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こんにちは。究進塾 編集部です。今回の解説は、久松先生の「線形代数 第4回」から、ベクトル空間の基底について解説していきます。

久松先生の動画解説
はじめに:当記事は、動画で解説をしている内容をご紹介していますが、音声を流せる環境にある方はぜひ動画をご覧いただき、久松先生の授業の雰囲気も一緒に掴んでいただければと思います。
動画紹介
【究進塾】大学補習チャンネル
【大学数学】線形代数 第4回 -部分ベクトル空間の基底-(所要時間: 40分04秒)

講師:久松真人

東京工業大学卒業。東京工業大学大学院数学研究科博士課程修了。数学に特化した講師です。大学受験はもちろん、大学授業補習、大学院入試のサポートにも熟練しています。また、大学の情報系科目のサポートも経験があります。穏やかな性格と柔らかい雰囲気、丁寧な指導、そして数学愛が溢れる、おすすめ講師です。☆大学授業補習の詳細はこちら

ベクトル空間の基底

まず始めに「ベクトル空間の基底とは何か?」という話をします。

「ベクトル空間の基底の定義」は、次のように定義されます。

定義1(ベクトル空間の基底)

Vをベクトル空間とする。

v\(_1\)、v\(_2\)…V\(_n\)V\(∈\)Vが、

i) v\(_1\)、v\(_2\)…v\(_n\)は一次独立である。すなわち、\(c_1\) v\(_1 + c_2\) v\(_2 +\) …\( c_n\) v\(_n = 0\) ならば、\(c_1 = c_2 =\) …\(c_n = 0\)が成り立つ
ii) 任意のv\(∈\)Vは、v\(_1\)、v\(_2\) … V\(_n\)を用いて表すことができる
の2条件を満たすとき、v\(_1\)、v\(_2\) … v\(_n\)は、Vの基底である、という。

補足
i) 「一次独立」…この一次独立という言葉の意味は、「v\(_1\)、v\(_2\)、… v\(_n\) 」の\(n\)個のベクトルを定数倍(スカラー倍)して、「何々倍のv\(_1\)、何々倍のv\(_2\)、…何々倍のv\(_n\)」というのが「\(=0\)」となったとします。とするならば、\(c_1\)、\(c_2\) … といった係数が全て0でないといけない、というのを満たす、これを「一次独立」といいます。

条件の1つ目として、まずこれを満たします。

もう1つの条件として、「任意の条件、v\(_1\)〜v\(_n\)を用いて表すことができる」というのは、V\(=2\)倍のv\(_1+5\)倍のv\(_2+3\)倍のv\(_3\)…\(+\)何々倍のv\(_n\)というふうな形で必ず書くことができる、ということを意味します。

この2条件を満たすとき、v\(_1\)、v\(_2\) …v\(_n\)というのは、vの基底である、といいます。

この2条件の意味というのは、色々慣れていくうちに何となく身につけていってもらいたいと思いますが、大まかに解説しておきます。

i) の方が、”余分なものがいない”という感じです。一次独立\(c_1\)v\(_1+c_2\)v\(_2+\)… \(C_2\)V\(_n\)で\(0\)を作ろうとしたとき、これら係数は全て\(0\)でなければいけないわけですが、このv\(_1\)〜v\(_n\)の間に何か余分なものが、例えば他のものを使って表すことができるような、”実は必要のないもの”が紛れ込んでいると、この条件が成り立たなくなります。

なので、「一次独立である」という条件は、雰囲気としては「余分なものが入り込んでいない」というような意味になります。()の条件は、そういうわけで「余計なものがいない」という条件です。

ii) の方の条件に入っている「ベクトル空間に入っているすべてのベクトル、これらを使って表せる」となっています。で、ベクトル空間Vを表すために足りてないということはない、ということです。「不足がない」という方のことを意味しています。

i)  が、“余分なものが入っていない”
ii) が、“不足がない”

i) と ii)をあわせて、ちょうど過不足なくベクトル空間Vを書くことができるというようなイメージになっています。

ちなみに、高校時代に一次独立を数Ⅱなどで習った人がいるかもしれませんが、そこでは一次独立というのをゼロベクトルではなくて「お互いに平行ではない」のような表現で習っていたかもしれません。(平面の場合だと「平行じゃない」などのように習っていると思います。3次元空間の場合も、3つベクトルがあって「お互いゼロでなく、お互い平行ではなく、その3つでもって同じ平面上に乗っていない」のような表現であったと思います。)

ですが本来一次独立というのは、意味合い・定義は説明した通りになっています。この判定条件は結構重要なので、しっかり覚えておいてください。

実例

では実際に、簡単に例を見て、より理解できるようにしていきましょう。

💡学習のススメ
今回に限らず「よくわからない」という定義に出会った時は、とにかく例に当たってみることをおすすめします。この定義の条件を満たすようなものについて、具体的に考えてみるということをすると、理解の助けになると思います。

例)

行列
\(\left(\begin{array}{crl}4\\-1\\1\end{array}\right)\)

①\(e_1 = \left(\begin{array}{crl}1\\0\\0\end{array}\right), e_2= \left(\begin{array}{crl}0\\1\\0\end{array}\right), e_3= \left(\begin{array}{crl}0\\0\\1\end{array}\right)\)は3次元実ベクトル空間\(R^3\)の基底である。

②v\(_1=\left(\begin{array}{crl}1\\2\\0\end{array}\right)\), v\(_2=\left(\begin{array}{crl}1\\1\\3\end{array}\right)\), v\(_3=\left(\begin{array}{crl}0\\1\\1\end{array}\right)\) も3次元実ベクトル空間\(R^3\)の基底である。

ここに、3次元実空間の、普通によく使う基本ベクトルみたいなもので、\(x\)方向の単位ベクトル、\(y\)方向の単位ベクトル、\(z\)方向の単位ベクトル、これを3つ集めてきたもの \(e_1\)、\(e_2\)、\(e_3\)というのは、3次元実ベクトルが\(R^3\)の基底になる、ということが知られています。この例だと、上の2条件を満たす、ということは何となくわかるのではないかと思います。

例えば例①の方、\(\left(\begin{array}{crl}2\\3\\1\end{array}\right)\)という条件、これをii)の条件から見てみます。

勝手な3次元空間のベクトルで、\(\left(\begin{array}{crl}2\\3\\1\end{array}\right)\)というものがあったとします。この\(e_1、e_2、e_3\)を使って表そうとすると、次のようになるはずです。

\(\left(\begin{array}{crl}2\\3\\1\end{array}\right)=2e_1+3e_2+1e_3\)
(\(1e_3\)は、あえて“1倍の”を表記しておきます。)

\(\left(\begin{array}{crl}1\\0\\0\end{array}\right)\)となっているから、\(2\)倍ということで\(\left(\begin{array}{crl}2\\0\\0\end{array}\right)\)というベクトルになるはずです。同じように、\(3\)倍の\(e_2\)も\(\left(\begin{array}{crl}0\\3\\0\end{array}\right)\)となって\(1e_3\)は\(\left(\begin{array}{crl}0\\0\\1\end{array}\right)\)となり、これらを足すと\(\left(\begin{array}{crl}2\\3\\1\end{array}\right)\)となる、ということになります。数は\(\left(\begin{array}{crl}2\\3\\1\end{array}\right)\)でなくても同じようなことができるので、すべてのベクトルはこの3個の\(e_1、e_2、e_3\)を使って表すことができる、ということがわかります。

ついでに、i) の方も見てみます。\(c_1e_1 + c_2e_2 + c_3e_3\)というのを考えてみました。

これが\(0\)ベクトルになったとします。もし条件 i) の、\(c_1\)v\(_1 + c_2\)v\(_2 +\) … \(+ c_n\)v\(_n\)が\(0\)ベクトルになったとすると、その時一次独立だと言えるためには、係数が全て\(0\)でなければいけない、ということが言える必要がありますが、これも計算すると次のようになるはずで、

\(\left(\begin{array}{crl}c_1\\c_2\\c_3\end{array}\right)=c_1e_1 + c_2e_2 + c_3e_3 = \left(\begin{array}{crl}0\\0\\0\end{array}\right)\)

\(\left(\begin{array}{crl}c_1\\c_2\\c_3\end{array}\right)\)というベクトルになるはずなので、それが\(\left(\begin{array}{crl}0\\0\\0\end{array}\right)\)ってどういうことかというと、\(c_1\)も\(c_2\)も\(c_3\)も、全部\(0\)ということになります。

よってこの\(e_1\), \(e_2\), \(e_3\) というのは\(R^3\)の基底だよ、ということが言えて、条件の i) と ii) を満たしているということになるわけです。これが一番すぐに思いつく、有名な3次元空間の基底です。

それとは別に、例②のようなものを取ってみることもできます。

\(\left(\begin{array}{crl}1\\2\\0\end{array}\right)\)というベクトル、\(\left(\begin{array}{crl}1\\1\\3\end{array}\right)\)というベクトル、\(\left(\begin{array}{crl}0\\1\\1\end{array}\right)\)というベクトル、この3つ、v_1, v_2, v_3 というのを持ってきてみました。

とやると、これも実は「3次元実ベクトル空間\(R^3\)の基底である」と証明できたりします。次で実際に証明してみましょう。

 

基底になることの証明

定義の条件 i) 、ii) を確かめる

例)v\(_1 = \left(\begin{array}{crl}1\\2\\0\end{array}\right)\), v\(_2 = \left(\begin{array}{crl}1\\1\\3\end{array}\right)\), v\(_3 = \left(\begin{array}{crl}0\\1\\1\end{array}\right)\)

が3次元実ベクトル空間\(R^3\)の基底であること。

で、「“基底だよ”ということを示します」というのは、先述の通り定義が2つあります。この2つの条件を満たすとき、基底である定義する、と言っていました。

数学の「定義」というのは、「“これを満たしてさえすればこうだよ”と考えることにしましょう」という感じですので、とにかく「こうなると基底になるよ」ということを言いたかったら、定義を満たしていることをちゃんとチェックしてあげてください。

では、v\(_1\)、v\(_2\)、v\(_3\)に対して、本当に i) と ii) の条件が成り立つかというのをチェックしてみましょう。

1, 2, 3の時は行列の形が簡単だったせいで、計算をそんなにせずにすぐわかる感じでしたが、今回の場合は、多少連立方程式などを解く必要が出てくるかな、という感じになります。

では、証明に移ります。

証明

i) について

\(c_1\)v\(_1 + c_2\)v\(_2 +c_3\)v\(_3 = 0\)となったとする。このとき、

\(c_1 \left(\begin{array}{crl}1\\2\\0\end{array}\right)+ c_2 \left(\begin{array}{crl}1\\1\\3\end{array}\right)+ c_3 \left(\begin{array}{crl}0\\1\\1\end{array}\right) = \left(\begin{array}{crl}c_1 + c_2\\2c_1+c_2 + c_3\\3c_2 + c_3\end{array}\right) = \left(\begin{array}{crl}0\\0\\0\end{array}\right)\)

となる。すなわち

\(\left\{\begin{array}{l} c_1 + c_2    = 0\\ 2c_1 + c_2 + c_3 = 0\\    3c_2 + c_3 = 0\end{array}\right.\)

この連立方程式を解くと、\(c_1 = c_2 = c_3 = 0\)が得られる。

補足
\(c_3\)を消去するために、とりあえず名前を付けます。
\(\left\{\begin{array}{l} c_1 + c_2    = 0 …①\\ 2c_1 + c_2 + c_3 = 0 …②\\    3c_2 + c_3 = 0 …③\end{array}\right.\)

式をこんなふうにしておきます。\(c_3\)を消去するために、次のようなものを計算してみましょう。② – ③というのを考えると、ちょうど\(c_3\)が消えるはずです。どうなるかというと、「\(2c_1-2c_2\)」、これが左辺です。右辺は0となります。というわけで、\(2c_1-2c_2=0\)という式が出てきました。これで、\(c_1\)と\(c_2\)だけの式が得られました。

もう1つ、ここに1番目の式があるので、係数を揃えるために「①\(×2\)」とすると、次のようになります。

①\(×2\) ⇒ \(2C_1 + 2C_2 = 0\)

右辺は\(0\)ですから、\(2\)倍しても\(0\)です。このようになりますが、この\(2\)つを足し算してみましょう。

\(\begin{array}{r}
2C_1 – 2C_2 = 0
\\[-3pt]
\underline{\phantom{0}+  2C_1 + 2C_2 = 0\phantom{0}}
\\[-3pt]
4C_1 = 0
\end{array}\)

このようになります。というわけで4倍の\(C_1\)が\(0\)、つまるところ\(C_1\)が\(0\)ということがわかります。

②-③の式ですが「2倍の\(C_1\) – 2倍の\(C_2\) = \(0\)」と言っているので、両方\(2\)で割って移行すると「\(C_1\)と\(C_2\)が一緒でないといけないよ」ということなので、\(C_1\)が\(0\)だと\(C_2\)も\(0\)だということがわかります。\(C_1\)も\(C_2\)も\(0\)なので、式に当てはめていくと\(C_3\)も0だということが③の式から分かります。

というわけで、全部\(0\)じゃなきゃいけないということがわかりましたので、つまり i) の条件、基底であるための最初の方の条件を満たしているよ、ということになるわけです。

ここまでで、条件 i) の証明はおしまい、ということになります。

次に、条件 ii) について、今度は同じような感じで「〇〇倍の\(V_1 +\) 〇〇倍の\(V_2+\) 〇〇倍の\(V_3\)で、勝手なベクトルが書ける」となっていないといけません。

ii) について

i) と同様に

\(\left\{\begin{array}{l} C_1 + C_2    = a\\ 2C_1 + C_2 + C_3 =b\\    3C_2 + C_3 =c\end{array}\right.\) 

という連立方程式が解けることを示せば良い。これは\(C_1 = \frac{2a+b-c}{4}, C_2=\frac{2a-b+c}{4}, C_3=\frac{-6a+3b+c}{4}\) という解を持つ。

\(C_1 V_1 + C_2 V_2 + C_3 V_3 = \left(\begin{array}{crl}a\\b\\c\end{array}\right)\)

というので、勝手な\(a, b, c\) に対し、こういうベクトルを書けるようになっていてほしい、ということです。この\(a, b, c\) は勝手に選んでいいので、これが成り立つような\(C_1, C_2, C_3\)があるよ、ということが言えれば、任意のベクトルをこいつらで書けるよ、ということになり、条件 ii) の証明が終わります。

これを成分で書き下した様子が次のようになっています。

\(\left\{\begin{array}{l} C_1 +  C_2   = a\\2C_1 + C_2 + C_3 = b\\  3C_2 + C_3 = c\end{array}\right.\) 

これについては、条件 i) の方と一緒ですので、ここの部分(左辺)は条件 i) の証明と変わってないわけです。右辺だけ、条件 i) では0でしたが、\(a, b, c\)となります。

というわけで、この連立方程式も頑張って解いてみましょう。なのですけれども、これも全く同じような感じで、同じことをやればいいです。

\(\left\{\begin{array}{l} C_1 + C_2    = a …①\\ 2C_1 + C_2 + C_3 =b …②\\    3C_2 + C_3 =c …③\end{array}\right.\) 

このように①、②、③と名前を付けると、やっぱり「とりあえず\(C_3\)をどかしましょう」ということで、②-③というのを考えてみます。条件 i) では右辺が0でしたが、今度は0でないので、

②\(-\)③⇒\(2C_1 – 2C_2 = b-c\)
①\(×2\)⇒\(2C_1 + 2C_2 =2a\)

のようになります。こうすると、さっきと同じ感じで足し算してみると

\(\begin{array}{r}
2C_1 – 2C_2 = b-c
\\[-3pt]
\underline{\phantom{0}2C_1 + 2C_2 = 2a\phantom{0}}
\\[-3pt]
4C_1 = 2a + b – c
\end{array}\)

となります。なので、\(C_1\)というのは両辺を4で割って\(\frac{2a + b – c}{4}\)というふうになります。

ちなみに、これを引き算(下の式 – 上の式)すると、今度は\(C_1\)の方が消えて、\(4C_2\)というのが残るようになるはずです。そうやって計算してあげると、\(\frac{2a – b + c}{4}\)というのが、\(C_2\)ってなるよ、というのがわかります。あとは、\(C_3\)というのが、移行すると\(C – 3C_2\)になるので、それを計算してあげると\(C_3\)は\(\frac{-ba + 3b +c}{4}\)となり、\(a\)、\(b\)、\(c\)が何であってもこの方程式って、\(C_1\)、\(C_2\)、\(C_3\)をこのようにしてあげればこれが解になるということがわかります。つまり、この勝手な\(a, b, c\)に対して、っていうのをこのように調節してあげれば、\(\left(\begin{array}{crl}a\\b\\c\end{array}\right)\)というベクトルって、v\(_1\)、v\(_2\)、v\(_3\)でもって書けるよ、ということになるわけです。

なので、条件 ii) も満たすよ、ということになります。というわけで、v\(_1\)、v\(_2\)、v\(_3\)も\(R_3\)の基底になっているとわかる、という感じになっております。

さて、先程の説明で「同じような計算を2回繰り返しているな」と思った方もいらっしゃるんじゃないかと思います。

連立方程式を行列で表すと

\(
\left(
\begin{array}{crl}
1 & 1 & 0 \\
2 & 1 & 1\\
0 & 3 & 1
\end{array}
\right)\)\(
\left(
\begin{array}{crl}
C_1\\
C_2\\
C_3
\end{array}
\right)\)=\(
\left(
\begin{array}{crl}
0\\
0\\
0
\end{array}
\right)\)

\(
\left(
\begin{array}{crl}
1 & 1 & 0 \\
2 & 1 & 1\\
0 & 3 & 1
\end{array}
\right)\)\(
\left(
\begin{array}{crl}
C_1\\
C_2\\
C_3
\end{array}
\right)\)=\(
\left(
\begin{array}{crl}
a\\
b\\
c
\end{array}
\right)\)

v\(_1 =\) \(
\left(
\begin{array}{crl}
1\\
2\\
0
\end{array}
\right)\),
v\(_2 =\) \(
\left(
\begin{array}{crl}
1\\
1\\
3
\end{array}
\right)\),
v\(_3 =\) \(
\left(
\begin{array}{crl}
0\\
1\\
1
\end{array}
\right)\) なので、ここに現れる行列:
\(
\left(
\begin{array}{crl}
1 & 1 & 0 \\
2 & 1 & 1\\
0 & 3 & 1
\end{array}
\right)\)

は、ベクトルv\(_1\)、v\(_2\)、v\(_3\)を並べて出来たものである。

枠の中の式を見ると、
・条件 i) の式が一番上の行列
・条件 ii) の式が二番目の行列

で、「連立方程式を使って行列を表すことが出来るよ」とか「行列で書いておくと結構簡単になりますよ」みたいなのがあったわけなんですが、先程解こうとしてた行列式っていうのを、行列を使って書いてみるとこんな感じになりますよ、と。

で、この2つって、右辺が「0, 0, 0」なのか「a, b, c」なのか、というだけの違いで、ほとんど左辺側はもう全く一緒なわけです。

さて、そして一番上の様になっている方程式が答えを持つかどうか、という話なんですが、まじめにやろうとすると”拡大係数行列とか何とかで、掃き出し法が云たら”となるんですけれど、簡単なお話として、もし左辺の\(
\left(
\begin{array}{crl}
1& 1 & 0 \\
2 & 1 & 1\\
0 & 3 & 1
\end{array}
\right)\)の行列が逆行列を持ったとすると、左から両辺に逆行列を掛けると\(
\left(
\begin{array}{crl}
C_1\\
C_2\\
C_3
\end{array}
\right)\)=\(
\left(
\begin{array}{crl}
0\\
0\\
0
\end{array}
\right)\)というので、いきなり答えが出せるわけです。

というわけで、もし\(\left(
\begin{array}{crl}
1& 1 & 0 \\
2 & 1 & 1\\
0 & 3 & 1
\end{array}
\right)\)の行列を\(P\)と表したとすると、その答え

⇒\(\left(\begin{array}{crl}
C_1\\
C_2\\
C_3
\end{array}
\right)\)=\(P^{-1}\)\(
\left(
\begin{array}{crl}
0\\
0\\
0
\end{array}
\right)\)

⇒\(\left(
\begin{array}{crl}
C_1\\
C_2\\
C_3
\end{array}
\right)\)=\(P^{-1}\)\(
\left(
\begin{array}{crl}
a\\
b\\
c
\end{array}
\right)\)

もし\(P^{-1}\)というのがあるならば、なんですけれども、こんなふうに表すことが出来るわけです。ちなみに、これ\(\left(\begin{array}{crl}0\\0\\0\end{array}\right)\)となってるから、何を掛けてもここの部分は「0, 0, 0」ということですので、これもし「\(P\)が逆行列を持つよ」となったとすると、

\(
\left(
\begin{array}{crl}
1 & 1 & 0 \\
2 & 1 & 1\\
0 & 3 & 1
\end{array}
\right)\)\(
\left(
\begin{array}{crl}
C_1\\
C_2\\
C_3
\end{array}
\right)\)=\(
\left(
\begin{array}{crl}
0\\
0\\
0
\end{array}
\right)\)は「答えが0しかないよ」ということがわかるんです。一次独立だということです。

さらに ii) の方、逆行列を持つとしたらば、\(\left(\begin{array}{crl}C_1\\C_2\\C_3\end{array}\right)\)というのが\(P^{-1}\)の逆行列✕\(\left(\begin{array}{crl}a\\b\\c\end{array}\right)\)というので答えがある、ということがわかるわけです。

で、ここで係数として表れた行列\(\left(\begin{array}{crl}1 & 1 & 0 \\2 & 1 & 1\\0 & 3 & 1\end{array}\right)\)なんですけれども、よく見てみるとv\(_1 =\)\(\left(\begin{array}{crl}1\\2\\0\end{array}\right)\)、v\(_2 =\) \(\left(\begin{array}{crl}1\\1\\3\end{array}\right)\)、v\(_3 =\)\(\left(\begin{array}{crl}0\\1\\1\end{array}\right)\)というベクトルでした。で、ここに出ている係数を見てみると、ちょうどこいつらを横に並べただけになっているんですね。

\(
\left(
\begin{array}{crl}
1 & 1 & 0 \\
2 & 1 & 1\\
0 & 3 & 1
\end{array}
\right)\)
v\(_1=\)\(\left(\begin{array}{crl}1\\2\\0\end{array}\right)\)、v\(_2 =\) \(\left(\begin{array}{crl}1\\1\\3\end{array}\right)\)、v\(_3 =\)\(\left(\begin{array}{crl}0\\1\\1\end{array}\right)\)

で、今さっき、連立方程式の左の部分が逆行列を持ってさえいれば「基底である」という話をしたんですが、これ3✕3行列になる時以外でも一般に実は次のようなことが成り立つ、というのが知られております。

定理2(基底になるための条件)

\(n\)次元実ベクトル空間\(R^⁠n\)乗において、\(n\)個のベクトルv\(_1\), v\(_2\) …, v\(_n ∈ R^⁠n\)乗が基底になるための必要十分条件は、v\(_i\)を並べて作った行列\(P\):=(v\(_1\), v\(_2\), …, v\(_n\))が逆行列を持つことである。

逆行列を持つこと、すなわち正則行列である、となることが必要十分である、というふうなのが知られております。

このことを知っていると、ちょっとめんどくさい連立方程式しか解かないで済むかもしれません。

この定理を知っていれば、v\(_1 =\) \(\left(\begin{array}{crl}1\\2\\0\end{array}\right)\)、v\(_2 =\) \(\left(\begin{array}{crl}1\\1\\3\end{array}\right)\)、v\(_3 =\) \(\left(\begin{array}{crl}0\\1\\1\end{array}\right)\)を並べて作った\(\left(\begin{array}{crl}1 & 1 & 0\\2 & 1 & 1\\0 & 3 & 1\end{array}\right)\)の行列に対して逆行列を持つかどうか、という話だと、行列式の計算をしてあげればいいです。

行列式を計算して0じゃなければ逆行列を持つよ、ということになるので、それで基底になるかならないかというのをすぐ判断することができます。

3✕3くらいまでだったら行列式を計算するのはそんなに難しくないですけど、サイズが大きいときはちょっとしんどかったりするんですが、そこは掃き出し法とか何かで頑張ってやってください、というところです。

基底に対する成分表示

では次に、基底を使った成分表示というお話をしておこうと思います。

ベクトルと成分表示というのは、高校の時に習ったんじゃないかと思うんですが、大学に入ると、そもそもベクトル空間というのの意味がやたら拡張されて、今までベクトルだと思ってなかったようなやつがベクトル扱いされたりして「何じゃこれ」となったりするんですけども、そういう時でも基底を選んであげると、大して変わらない話になりますよ、というようになったりするんですね。

で、そのために、ある基底を選んだとき、その基底に対する成分表示というのを、ちゃんと理解しておく必要があるかなというわけで、ここでちょっと紹介しておきます。

これも定義から入りましょう。

定義3(成分表示)

v\(_1\), v\(_2\), … v\(_n ∈ V\) を\(V\)の基底とする。このとき任意のv\( ∈ V\)に対して、v\( = a_1\)v\(_1 + a_2\)v\(_2\)  …, \(+ a_n\)v\(_n\) を満たす \(a_1, a_2, …, a_n\)が存在する。

v\( = a_1\)v\(_1 + a_2\)v\(_2 +\) … \(+ a_n\)v\(_n =\) [v\(_1\), v\(_2\), …, v\(_n\)]\(\left(\begin{array}{crl}a_1\\a_2\\:\\a_n\end{array}\right)\)

このとき、\(\left(\begin{array}{crl}a_1\\a_2\\:\\a_n\end{array}\right)\)を、基底v\(_1\), v\(_2\), …v\(_n\)に関するvの成分という。

ベクトル空間の基底を取ってきたとして、任意のベクトル空間\(V\)に属するベクトル\(V\)に対して、\(V\)っていうのは基底だから、v\(_1\), v\(_2\), …, v\(_n\)を使って書けるわけです。

というわけで、書いたときに

\(a_1\)v\(_1 + a_2\)v\(_2 + …+ a_n\)v\(_n\)というふうなのを満たす実数 \(a_1, a_2, … a_n\)っていうのが存在します。

「これ基底だから、必ず表せるよ」というふうになってるので、こんなのが存在します。

さて、そのときにv\( = a_1\)v\(_1 + a_2\)v\(_2 +\) … \(+ a_n\)v\(_n =\) [v\(_1\), v\(_2\), …, v\(_n\)]\(\left(\begin{array}{crl}a_1\\a_2\\:\\a_n\end{array}\right)\)と書けるんですけど、本当は、ベクトルで数字ではないんですが [v\(_1\), v\(_2\), …, v\(_n\)]というのと、\(\left(\begin{array}{crl}a_1\\a_2\\:\\a_n\end{array}\right)\)というもの、つまりベクトルを横に並べたものと、実数を縦に並べたものを、普通に「行列の掛け算だ」と思ってかけたような形になっています。

どういうことかというと、 [v\(_1\), v\(_2\), …, v\(_n\)]を「横のベクトル」みたいに考えて、\(\left(\begin{array}{crl}a_1\\a_2\\:\\a_n\end{array}\right)\)を「縦のベクトル」みたいに考えたとき、 [v\(_1\), v\(_2\), …, v\(_n\)]\(×\)\(\left(\begin{array}{crl}a_1\\a_2\\:\\a_n\end{array}\right)\)のように行列式として積を取ります。

\(a_1×\)v\(_1\)
\(a_2×\)v\(_2\)
\(a_n×\)v\(_n\)

このように掛けます。そうすると、式の前半部分v\( = a_1\)v\(_1 + a_2\)v\(_2 +\) … \(+ a_n\)v\(_n =\) になります。なので、しばしばこういう表し方をします。

で、このようなふうにしたとき、このVというのを書いたときに、[v\(_1\), v\(_2\), …, v\(_n\)]に対して\(\left(\begin{array}{crl}a_1\\a_2\\:\\a_n\end{array}\right)\)を掛けたものとして書けるよ、となっている\(\left(\begin{array}{crl}a_1\\a_2\\:\\a_n\end{array}\right)\)の部分のことを「基底v\(_1\), v\(_2\), …v\(_n\)に関するvの成分」というふうに言います。

これも、この抽象的な言い方だと「何のこっちゃ」と思うかもしれないんですが、「わざわざこんなことをしておかなきゃいけない」という理由が何かというと、先程の例でも分かる通り、実はある程度ベクトル空間の基底の取り方って、割といっぱいあるんです。ほとんどの場合、無限通りあります。スカラーが有限体だったりすると有限個しかなかったりすることもあるんですが、ほとんどの場合、おそらく大体は無限種類の基底の取り方があります。

というわけで、基底をどうするかというのに対して、実はこの同じベクトルVというものも、「何を使ってどの基底を使って表しましたか」というので、v\( = a_1\)v\(_1 + a_2\)v\(_2 +\) … \(+ a_n\)v\(_n\)の係数の部分は、当たり前ですけどコロコロ変わるんです。

なので、「v\(_1\), v\(_2\), … v\(_n ∈ V\)を使ってこの規定を書いた時は[v\(_1\), v\(_2\), …, v\(_n\)]\(\left(\begin{array}{crl}a_1\\a_2\\:\\a_n\end{array}\right)\)のようになるけどね」というのを「基底v\(_1\), v\(_2\), …v\(_n\)に関するvの成分」というふうに呼んでいます。

下記に理由を用意しておきました。同じベクトルだけど、成分表示すると基底の取り方を変えると成分が変わるよ、というのを実感してほしいな、と思います。

例)

・e\(_1 =\left(\begin{array}{crl}1\\0\\0\end{array}\right)\), e\(_2 =\left(\begin{array}{crl}0\\1\\0\end{array}\right)\), e\(_3 =\left(\begin{array}{crl}0\\0\\1\end{array}\right)\) は3次元実ベクトル空間\(R^3\)の基底である。この基底に関して、\(\left(\begin{array}{crl}1\\10\\-4\end{array}\right)\) = [e\(_1\), e\(_2\), e\(_3\)] \(\left(\begin{array}{crl}1\\10\\-4\end{array}\right)\)

先程の2つの基底の組みと一緒です。始めはよく知られている、いわゆる基準基底、普通の基底です。\(\left(\begin{array}{crl}1\\0\\0\end{array}\right)\), \(\left(\begin{array}{crl}0\\1\\0\end{array}\right)\), \(\left(\begin{array}{crl}0\\0\\1\end{array}\right)\) という規定があったとします。このときに、\(\left(\begin{array}{crl}1\\10\\-4\end{array}\right)\)というベクトルを、[\(e_1, e_2, e_3\)]を使って書こうとすると、当たり前ですが1倍の\(e_1 + \) 10倍の\(e_2 -\) 4倍の\(e_3\)となるはずです。だから、\(e_1、 e_2、 e_3\)に関する1、10、-4というベクトルの成分表示は\(\left(\begin{array}{crl}1\\10\\-4\end{array}\right)\)となりますよ、ということです。

当たり前のことのように見えますけれども、つまり、普段我々が数ベクトル空間に対して呼んでいる、いわゆる普通の成分というやつなんです。だから\(\left(\begin{array}{crl}1\\10\\-4\end{array}\right)\)の意味で言うと、数ベクトル空間に対して我々が成分と言っているのは、この標準基底に対する成分ですよ、という感じでなんです。

さて、ここからが面白い話です。

・v\(_1\) = \(\left(\begin{array}{crl}1\\2\\0\end{array}\right) \),v\(_2\) = \(\left(\begin{array}{crl}1\\1\\3\end{array}\right) \),v\(_3\) = \(\left(\begin{array}{crl}0\\1\\1\end{array}\right) \)も3次元実ベクトル空間\(R^3\)の基底である。この基底に関して、

\(\left(\begin{array}{crl}1\\10\\-4\end{array}\right)\) = [v\(_1\), v\(_2\), v\(_3\)]\(\left(\begin{array}{crl}4\\-3\\5\end{array}\right)\)

別の基底、v\(_1\), v\(_2\), v\(_3\)というのを取ってきました。それぞれ \(\left(\begin{array}{crl}1\\2\\0\end{array}\right) \), \(\left(\begin{array}{crl}1\\1\\3\end{array}\right) \), \(\left(\begin{array}{crl}0\\1\\1\end{array}\right) \) と。これも3次元実ベクトル空間\(R^3\)の基底である、ということを先程示しました。

ということは、\(\left(\begin{array}{crl}1\\10\\-4\end{array}\right)\)というのも、v\(_1\) = \(\left(\begin{array}{crl}1\\2\\0\end{array}\right) \),v\(_2\) = \(\left(\begin{array}{crl}1\\1\\3\end{array}\right) \),v\(_3\) = \(\left(\begin{array}{crl}0\\1\\1\end{array}\right) \)を使って書けるんです。で、「実際にやってみましょう」というふうなのをやった結果が\(\left(\begin{array}{crl}4\\-3\\5\end{array}\right)\)、となるんです。

で、これ\(-4\)と\(3\)と\(5\)になりますよ、ということなのですが、「実際、その数字はどうやって見つけるの?」というのは、先程やったのと同じ感じの、連立方程式を解く形になると思います。ただ、実際に計算してみましょうか、というと、次のようになるわけです。

\(4\)v\(_1 – 3\)v\(_2 + 5\)v\(_3\)

こうなるのですが、v\(_1\), v\(_2\), v\(_3\)がそれぞれどんなだったかというと、

\(=4\)\(\left(\begin{array}{crl}1\\2\\0\end{array}\right)\)\( – 3\)\(\left(\begin{array}{crl}1\\1\\3\end{array}\right)\) \(+ 5\) \(\left(\begin{array}{crl}0\\1\\1\end{array}\right)\)

となり、これを実際に計算してみましょう、とすると、

\(=\) \(\left(\begin{array}{crl}4\\8\\0\end{array}\right)\) \(-\) \(\left(\begin{array}{crl}3\\3\\9\end{array}\right)\) \(+\) \(\left(\begin{array}{crl}0\\5\\5\end{array}\right)\)

となり、これを計算すると

\( =\)  \(\left(\begin{array}{crl}1\\10\\-4\end{array}\right)\)

というわけで実数は、「\(\left(\begin{array}{crl}1\\10\\-4\end{array}\right)\)は\(4\)v\(_1 – 3\)v\(_2 + 5\)v\(_3\)と等しい」ということになります。

ということなので、\(\left(\begin{array}{crl}1\\10\\-4\end{array}\right)\)というベクトルというのは、[v\(_1\), v\(_2\), v\(_3\)]\(×\)\(\left(\begin{array}{crl}4\\-3\\5\end{array}\right)\)となります。なので、\(\left(\begin{array}{crl}1\\10\\-4\end{array}\right)\)という数ベクトル空間の、あるベクトル空間(\(\left(\begin{array}{crl}1\\10\\-4\end{array}\right)\))というのを、[v\(_1\), v\(_2\), v\(_3\)]を使って成分表示すると\(\left(\begin{array}{crl}4\\-3\\5\end{array}\right)\)ですよ、という感じになります。

これ、なかなか頭がこんがらがるかもしれませんが、頑張ってついてきてください。

というわけで、こういう標準の基底を使って書いたときの成分というのは、「そりゃ当たり前ですよね」という結果になったんですが、別の基底を取ったときの成分表示というのは全然当たり前ではなく、結構変なことに、というか「何かよく分からない数字」になったりするわけです。

基底の変換

さて、続きまして、この「基底の取り方について」という話をしていきます。

先程見たように、「基底って色々取り方があって、それによって表現の仕方が変わったりするよ」というふうになります。

で、具体的に「基底を取り換えて何が嬉しいのか?」という話があるんですが、例えば線形写像は普通に行列として表される感じなんですが、その普通行列で線形写像を表すというときも、普段使っているのは、いわゆる標準基底に対しての成分表示で表したもの、というふうになってると思うんですが、これ基底の取り方をうまくすると、その線形写像の表現が簡単になったりするんですね。

なので、実は「標準基底を使うことは、必ずしもベストとは限らない」ということが、結構あったりします。

具体的には今後触れる予定ですが、「行列の対角化」など、そういう時に基底の変換というのが役に立つ、ということになっています。

ここで、「基底の変換」について軽く触れておこうと思います。

基底の変換

[v\(_1\), v\(_2\), …, v\(_n\)], [u\(_1\), u\(_2\), …, u\(_n\)]が共に\(V\)の基底とする。このとき、基底は\(V\)のベクトルを全て表すことができるので、[u\(_1\), u\(_2\), …, u\(_n\)] を [v\(_1\), v\(_2\), …, v\(_n\)] で表すことができる:

u\(_1\) = p\(_{11}\)v\(_1\) \(+\) p\(_{12}\)v\(_2 \) \(+\) … \(+\) p\(_{n1}\)v\(_n\)
u\(_2\) = p\(_{12}\)v\(_1\) \(+\) p\(_{22}\)v\(_2\) \(+\) … \(+\) p\(_{n2}\)v\(_n\)
u\(_n\) = p\(_{1n}\)v\(_1\) \(+\) p\(_{2n}\)v\(_2\) \(+\) … \(+\) p\(_{nn}\)v\(_n\)

[u\(_1\), u\(_2\), …, u\(_n\)] = [v\(_1\), v\(_2\), …, v\(_n\)]\(\begin{pmatrix}
p_{11} & p_{12} & \dots & p_{1n} \\
p_{21} & p_{22} & \dots & p_{n2} \\
\vdots & \vdots & & \vdots \\
p_{n1} & p_{n2} & \dots & p_{nn}
\end{pmatrix}
\)

このとき、

\(P:= \begin{pmatrix}
p_{11} & p_{12} & \dots & p_{1n} \\
p_{21} & p_{22} & \dots & p_{n2} \\
\vdots & \vdots & & \vdots \\
p_{n1} & p_{n2} & \dots & p_{nn}
\end{pmatrix}
\)

を基底 [v\(_1\), v\(_2\), …, vn] から基底 [u\(_1\), u\(_2\), …, u\(_n\)] への基底の変換行列、という。

といって、結構色々取り方があるよ、というわけなので、別の取り方をした基底を2種類用意してみました。

さて、そうすると「基底って何だっけ?」っていうと、vのベクトルを全て、過不足なく表すことができる、というようなのが基底でした。となると、\(u_1\) って、もちろんこのVのベクトルなわけです。ということは、これが基底だから、\(u_1\)ってv\(_1\)からv\(_n\)を使って書けるんですね。同じ感じで、\(u_2\)、\(u_n\)も全部v\(_1\)からv\(_n\)まで使って表すことが出来るはずです。

で、何倍になってるか、というのがちょっとわからないので、係数を使って移項しました、と。そういうわけで下記のように表す、ということができるはずです。

\(u_1 = p_{11}\)v\(_1 + p_{21}\)v\(_2 + … + p_{n1}\)v\(_n\)
\(u_2 = p_{12}\)v\(_1 + p_{22}\)v\(_2 + … + p_{n2}\)v\(_n\)
\(  \vdots\)
\(u_n = p_{1n}\)v\(_1 + p_{2n}\)v\(_2 + … + p_{nn}\)v\(_n\)

\(u_1\)、\(u_2\)、\(u_n\)は、全部Vのベクトルなので、基底であるv\(_1\)からv\(_n\)を使って表せるはずです。で、表してみました、と。このことを、行列を使って表現すると次のようになります。

[\(u_1, u_2, …, u_n\)]\( = \)[v\(_1\), v\(_2\), … v\(_n\)] \(\begin{pmatrix}
p_{11} & p_{12} & \dots & p_{1n} \\
p_{21} & p_{22} & \dots & p_{n2} \\
\vdots & \vdots & & \vdots \\
p_{n1} & p_{n2} & \dots & p_{nn}
\end{pmatrix}
\)

[\(u_1, u_2, …, u_n\)]というのは、[v\(_1\), v\(_2\), … v\(_n\)]に\(\begin{pmatrix}
p_{11} & p_{12} & \dots & p_{1n} \\
p_{21} & p_{22} & \dots & p_{n2} \\
\vdots & \vdots & & \vdots \\
p_{n1} & p_{n2} & \dots & p_{nn}
\end{pmatrix}
\)の行列を掛けたやつです、ということです。で、これ、行列の積をやるとすると、例えば[v\(_1\), v\(_2\), … v\(_n\)]と行列の\(p_{11}\)の列を掛けるわけです。で、やったときに、v\(_1\)が第一成分(p\(_{11}\))になって…という感じなんですが、これはちょうど前記の\(u_1 = p_{11}\)v\(_1 + p_{21}\)v\(_2 + … + p_{n1}\)v\(_n\)と一緒になります。

同じ感じで、[v\(_1\), v\(_2\), … v\(_n\)]と\(p_{12}\)の列を掛けていくと、\(u_2 = p_{12}\)v\(_1 + p_{22}\)v\(_2 + … + p_{n2}\)v\(_n\)と同じになります。このような調子で、最後(\(p_{nn}\)列)までやっていくと、ちょうど[\(u_1, u_2, …, u_n\)]が\(u_n = p_{1n}\)v\(_1 + p_{2n}\)v\(_2 + … + p_{nn}\)v\(_n\)のように表すことができますよ、というふうになります。そんなわけで、[\(u_1, u_2, …, u_n\)]\( = \)[v\(_1\), v\(_2\), … v\(_n\)] \(\begin{pmatrix}
p_{11} & p_{12} & \dots & p_{1n} \\
p_{21} & p_{22} & \dots & p_{n2} \\
\vdots & \vdots & & \vdots \\
p_{n1} & p_{n2} & \dots & p_{nn}
\end{pmatrix}
\)というふうに書けるわけです。

で、ここに現われた\(p\)というこの行列ですが、次のように呼びます。

\(p\):\(= \begin{pmatrix}
p_{11} & p_{12} & \dots & p_{1n} \\
p_{21} & p_{22} & \dots & p_{n2} \\
\vdots & \vdots & & \vdots \\
p_{n1} & p_{n2} & \dots & p_{nn}
\end{pmatrix}
\)を基底[v\(_1\), v\(_2\), … v\(_n\)]から基底[\(u_1, u_2, …, u_n\)]への基底の変換行列、という。

で、これ、[v\(_1\), v\(_2\), … v\(_n\)]\(\begin{pmatrix}
p_{11} & p_{12} & \dots & p_{1n} \\
p_{21} & p_{22} & \dots & p_{n2} \\
\vdots & \vdots & & \vdots \\
p_{n1} & p_{n2} & \dots & p_{nn}
\end{pmatrix}
\)のように書かれたときに、[v\(_1\), v\(_2\), … v\(_n\)]系統から[\(u_1, u_2, …, u_n\)]系統への変換だよ、というのは、これも「どっちがどっちなんだ?」というので、なかなかごちゃっとしやすいのですけれども、ちょっと頑張って覚えてください。何故これらが[v\(_1\), v\(_2\), … v\(_n\)]から[\(u_1, u_2, …, u_n\)]への変換行列と言うか、というと、次のような定理が成り立つからなんです。

定理4(成分の変換)

v\(∈\)Vの基底[v\(_1\), v\(_2\), … v\(_n\)]に関する成分を\(
\left(
\begin{array}{crl}
a_1\\
a_2\\
\vdots\\
a_n\end{array}
\right)\)、基底[\(u_1, u_2, …, u_n\)]に関する成分表示を\(
\left(
\begin{array}{crl}
b_1\\
b_2\\
\vdots\\
b_n\end{array}
\right)\)とする。このとき、\(p\left(
\begin{array}{crl}
a_1\\
a_2\\
\vdots\\
a_n\end{array}
\right) = \left(
\begin{array}{crl}
b_1\\
b_2\\
\vdots\\
b_n\end{array}
\right)\)が成り立つ。

[v\(_1\), v\(_2\), … v\(_n\)]に関する成分表示に対して、先程の変換行列を掛けてあげると、[\(u_1, u_2, …, u_n\)]に関する成分表示が得られる、ということになります。

v系の成分\(\left(\begin{array}{crl}a_1\\a_2\\ \vdots\\a_n\end{array}\right)\)を知っていると、それに\(p\)というのを掛けることによって、\(u\)系の成分\(\left(\begin{array}{crl}b_1\\b_2\\ \vdots\\b_n\end{array}\right)\)が得られるよ、となるので、これがこの基底変換行列\(p\)というのが[v\(_1\), v\(_2\), … v\(_n\)]から[\(u_1, u_2, …, u_n\)]の変換行列、と呼ばれる由縁です。v系のやつがわかっている時に\(p\)を掛け算すると、\(u\)系のやつがわかる、というふうになります。

だから、先ほどの\(u\)からvへの基底の変換行列となってくる、というのは、主に成分についての話だ、ということです。

というわけで、この基底の変換行列というのが分かっていると、ここの行列を出しておきさえすれば、成分同士がお互いにどんなふうに移り合うかというのが結構簡単に求めることが出来ますよ、となっていたりします。

この基底の変換行列の求め方については、ある程度まじめにやるという方法もありますし、これが重要になってくるのって、対角化のときかなと思います。対角化の話のときにまた改めて詳しく解説する予定です。

おわりに

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究進塾 編集部


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