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今日は医学部受験について書いてみたいと思います。
究進塾を立ち上げる以前は、医学部受験専門の塾にいたこともあり、また究進塾でも毎年数名の医学部受験生を見てきたことから、医学部に合格する方の傾向について、ある程度は把握していると自負しています。
多くの受験生に当てはまるケースとして、本人は受講を開始して1年以内に医学部に合格するつもりだけれど、客観的に学力を見れば、長期戦(2年以上)で臨まない限り、合格の可能性は薄いというケースがあります。そういう方は実際に入試での不合格という現実に直面した後、医学部に何年もチャレンジし続けたり、あるいは途中で断念して他の学部に入学するという方法を取ることになるのですが、その二つは必ずしも排反というわけではなく、同時に行うこともできる、という話をしたいと思います。
まず、医学部に合格する方を分類すると、主に3パターンあります。
①進学校の上位組から現役または1浪で合格する
私が見てきた中では、東大合格者数の上位ランキングに入るような「超進学校」で定期試験の成績上位をキープし続けた人、現役または1浪で合格する人はこのタイプの割合が非常に高いです。超人的な進度の「鉄緑会」について行けた人もここに含めてよいでしょう。実際に1浪以内で合格するには、ほとんどこのパターンしかないと言っても過言ではありません。私がこれまで会った受験生、および保護者様の中には、このパターンには全く該当しないにも関わず、根拠なく、漠然と「1浪すれば医学部に合格できる可能性があるんじゃないか」と考えている方もいましたが、それは現状認識が甘過ぎるというものです。このパターンは非常に限られた、「ペーパーテスト能力」という、ある種の特殊才能を備えた方しか当てはまりません。よくプロ野球に例えていうのですが、野球をやっていたからといって、ドラフトにかかるわけではないですよね?医学部への1浪以内の合格は、野球でいえば、ドラフトにかかるぐらいの稀有な才能に恵まれた人に限られた話なんです。
②進学校以外、もしくは進学校の中位~下位から多浪で合格する
このタイプは、早くて高3の4月から、遅い場合は浪人してから本気で受験勉強をスタートしたタイプで、その開始時期の遅れの影響で、1浪以内で合格することは少ないです。こういう人は医学部専門予備校、いわゆる「医専」に通って浪人するというのが王道パターンです。もっとも、医専は年間費用が300万~1000万円かかるので、医専に通うという選択ができる時点で、国公立大学医学部専願ではなく、私立医学部も視野に入れて、というよりむしろ私大医学部を専願か、メインで受験することとなります。
一方で、国公立大学医学部に絞って受験する人もいます。このような人は費用を抑えるべく、宅浪か、もしくは予備校には行かずに有料自習室を使って独学で勉強するという方法を取ります。実際にこの方法で合格した強者も知っていますが、人一倍意思が強く、セルフコントロールも上手で自分を客観視できるタイプで、万人にお勧めできる方法ではありません。
中間を取って、比較的安価な大手予備校に在籍し、必要な授業だけ受けて、自習室を利用する方もいれば、当塾のような個別指導塾で、サポートが必要な科目に絞って受講されるという方もいます。こちらの方が費用は多少かかりますが、完全な独学に比べて、一定のコミュニケーションが確保されることで、メンタル面を安定させるという点では、有効だと思います。
③医学部以外の大学に進学する
意外と多いのが、このパターンです。この中でもさらに分類することができます。
-1.休学して医学部受験に専念する。
このパターンは、居場所を確保することでメンタル面が安定するという点では意味があると思いますが、実質的には②とあまり変わりません。ただ、このルートを通って合格する人も一定数います。
-2.大学に通いながら受験勉強を続け、チャレンジの機会を伺う
このパターンは、私が塾講師の仕事をするまでは出会ったことがありませんでしたが、この仕事をするようになって、意外といるもんだなと発見がありました。と言っても、割合としては少ないのだと思いますが、インパクトがあったので、私の中では鮮明に記憶しています。
具体的なケースを二つ紹介しましょう。
・医専で3浪していたA君。医師である両親のプレッシャーがきつく、受験直前の11月に、モチベーションがどん底まで落ちて、その年の医学部受験を断念することを決めました。
その年は東京農大に合格し、進学しました。その際は、プレッシャーがきつかった両親も諦めて、本人の意思を尊重してくれました。その後、A君はサークルやアルバイトなど、様々な経験をし、充実した大学生活を送りました。ですが、2年生に上がってまもなくの4月に「やっぱり医学部に行きたい」と思い直し、今度は自力で受験勉強を始めました。その結果、なんと9カ月間の勉強で私大医学部に合格しました。
・現役で医学部を目指していたB君はご家庭の予算の都合上、私大は難しく、国公立大学しか選択肢がありませんでした。このため、センター試験の結果で医学部を断念し、千葉大学の工学部に進学しました。そこで4年間を過ごしました。彼は塾講師や家庭教師のアルバイトを続け、周りが就職活動や大学院入試をし始める3年から、医学部受験に向けて本腰を入れました。その結果、4年生の1月に受験し、地方国公立大学医学部に合格しました。
A君のパターンは、大学生活で視野が広がったこと、さらに親からのプレッシャーを受けて「絶対に合格しなければいけない」という脅迫観念に苛まれた状況から脱して、自分の意思で受験勉強に取り組んだのが大きいと思います。
B君のパターンでは、教えるアルバイトを続けていく中で、学力を上げて行ったことが大きいでしょう。受験生はともするとインプット一辺倒の勉強をしがちなのですが、記憶の定着には実はアウトプットが大切で、中でも人に教えるというのは非常に有効なアウトプットと言われています。人に教えて行く過程で、理解してもらえない生徒に何とか理解してもらおうと言葉・表現を選ぶ過程、また、鋭い質問をもらって、それにこたえる中で、理解が深まって行くわけです。
この③-2のパターンは最初から除外している方が多いのですが、私はとても効果的な方法だと思います。ちなみに、歯学部、薬学部は医療系国家資格を取得する学部という点で医学部に近いので、選択肢の上位に入れる方が多いのですが、メリット・デメリット両方あります。メリットから言いますと、確かに内容は医学部と近い内容を学ぶという点では医学部受験、および進学してからのことを考えても無駄ではありません。一方で、デメリットとしては、これらの学部は進級基準が厳しいので、進級に向けて、多くの時間やエネルギーを割く必要があります。実際のところ、アルバイトに割く時間の確保は難しいです。まずは卒業して、歯科医師なり薬剤師の国家資格を取ることを最優先に考えるのであればそれでもよいのですが、「教えるアルバイトをしながら医学部受験のチャンスを狙う」を最優先にするとしたら、得策ではありません。そんな余力、余剰時間が残らないのが普通です。むしろ、医療系でない学部の方が、そのようなチャンスがあります。
医学部合格者には、以上の3パターンが多いのですが、番外編として、次のパターンも紹介しておきます。
④大学卒業後も受験の機会を狙う
大学を卒業してからも、医学部受験の機会を狙うパターンです。このパターンでは、就職が一つのネックとなります。というのは、本気で就職活動をするとなると、相当なエネルギーを注がなければならないですし、就職してからも、少なくとも1~2年間は仕事最優先で考えなければならないからです。
ですが、医学部受験を最優先で人生プランを考えるという場合には、別の方法があります。
それは、塾講師や家庭教師などの仕事を選ぶという方法です。こういった職業は、様々な働き方がありますが、その中ではフリーランス的な働き方ができるものが多いです。
以前、医学部受験専門塾で講師をしていたときに同僚の講師が国公立大学医学部に合格してそのまま進学したというケースもありましたし、当塾で講師登録していた方でも、2名の方が、やはり国公立大学医学部に合格しました。
この方法は、教える仕事をする中で、学力はもちろん、人間的にもステップアップしていけるという点に強みがあります。
話は少し逸れますが、これまで会ってきた多浪生(=3浪以上)の中で、合格した方とそうでない方の違いは、「自分の器を広げるための工夫をしてきたか」です。それまでと同じ生活サイクルや同じ環境で自分の器を広げるということは不可能ではないものの、至難の業です。
3浪までチャレンジしている方の多くは、ある程度の分量はこなしてきているはずで、その中で知らず知らずのうちに自分の癖や弱点がそのまま放置されている結果、不合格という結果に至っているわけなので、単純に「努力の量が足りませんでした」という話ではありません。努力の量よりもむしろ質こそ改善するべきなのです。
ですが、これは容易ではありません。多くの方はこれまで解いた問題集をもう1周するとか、別の問題集を解くといった方向性に走りがちなのですが、これでは質的改善は測れません。むしろ、間違えた問題の原因分析をしたり、入試の得点開示から、どの科目で失点していて、それはなぜなのか、について答を探すという、地味で地道な作業が必要となります。
これは自分ととことん向き合う作業なので、たとえ個別指導の講師であっても立ち入れないこともあります。私の経験上、生徒さんがよほどオープンな性格で、講師に全て打ち明けてくれて、講師がしたアドバイスを素直に実行するようなタイプで、最高レベルの信頼関係が実現しない限り、難しいと言えるかもしれません。
では、2浪までの勉強法や考え方を、環境を変えずに変革させられる方がどれだけいるでしょうか?私が知っている限りは、非常に稀です。
ですが、環境を変えることで、変革が起こるということはあり得ます。
これは、生活スタイルが変わることで、ものの見方が一気に変わり、「パラダイムシフト」が起こるということでしょう。
仮に大学生活が始まれば、知り合いが変わりますし、大学の授業を受ければ、医学部入試に直結するわけではないけれど学問としての知識や考え方に触れることによって教養が深まり、視点や考え方に変化が訪れます。また、レポートを提出するに当たって文章を書く、実験を行う、など様々な知的刺激を受けることとなります。さらに、塾講師や家庭教師のアルバイトをすれば、受験に直結する知識も深まります。部活やサークル活動に取り組めば、ストレスも発散されるでしょうし、運動系であれば集中力や体力も付くでしょう。新たな友人ができれば様々な話をして、価値観にも変化が訪れるかもしれません。
長くなりましたが、結論を言います。
私がおすすめする方法としては、2浪しても不合格であれば、一度、入れる大学に進学する。そして、大学生活を送り、視野を広げ、教えるアルバイトを継続しながら、力を蓄えて、医学部受験の再チャレンジのタイミングを見計らう。
本当に自分の人生をかけた目標であれば、そのくらい長期的な視点で考えるべきしょう。
もちろん、その過程で、様々な人や学問に出会い、そこで考え方が変わることもあるでしょう。それはそれでよいと思います。
ただ、「石の上にも三年」という諺がありますが、それを体現するような、直線的に努力する方法は、私はおすすめしません。それはデメリットが大きいからです。まず一つ目には、同級生が大学生活を楽しんでいたり、場合によって(5浪以上となると)就職して、人生のステージを一歩ずつ歩んでいるのと、留まっている自分を比較して、メンタル的に追い込まれて行く可能性があるという点、また、二つ目には、毎年環境を変えるには、予備校を変える必要があり、出費が嵩んでいく、一方で費用を抑えるには環境を変えにくい点です。実際に、5浪以上したあげく、袋小路に陥ってしまって音信不通になってしまった生徒さんもこれまで何人も見てきました。
そういった事例を踏まえて、上記の方法をおすすめしたいと思います。
このブログを参考にして、医学部合格という目標を達成する方が出てくることを願ってやみません。