回だけちょっと話したことがあるんですけれども、いわゆる自閉症的な発達障がいの方たちにも、その療法として効果があるというか。
N:そうですね。障がい者領域だけじゃなくて認知症の方など、高齢者の領域とかもありますし。
並木:それは今後がとても楽しみですね。
プロに頼る意味
並木:これから大学院を目指す方も大勢いらっしゃいますが、そういう方々に向けてメッセージなどがありましたら、お聞かせいただければと思います。
N:今回の受験を通してとても感じたことですが、人に頼ることをおすすめしたいなと思いました。最初に独学で英語を勉強し始めてはいたんですけれども、やっぱり独学のみでやったらきっと受からなかったと思います。たとえ何年勉強していても、私の場合はやっぱりプロに頼って、その経験などに実際に触れられることが私にはすごく刺激になったので。
N:本当に頼れる人を見つけて、対応するその道のプロを見つけて受験に臨んでもらいたいなとは思いました。音楽にも共通すると思うのですが、やっぱり自分よりも演奏が上手な方と演奏すると、すごく引き上げられる感覚があるんです。これまで自分が出せなかった音とか、そういうものが出せるようになるっていう経験が結構あって。熟練者が持つ「型」のようなものなのか、うまく乗せてもらう、コツをつかむような感覚なんだと思うんですけど、そういうものに触れて、一緒に体験することは、1人では絶対にできないことだと思います。なので、今後試験に臨む方にはこういった体験をしてもらえるといいなと思っています。
並木:ありがとうございます。やっぱり説得力が違いますね。
日野:頼まれた側としては、絶対半年で合格してもらうんだ、という意思は持っていました。授業も楽しくさせていただいて、本当にありがとうございました。
N:いえいえ、こちらこそです。私は、英語に関しては先生に全信頼を置いて、言われたことと習ったことを全部吸収しようとしていました。
並木:大変勉強になるお話をありがとうございました。
N:こちらこそありがとうございました。
合格おめでとうございます!